フランチャイズ物件選びの基準と業種にとって必要な特徴などを解説
フランチャイズビジネスを始める時、物件選びはとても重要です。
仮に小売業飲食業などの場合、お客様がお店にアクセスしやすいといった観点はもちろんです。
そして内装・設備の位置など、仕事の進めやすさなども関係してきます。
開業において業種・事業によっては物件取得だけで、敷金礼金保証金初月の家賃など含め数十万円から100万円程度かかる場合もあります。
これだけ費用がかかるわけですから、ベストな物件を選びたいものです。
しかしながら、事業用の物件選びというのはとても難しい傾向があります。
そこで今回はフランチャイズ物件選びにつきまして、業種に必要な特徴・居抜き物件などにも触れながら解説します。
業種と必要物件の特徴
(1)介護・デイサービス
駅前や幹線道路沿いなど、一般的に立地が良いと知られている物件にこだわる必要はあまりありません。
介護系事業所が多くある辺りの物件が良い、という考え方があります。
介護事業所というのは、利用希望者の方の状況・家族のご希望・予算などで決まります。
1度ある介護事業所に入っても、状況で別の所へ移るといったケースも想定されます。
移る本人からみても・家族の都合からみても、近くの場所へ移るというのが便利なのではないでしょうか。
そして事業所が近ければ、様々な情報交換もしやすいです。
(2)飲食業
アクセスしやすいかに加え、厨房設備・空調設備・什器などを設置可能か・設置しやすいか否か、そして居抜き物件(後程詳しく触れます)の場合、レイアウト・使いやすさが自分の構想と合っているということが重要です。
(3)小売業
アクセスしやすいかに加え、想定した品物を陳列した時に通りやすいスペースを確保できる店全体の広さも必要です。
そして商品輸送業者が、トラックを止めやすい・商品を搬入しやすいといった点も求められます。
(4)学習塾
一番重要なのは、目立つ場所・通いやすい場所があげられるのではないでしょうか。
そして、学校の近く・夜は外灯で比較的安全というのもポイントです。
これらに加え保護者による送迎がある場合は、車を止めやすい・夜駐停車することにより近隣からの苦情がきにくいといった点も要考慮余地といえます。
(5)整体院・マッサージ院・鍼灸院
まずベッド・マッサージ機器などの道具を置けるスペースがある・置きやすいといった点があります。
そして腰痛や肩こりなどの症状をもっているお年を召した方が対象となるので、駅やバス停などが近いというのもポイントです。
また大型団地や大規模住宅街周辺も、集客しやすいのではと推測されます。このような場所では、事業用物件は意外と他の場所と比べてリーズナブルな価格かもしれません。
業種と「電気(電力)」
(1)飲食業と電気(電力)
①配線
単相2線式配線 |
30Aが上限(昭和の物件に多く、飲食にはあまり向きません工事費が高くつく傾向もあります) |
単相3線式配線 | 100Vの設備でありながら、200Vも使用可能。容量の大きな電気機器にも対応。 |
②アンペアと目安用途
30A | 家庭用・一般家庭 |
40A | 家庭用・飲食用(家庭・軽食業~飲食(寿司・バー・カフェなど)) |
50A | 飲食用(和食・イタリアン・フレンチなど) |
60A | 飲食用(中華など) |
※業態というよりは、店舗面積に大きな影響を受ける傾向があります。
(2)電力自由化・新製品開発と節電
電力自由化により従来までは想像すらできなかった、電力業界に新規企業が参入する時代に入ってきました。
そして蛍光灯をはじめとした省エネ・長寿命電化製品も続々と開発されてきています。
このような様々な企業努力・省エネ家電製品選択と電力会社選択により、年間で数万円~10万円程度の電気代節約が可能(従来の電気代と比較として)な場合があります。
仮に年間で10万円節約達成とすると、10年間で100万円の節約となります。
10年間で100万円というとちょうど店内のどこかを改装・修理と考えたとき、経費の足し・経費にまるまるそのまま相当ということもあり得るのではないでしょうか。
(3)電力会社選び留意点
新電力会社・省エネ電化製品使用により、机上の計算では著しい電気代節約プランが作れても安心するのは若干早いかもしれません。
