フランチャイズのデイサービス(通所介護)で利益を得るコツと失敗回避策
高齢化がますます進む背景から、デイサービス(通所介護)での独立開業を目指す人が増えてきています。
介護事業で働いている人はもちろん、介護業務未経験者も目指すケースがあります。
一方で需要が高い介護事業とはいえ、介護事業開業と運営には多くの手間や難点があります。
ですが、フランチャイズでの独立開業が有効な方法です。フランチャイズでの独立開業では、通常より高い費用を要するぶん、本部のサポート体制があるなど開業しやすいわけです。
フランチャイズ独立開業できれば、本部の規定を守りながら、自分の裁量で仕事を進められる事業所を運営できるメリットがあります。
今回はフランチャイズとデイサービスについて、本部のサポート内容や失敗を避けるコツなどに触れながら解説します。
目次
デイサービスの種類
(1)大規模型
大規模型のケースでは、1日に20~30名程度を受け入れる事業所です。そしてなかには、80名受け入れるところもあります。
また大規模型の中でも、大規模事業所Ⅰと大規模事業所Ⅱがあります。
双方の違いは月の利用者数で、次の通りです。
- 大規模事業所Ⅰ:750~900名
- 大規模事業所Ⅱ:901名以上
一度に多くの利用者と、接することになります。よって、より高い判断力や対応力が必要です。
(2)民家型
民家型とは既に存在している一軒家を改装して、行うデイサービスのことです。
一般的に、地域密着型として知られています。
(3)リハビリ型
リハビリ型では身体介護はそこまで必要ないので、リハビリや機能訓練を特に受けられる事業所です。
民家型とリハビリ型では、ゆったりとした雰囲気になりやすく、スタッフと利用者との距離が近くなりやすいです。
よって、利用者の状況や心境を把握できやすいともいえます。
【月間利用者数】
- 通常規模デイサービス:301~750名
- 小規模デイサービス:300名以下
デイサービスフランチャイズ経営の年収
デイサービス事業をフランチャイズ開業した際の年収は、一般的に500~1,000万円程度といわれています。
経営者のやる気や運営手腕次第では、大きく儲けられる業種といえます。
1,000万円程度を実現できるためのカギとして、多店舗経営が考えられます。
そして多店舗経営には、時代や状況の先読みが必要です。
つまり国の方針や法律改正などの観点から、需要が見込めそうな立地条件やエリアと利用者層をいかに正確に見極められるか否かということです。
加盟金とロイヤリティ
(1)加盟金と初期費用
加盟金は、ゼロ~350万円程度が目安となっています。
開業資金としては安いケースで300~700万円程度が見込まれ、一般的には1,000~1,500万円程度を要します。
そしてこれらの金額に加え、初年度の運転資金も別途準備したり検討したりしておく必要があります。
東京都内や法人契約対象の高いケースでは、開業資金で3,000万円や4,000万円程度を要するところもあります。
(2)ロイヤリティ
・変動制:売上の4~11%
・月額固定制:月額3~17万円
開業から数か月経つとロイヤリティがゼロ円になったり、最初数か月はロイヤリティがゼロ円であったりするところもあります。
そしてロイヤリティとは別に、システム利用料を要するところもあります。
手順と特殊考慮事項
(1)手順
以下のような手順で、応募から開業までの流れとなります。
①フランチャイズ本部へ問い合わせ
まずフランチャイズ本部へ、問い合わせをします。
②説明会出席や個別相談
説明会などへ出席し、本部からデイサービス事業やフランチャイズシステムについて説明があります。
そして早いところでは、さっそく簡単な個別相談が開催されるところもあります。
③施設見学
実際の加盟先へ訪問して、状況や業務の流れを見学できるところがあります。
④詳細面談
加盟と契約へ向けて、前向きに話を進める段階です。次のような内容について、話し合います。
- デイサービス業務経験と自営業経験
- 売上や収益面についての事業計画
- 準備可能な自己資金
- 開業エリア
- デイサービス開業のための特殊事項の観点での事業計画についてなど
⑤加盟
契約合意し、加盟金など初期費用を納入し加盟となります。
⑥オープニング研修
自営業初挑戦や介護事業未経験のケースでは、開業に向けて机上講習を実施するところがあります。
⑦開業準備
次のような準備を経て、開業準備そのものは完了となります。
- スタッフ採用と研修
- 建物や設備準備
