無料低額宿泊所の経営は儲かる?メリット・デメリットを解説
福祉事業の経営は、社会に貢献できるという魅力があります。
無料低額宿泊所も福祉事業の一種として注目されており、フランチャイズに加入して開業することもできます。
この記事では、無料低額宿泊所の経営システムやメリット・デメリットなどについて解説します。
無料低額宿泊所とは?
無料低額宿泊所は、一般的な宿泊施設や簡易宿泊所などとは異なるもので、福祉事業の一種とされています。
まずは、無料低額宿泊所の定義や設備の基準など、基本的な内容について説明します。
(1)無料低額宿泊所の定義
無料低額宿泊所は、社会福祉法第2条第3項に定められている第2種社会福祉事業の一種です。
その中の第8号にある「生計困難者のために、無料又は低額な料金で簡易住宅を貸し付け、又は宿泊所その施設を利用させる事業」に基づいて開設された施設を指します。
つまり、生活保護受給者など生活に困窮している方が利用できる無料や低額性の宿泊施設です。
参考URL: 無料低額宿泊所(宿泊所)とは - 東京都福祉局
(2)無料低額宿泊所の範囲
無料低額宿泊所は法律に定められた基準を満たしていなければ、施設として認められません。
無料低額宿泊所として開業するには、以下の1~3のいずれかと4の基準を満たす必要があります。
- 入居の対象者を生活困難者に限定していること
- 入居者の総数の概ね5割以上が生活保護受給者で、かつ、入居に係る契約が賃貸借契約以外の契約であること
- 入居者の総数の概ね5割以上が生活保護受給者で、かつ、居室利用料及び共益費以外の費用を受領して食事等のサービスを提供していること
- 居室の使用料が生活保護の住宅扶助基準額以下であること
(3)設備や運営に関する基準
無料低額宿泊所は、設備や運営に関する基準も明確に規定されています。
無料低額宿泊所として開業するには、以下の基準を満たす必要があります。
- 5人以上が入居できること
- 居室は定員を1人とし、天井まで達した堅固な間仕切壁と扉を有する個室であること
- 居室は収納設備等を除いて7.43平方メートル(約4.5畳)以上とすること
- 利用料は費目の内容に応じ、実費やサービスを提供するために必要となる費用を勘定して設定すること
- 施設長1名のほか、入居数や提供するサービス内容に応じた職員を配置すること
- 施設長は社会福祉事任用資格を有していること、もしくは社会福祉事業等に2年以上従事していること、又はこれらと同等の能力を有すると認められること
無料低額宿泊所は儲かるのか?
無料低額宿泊所は無料もしくは低額な料金設定になるため、「開業しても儲からないのではないか」と思う方も多いかもしれません。
ここからは、無料低額宿泊所の経営システムについて解説します。
(1)無料低額宿泊所の利用料金
無料低額宿泊所の利用料金については、法律で「生活保護の住宅扶助基準額以下であること」と定められています。
生活保護受給者には、居住用の家賃に充てるための費用として「住宅扶助」や「家賃補助」と呼ばれる補助金が給付されます。
補助金の上限は地域ごとに異なりますが、住宅補助の基準以下で無料低額宿泊所は料金を設定しなければならないため、1泊あたり2,000円前後に設定されていることが多いです。
(2)無料低額宿泊所の経営システム
無料低額宿泊所は無料または低額な料金設定になっていますが、どのように利益を出すのか疑問に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
無料低額宿泊所では、サービス内容によって別途費用を徴収する仕組みになっています。
食費や光熱費、共益費、日用品費、生活支援費用などの項目があり、生活保護費から受領します。
厚生労働省の調査によると、全国の無料低額宿泊所の平均受領月額は3万1,960円でした。
通常の賃貸住宅とは異なり、利用者の生活をサポートする費用を一括で徴収するというシステムになっています。
通常の賃貸では空き物件が出て、長く空きがでるほど損失は大きくなります。
一方で、無料低額宿泊所は長期滞在者が多いことや、空きが出てもすぐに埋まりやすいため、黒字化が実現しやすいビジネスだといえます。
参考URL:無料低額宿泊事業を行う施設の状況に関する調査結果(厚生労働省)
(3)収益モデル
無料低額宿泊所の具体的な収益モデルについてみていきましょう。
1棟20室で満室の無料低額宿泊所で、入居者利用料が72,000円/月の場合です。
売上高 | 144万円 | |
支出 | 物件家賃 | 40万円 |
光熱費 | 30万円 | |
人件費 | 20万円 | |
その他 | 10万円 | |
営業利益 | 44万円 |
フランチャイズで開業する場合、ここからロイヤリティを納めることになります。
無料低額宿泊所を経営するメリット
無料低額宿泊所を経営することには、さまざまなメリットがあります。
経営するモチベーションを高めるために、メリットについて知っておきましょう。
(1)社会貢献度が高い
無料低額宿泊所は、生活保護受給者が安心して居住生活ができるようにサポートするビジネスです。
住居不安定な方や、居住生活移行支援を必要とする方に向け、行政と連携しながら無料低額宿泊所を提供することができます。