新電力会社選択時の留意点を記します。
①対象エリアになっているか否か
好ましい新電力会社が、必ずしも自分の所へ電力を供給できるとは限りません。よって対象エリアか否か確認が必要です。
②供給力の恒常性
電気というのは、生活の中で当然のように供給されています。
この感覚で考えて、安定して供給してくれるであろう・もし停電しても短時間で復旧してくれるであろう・トラブルが起こっても短時間で対応してくれるであろうというイメージで選択するとします。
まず、絶対に倒産しないと断言できるわけではありません。
そして従来の電力供給会社のように、トラブル時の迅速な解決ノウハウがあるかどうかもわかりません。
このように経営の安定性・電力供給の安定性・トラブル時の迅速な解決能力を確認しておく必要もあります。
業種によっては業務に制限がある場合
(1)都市計画法と開業制限
飲食店などの開業については、都市計画法の他にも様々な法律や規制への対応が求められます。
次のような事情がある場合があります。
- 市街化調整区域(基本的に建築物が建てられない場所がある)
- エリアごとに用途が制限されている場合
例えば、元の事業内容がコンビニであった建物を利用して開業を目指すとします。
目指す開業内容は飲食店です。
しかしながらここで、コンビニは出店可能だけど飲食店は開業できない特定の地域であることを知らずに開業段取り・話を進めてしまったとします。
ここから予想されるのは、やっと開業というところで開業申請が通らず開業頓挫という悲惨な結末です(フランチャイズの場合本部がこの点をチェックして、ここまで進まないうちに通知する可能性もあります)。
対象エリアで自分の希望する事業が始められるのか否かの確認はとても重要です。
(2)都市計画法
都市の健全な発展と秩序ある整備を図って、国土の均衡ある発展と公共の福祉が増進されることを目的とした法律です。
大まかに従う内容としては都市計画の内容・都市計画制限・決定手続き・その他の重要事項といった事柄です。
(3)深夜にお酒を提供する場合
お酒を扱うお店・午前0時以降も営業したい場合は、食品営業許可に加えて「深夜酒類提供飲食店営業の届出」を管轄の警察署に提出する必要があります。
そしてクラブやキャバクラを営業したい場合は食品営業許可に加えて、風俗営業許可も必要となります。
またエリアによっては、営業時間にも制限がある場合があるので事前確認が大事です。
(4)オーナーの意向
物件によっては事業内容に対して、オーナーの承認が必要な場合があります。
もし最初はオーナーに断られても、腕の高い不動産会社ならば譲歩案で開業可能という場合もあります。
居抜き物件について
(1)居抜き物件の特徴・メリット
居抜き物件とは、以前のオーナーが使用していた内装や設備などをそのまま使用できる物件のことです。
大きな改装・設備入れ替えなどの必要性がなければ、大幅な初期費用節約につながり便利です。
(2)普通のテナントの方が良い場合
さらの状態から内装・最新の自分好みの設備で始めたいという場合には、普通のテナントが適切となります。
そして設備が使えるには使えるけど古い・省エネにならないといった場合にも、普通のテナントがおすすめといえます。
一度気になる居抜き物件を、視察するのが良いのではないでしょうか。
居抜き物件の留意点
ここで居抜き物件に対して、「なぜオーナーはまだ使えるこの状態で手放したのか?」と疑問をもつ方が少なくないと思われます。
そうです、もしかしたらその居抜き物件に何か大きな不都合点があるかもしれないのです。
ここは、不動産屋さんにも要確認のポイントといえます。
そして可能ならば前オーナーさんに連絡を取って、聞き難いかもしれませんが当該物件に何か不都合があるのなら尋ねた方が良いのではないでしょうか。
店舗契約時にある留意点
(1)契約の種類
一般的には普通建物賃貸借契約で、契約期間が1年ないしは2年と定められています。
解約連絡がなければ、多くの場合自動更新となる傾向があります。
定期建物賃貸借契約になっている場合は、複数注意点が必要です。