- 必要書類作成と提出など
⑧行政審査
行政が介護保険事業者としての審査を行い、審査期間は1か月程度です。設備準備などの物理的な開業準備とは別で、最難関ポイントともいえます。
⑨営業研修
本部によっては、スタッフが営業を教えたり営業に同行したりします。
⑩開業
設備などの準備や行政からの許可を完了し、ついに開業となります。
開業に要する期間:最短で4か月、一般的に半年~1年程度を要する傾向があります。
関連記事:独立を成功させるコツは?フランチャイズに加盟して開業する流れを解説
(2)特殊考慮事項
介護事業所設置には、次のような基準があるので注意が必要です。
①法人格が必要
介護事業者として介護報酬を請求するには、指定を取得して「指定事業所」となる必要があります。この指定取得のために、原則法人でなければなりません。
I.法人の種類
法人には次の種類があります。
【営利法人】
- 株式会社
- 合同会社
【非営利法人】
- 一般社団法人
- NPO法人
- 社会福祉法人
- 医療法人
介護事業のケースでは、株式会社もしくは合同会社が一般的です。
②指定書類の提出
デイサービスの新規開業には、管轄となる自治体へ新規指定申請の手続きが必要です。
申請には申請書の他に、登記簿謄本など複数の特殊な書類の準備もあります。
③設備
必要な部屋の種類や、設備などが細かく規定されています。例えば次のような項目です。
- 機能訓練室
- 静養室
- 消防設備
- 入浴設備
- 食堂
- 機能訓練設備
- 車イスで使用できるトイレなど
④人員
職員について次のような基準があり、勤務時間などに規定があります。
- 厚生労働大臣が定める研修を修了した管理者1名
- 資格要件を満たした生活相談員1名
- 介護職員もしくは看護職員2名以上
- 資格要件を満たした機能訓練指導員1名など
⑤運営
運営について、ルールや要作成書類の規定があります。
- 利用料金の請求や受け取り
- 勤務体制の確保
- 衛生の確保と管理
- 記録の正確な作成と管理など
上記特殊考慮事項は、事業所の種類によります。
民家型の地域密着型のケースでは、対象者は事業所が存在する市町村などの住民となります。
事業計画作成の際、利用者数を見積もるのに注意が必要です。
本部のサポート内容
(1)開業前サポート
開業について、次のようなサポートをします。
①資金調達サポート
介護フランチャイズは、フランチャイズビジネスの中でも初期費用や運営費が高くかかる傾向があります。
この背景で、融資や助成金を受けられるのは非常に助かります。ですが、融資や助成金の実現は容易ではありません。
高精度な融資用事業計画書などといった、書類が必要です。このような段取りに関して、サポートがあります。
②立地選定
上記でデイサービス事業には、需要が見込めるエリアの選定が重要な旨は記しました。
一方で、介護業務経験者でもエリア選定は容易とはいえません。この部分についても、専門部署の独自ノウハウでエリア分析をするところがあります。
③人材について
デイサービス運営には、従業員の丁寧で親切な対応と働きが不可欠です。ですが従業員育成も、一筋縄にはいきにくい部分があります。
従業員育成について、専門家による採用や研修サポートがあります。
④経営サポート
デイサービス事業では、経営のことも複雑な要素の一つです。介護保険サービスは、一般的に消費税は非課税です。
一方で、一部課税する部分があります。このような税制をはじめとした経営に関することで気を取られ、サービス業務そのものの質が劣るのは好ましくありません。
こうならないように、経営サポートがあります。
(2)開業後サポート
開業後にも、次のようなサポートがあります。
①お客様獲得サポート
利益向上のためにはリピーター獲得はもちろん、新規お客様獲得も非常に重要です。
自営業初挑戦のケースでは、新規お客様獲得のための営業活動に不慣れな時が少なくありません。そこで、営業同行や営業代行がある本部があります。
②運営向上のためのアドバイス
デイサービスにおいて、環境や様々な条件が日々変化する傾向があります。そしてこの変化に対して、柔軟に対応していくことが重要です。
ですが、柔軟に対応するのは難しいです。この柔軟な対応のために、本部がプログラムを考案するところがあります。
フランチャイズ本部の選び方
(1)種類の相性
まず自分が開業を希望する種類のデイサービスについて、豊富な実績がある点が大事です。
実績が豊富なほど先を読んで段取りを進め、難点も想定しながら先手で措置を講じられるでしょう。