オーナーは家賃やサービスに対する収入を得られるだけではなく、社会貢献度の高いビジネスを展開できる点が大きなメリットといえるでしょう。
(2)黒字化が実現しやすい
無料低額宿泊所は、黒字化が実現しやすいビジネスです。
コインランドリーやグループホームなどの施設など、空き物件を再利用したビジネスは高い稼働率を維持しないと安定した収益を得られないことが珍しくありません。
一方で、無料低額宿泊所は、定員の6割程度の稼働で黒字化になるようにビジネスモデルが設計されています。
また、入居者が長期滞在するケースが多いため、入居者数を確保しやすいというメリットがあります。
社会貢献をしながら収益も得られるビジネスといえます。
(3)営業活動が必要ない
どのようなビジネスでも売上や顧客を獲得するためには、営業活動が必要です。
しかし、無料低額宿泊所は営業活動が必要ないという特殊なビジネスといえます。
なぜなら、無料低額宿泊所の入居希望者は市役所から紹介されるからです。
市役所との連携をしっかり取っていれば、施設の評価も高まり、より入居者の紹介を受けやすくなるでしょう。
(4)将来性が期待できる
新たに事業などを始める際は、長期的に安定した経営を継続させるために、市場の将来性が高いものを選びたいと考える方も多いでしょう。
コロナ禍以降、生活困難者が大幅に増加していることで無料低額宿泊所の需要が高まっています。
また、日本国内では急速に高齢化が進んでいることで、高齢者の中には、住宅を借りたくても借りることができないという方々も増加しています。
生活保護受給者は年々増加傾向にあり、無料低額宿泊所のビジネスも将来性が期待できるといえます。
無料低額宿泊所の経営をするデメリット
無料低額宿泊所の経営は、収益を得やすいことや将来性があることなどのメリットがある反面、デメリットも存在します。
無料低額宿泊所を経営する主なデメリットについて説明します。
(1)一攫千金型のビジネスではない
事業を始めるなら、「できる限り大きな利益を上げたい」「一攫千金を狙いたい」などと考える方もいらっしゃるでしょう。
しかし、無料低額宿泊所は一攫千金型のビジネスとはいえません。
時間が経過するほど利益が増えていくストックビジネス型といえます。
地道に収益を伸ばしていきたい方や、長期的に安定した収入を得たいという方に向いているでしょう。
(2)開設までのフローが複雑
無料低額宿泊所を開設するまでには、複数のステップを経る必要があります。
単純に施設を無料低額宿泊所向けに改築して市役所に届ければいいというわけではありません。
開設にあたって関係省庁との打ち合わせや、近隣住民への説明が必要になります。
施設サービスのためのスタッフの採用も行うため、個人での開設は難しいかもしれません。
フランチャイズに加入すれば、このような複雑なフローをサポートしてもらえるため、開設の手間を軽減できます。
無料低額宿泊所を開業する流れや方法
無料低額宿泊所を開設する場合、複数のステップを踏む必要があります。
開設までの流れや、開業するための方法について説明します。
(1)開設までの流れ
無料低額宿泊所の開業までの基本的な流れは以下のようになります。
- 物件を探す
- 関係省庁との打ち合わせ
- 近隣住民への説明
- 物件の改築(必要な場合)
- 施設スタッフの採用
- 開設
(2)個人で解説するにはハードルが高い
個人で無料低額宿泊所を開設することもできますが、最初のハードルとして近隣住民への説明があります。
近隣住民への説明は必須で、承諾を得なければ無料低額宿泊所を開設することはできません。
個人で近隣住民への説明会を開催することは簡単なことではありません。
また、反対が多ければ開設できない可能性もあります。
そのため、近隣説明と関係省庁との打ち合わせは非常に重要なステップといえます。
また、2020年に法改正されてから無料低額宿泊所など貧困ビジネスと呼ばれていたビジネスは規制が厳格化されているため、法律の基準を満たして準備を進める必要があります。
(3)フランチャイズで開設できる
近年では、無料低額宿泊所もフランチャイズ展開されており、フランチャイズに加盟して開設することが可能です。
フランチャイズに加盟して開設すれば、本部のサポートを受けられるためスムーズに開設まで進められます。
関係省庁との打ち合わせや近隣調整などのサポートだけではなく、経営に関するコンサルティングや、入居者への対応などの事前研修も受けられます。
フランチャイズに加盟することは、スムーズに開設できるだけではなく、開設後もサポートを受けながら安心して経営を続けられるという点が大きなメリットといえます。
まとめ
無料低額宿泊所は高齢化や生活困難者の増加により、今後さらに需要が高まると考えられます。
開設には法律で定められた要件を満たす必要がありますが、要件を満たしていればコンスタンスに利益を得やすいビジネスといえるでしょう。
個人での開設はハードルが高いですが、フランチャイズに加盟すれば開設だけではなく開設後もサポートを受けることが可能です。
フランチャイズへの加入を検討したい方は、資料請求や説明会の参加から始めてみてはいかがでしょうか。