普通建物賃貸借契約と定期建物賃貸借契約の大きな相違点の一つは、定期建物賃貸借契約には更新がないという点です。
契約期間終了後も継続して使用したい場合は、再契約の必要があります。
これは、敷金礼金などといった初期費用の支払いが再度必要ということを意味します。
この一方で、敷金礼金などといった初期費用が幾分か安価に設定されている場合もあります。
(2)契約期間内の中途解約
普通建物賃貸借契約の場合契約期間内の中途解約では、違約金が生じます。
一般的には家賃1か月分が請求される傾向があります。
定期建物賃貸借契約の場合は、原則契約期間内の中途解約はできないとなっています。
(3)修繕費用などの負担
物件内に元々あった道具・設備(エアコン・照明設備など)などが、故障したとします。
この際、修繕費用はオーナー側がもつのか・借りる側がもつのかといった部分はもめごとになりやすい点です。
契約書などに明記してあるかの確認・無ければ契約時に確認と契約書への記入をしておくのが望ましいです。
そして自室の設備修繕などの他にも、何か修繕の必要性が生じたときなどの費用負担も話し合っておくのがおすすめといえます。
例えば借主の故意でない・落ち度はないやむを得ない要因により、共有設備部分などを破損してしまったといった場合などです。
主要都市賃料トレンド
日本主要都市の賃料目安を記します(坪単位)。
(1)中央区銀座
43,000円程度~74,000円程度です。各種高級品・ブランド品店が連ね、日本トップレベルの高価格になっています。
(2)渋谷
28,000円程度~36,000円程度、特に高い所では40,000円程度~50,000円弱程度です。
多様な業界・業種から支持されるエリアで高価格になっています。
(3)大通(札幌)
10,000円程度~20,000円弱程度です。大通地区における再開発により賃料は維持されています。
(4)栄(名古屋)
14,000円程度~26,000円程度です。名古屋市中心部の商業集積エリアとして、安定した価格となっています。
(5)三宮(神戸)
14,000円程度~27,000円程度です。関西屈指の商業エリアの一つとして、三宮センター街付近では新規出店もみられます。
(6)新宿
18,000円程度~53,000円程度、特に高い所では139,000円程度の所も、販売力日本一を誇るエリアで、マーケットとしては安定性があります。
(7)池袋
23,000円程度~47,000円程度です。ファッションとサブカルチャーによる需要で、賑わいは続いています。
(8)仙台
13,000円程度~25,000円程度です。東北を代表する中心都市として、ファッション・飲食業が集積しています。
(9)四条河原町(京都)
13,000円程度~24,000円程度です。元々の大型商業施設・老舗店舗・金融機関の他に、観光地として様々なお店で賑わっています。
(10)天神(福岡)
12,000円程度~35,000円程度です。九州一の発展都市として、ファッション・飲食の需要は依然として高いです。
(11)表参道(港区青山・渋谷区神宮前)
32,000円程度~60,000円程度、特に高い所では136,000円程度の所も、銀座と並ぶブランドストリートとして、飲食・小売りに加えシェアオフィスやショールームといった需要もあります。
(12)横浜
20,000円程度~27,000円程度です。元々ある大型商業施設や駅周辺の再開発で、今後も需要は維持される見込みです。
(13)心斎橋(中央区心斎橋・道頓堀・南船場・難波)
14,000円程度~38,000円程度、特に高い所では83,000円程度の所も、心斎橋筋商店街は、休日で1日当たり17万人・平日でも14万人が往来するといわれる三宮並の関西を代表する需要エリアです。
まとめ
以上フランチャイズの物件選びについて述べてきました。
特に意識すべき点として事業に必要な特徴はもちろんですが、法律・条令・規制などとの兼ね合いも要考慮点ということです。
物件選びはとても大切で、集客・順調で正確な事業運営には不可欠です。
業務内容そのものに対する自分自身の必要事項はもちろん、オーナーの意向・不動産会社の都合・法律との兼ね合いをうまくこなして是非ともフランチャイズ開業を実現なさってください。