(2)費用と裁量の範囲
想定した利益を確保できるか否かは、費用による部分は非常に大きい傾向があります。
なかでも初期費用は重要事項で、いかに初期費用を抑えられるかはカギといえます。
加盟金などはもちろん、設備調達先や内装工事業者は本部指定になっているのか、自分たちが選択できるのか否かもポイントです。
(3)サポート内容
開業段取りや運営について、自分が慣れている部分と不慣れ部分があるでしょう。
そこで自分が不慣れな部分に対して、なるべく迅速に詳細にサポートしてくれる体制が整っている本部が望ましいです。
このためには担当スタッフが、要領よく自分が意図していることを把握してくれて、上司や本部と密に仕事の「ほうれんそう」をしてくれるか否かも見極めポイントの一つです。
フランチャイズデイサービス経営の難点と失敗を避けるコツ
(1)経営者の経営業務と現場業務でのバランス
デイサービス経営者には、なるべく人件費を節約できるようにと、自分自身も常に現場へ出ようと考えるケースがあります。
一方で従業員が働きやすいように経営者の業務として、新規スタッフ獲得のための戦略作りや、管理職育成のための研修内容考案も大切です。
これら自身が現場へ出ることと、経営者としての業務のバランスは大切であり難点でもあります。
現場へ出て節約を意識しすぎるあまり、有能な現場の管理職者育成に手が回らないケースは少なくありません。
この結果サービスの質が低下し、従業員同士のもめごとが起き、お客様が辞めたり従業員が辞めたりするといった悪循環があります。
この状況の回避策や克服策として、ある程度運営が落ち着くまでは、新規スタッフ採用や管理職者育成は本部のサポートに頼るのも有効な手段です。
(2)開業段取りが大変
できれば開業当初のサービスそのものは、想定通りに高品質に行いたいものです。
そして最初のお客様がそのままリピーターになり、リピーターによる口コミで新規お客様も獲得できるのが望ましいです。
ですが開業段取りが予想以上にバタバタし、サービスが想定した品質に達しないケースが少なくありません。
この状況を避けるために各種書類作成は、外部業者に委託する方法も効果的です。
介護サービス開業支援会社には、介護業に精通した行政書士や社会保険労務士が控えているところがあります。
このような外部機関へ委託し、少しでもサービス品質向上のために時間を確保できれば好都合です。書類作成には、意外と時間がかかるものです。
また開業支援会社には、日本政策金融公庫からの融資に精通しているところもあります。
また準備を、開業日の2か月前までに済ませる必要があるのも難点です。
何か不備があれば「開業がまた1か月遅れる」という事態もあるので、ゆとりをもった準備期間設定も必要です。
(3)想定した利益にならない
初期費用が大きいのはもちろんロイヤリティも重くのしかかり、思ったような経営状態にならないことが珍しくありません。
このような事態を避けるためには、まず運転資金にも余裕を見積もった初期費用の準備です。
そして事業計画の収益シミュレーションで、何十回も試算をしておくことも重要です。
また事業経験者、できれば介護経営経験者にも収益シミュレーションを分析してもらい、意見を聴きたいものです。
フランチャイズ開業事例
男性 元大手メーカー営業
会社員時代から、独立開業と高齢者向けのビジネスに興味がありました。
そして、あるデイサービスフランチャイズ本部に目標を絞りました。決め手は、次の3点でした。
- ビジネスモデルが確立されている
- 何よりも顧客を大切に思う会社の経営理念
- 充実した本部のサポート体制
最初は、少人数の利用者からのスタートでした。利用者数は少しずつ増えていて、良好な状況です。
これは本部のサポートが大きく、経営者と事務員や現場職員が、それぞれの仕事に専念できているからです。
現状はまだ開業資金を回収中ながら「これからはもっとこうしよう」などと全員が前向きな心境で、今後のさらに成長した経営状況を思い描かせる状態です。
まとめ
ここまで、フランチャイズとデイサービス(通所介護)について考察してきました。
押さえておきたい点は、デイサービス開業のための特殊考慮事項や本部のサポート内容です。
そして、フランチャイズデイサービス経営の難点と失敗を避けるコツもポイントといえます。
設備や建物の物理的準備はもちろん、行政審査をいかにクリアできるかも開業には大きいです。
前もった事業計画で行政審査をクリアして、自分のイメージに合ったデイサービス開業を成功なさってください。