フランチャイズの訪問介護業の業務内容・国民健康保険との関係性も解説
今介護事業所に入りたくても、入れない高齢者が多数います。
介護事業所が、定員いっぱいになっている要因もあります。
そして家で介護をする必要があり、なかなか外出できず困っている人もいます。
この介護サービスの供給が追いつけていない状況で、訪問介護業の利用者は増えてきています。
また訪問介護業を立ち上げたい人や、自社人材を活用して訪問介護業に参入したい会社もあります。
一方で訪問介護業は、介護保険法とも関係しているなど、複雑で容易でない業種です。
ですがフランチャイズ加盟の方法によって、指定申請にサポートがあるなど、業務を展開していきやすい方法もあります。
今回はフランチャイズと訪問介護について、国民健康保険連合会との関係性や、フランチャイズで開業するメリットなどに触れながら解説します。
目次
フランチャイズの訪問介護業の年収
フランチャイズの訪問介護業について、一般的に年収450~500万円程度ともいわれます。
そして高技能のスタッフを雇えたり、1回当たりの所要時間が長い固定利用者を複数抱えられたりすると、600万円以上を目指すことも可能です。
また2件目のオフィスを構え、より広範囲で事業運営できると、1,000万円も視野に入ってきます。
高収入を目指すためには、以下のような点を心がけるとよいでしょう。
- 需要の高いエリアを、念入りに分析する
- 丁寧かつ迅速に、見込み客へ対応する
- 本部とも相談の上、スムーズに業務を始められるよう指定の申請準備をする
- 現状利用者について上司やケアマネージャー含み、複数名で話し合う
- 移動ルートについてなるべく正確に把握し、業務中の事故を防ぐ
- 時には従業員を守るために、仕事受託を控える
- 自身含め、従業員の感染症対策を徹底する
- 自身含め、従業員の訪問介護技能精度を高める など
初期費用とロイヤリティなどの費用
(1)初期費用
開業費用として標準的に、150~250万円程度要する傾向にあります。
そして高いケースでは、500~600万円程度の時もあります。
一方で安いケースでは、30万円程度の時もあります。
開業費用と別に抱える従業員数に応じた、運転資金も準備しておくことがおすすめといえます。
【初期費用内訳】
- 加盟費
- 保証費
- 研修費
- 指定申請支援費
- 初期設備費
- 初期人材段取費 など
上記に加え、初期システム費として3万円ほど要するところもあります。
(2)ロイヤリティ
変動型:0~10%程となっています。
月額定額制:5万円程度となっています。
ロイヤリティが、ないところもあります。
そしてロイヤリティに加え、システム利用料として月々3万円ほどかかるケースもあります。
訪問介護と国民健康保険連合会の関係性
訪問介護と国民健康保険連合会には、次のような関係性があります。
(1)要介護認定
介護保険で利用者がサービスを受けるためには、対象の市町村へ申請して、要介護認定を受ける必要があります。
要介護認定を受けるには、次のような手順となります。
①申請
利用希望者は、対象市区町村の介護担当部署へ要介護認定申請をします。
②調査段取
申請を受けた担当者などが、利用希望者宅を訪問し聞き取り調査をします。
そして、主治医へ意見書の作成も依頼します。
③審査と判定
訪問調査内容や主治医の意見書を鑑み、介護認定審査会の審査を経て、認定や区分判定の判断があります。
④認定と通知
介護認定審査会の審査結果に基づき、次の認定内容と結果通知があります。
- 非該当
- 要支援1・2
- 要介護1~5
(2)訪問介護利用
利用者は訪問介護サービスを利用し、負担分の代金を支払います。
利用者負担割合は、基本的にサービス費用の1割となります。
そして65歳以上で一定以上所得のあるケースでは、2割となります。
(3)残額支払
訪問介護サービス事業者は、国民健康保険連合会を通じて、市町村へサービス費用を請求します。
そして市町村が国民健康保険連合会を通じて、事業者へ支払います。
訪問介護業の業務内容
訪問介護業には、次のような業務内容があります。
(1)身体介護
次のような内容に対して、訪問介護担当者が利用者の体に接触もして介護を行います。
- 食事介助
- 部分清拭や全身清拭
- 入浴介助
- 歩行介助
- 洗髪介助
- 排泄介助
- 車いすの乗り降り介助 など
清拭:病気やけがなどの事情で入浴できないケースにて、蒸しタオルなどで身体を拭くこと。
(2)生活介助
利用者自身やその家族ができにくい、家事一般のサポートをします。
- 掃除
- 洗濯
- 布団干し
- 買物
- ゴミ出し準備とゴミ出し
- 食事準備 など
(3)業務例
例えば、次のような実際の業務事例があります。
①8:30:出勤
オフィスへ出勤し、その日の業務内容確認や準備などを行います。
②9:00:A様訪問
朝食介助後、着替えなどをして外出準備をします。
③10:30:B様訪問
食事介助後、日によって排泄介助や部屋掃除などをします。
④11:30:C様訪問
買物代行をして、洗濯をすることもあります。
⑤12:30:昼休憩
お昼休憩をします。オフィスへ1回戻ることもあります。
⑥14:00:D様訪問
入浴介助後服を着せて、部屋の整理整頓をすることもあります。
⑦15:30:E様訪問
夕食準備をして、清拭をすることもあります。
⑧16:50:オフィスへ帰社
オフィスへ戻って、報告書作成やケアマネージャーへの連絡などをします。
⑨17:00:業務終了
同僚介護員などに重要事項を連絡し、翌日の予定を確認して仕事終了となります。
フランチャイズによる訪問介護業の開業手順
(1)問い合わせ
まず、資料請求フォームや電話問い合わせをします。そして資料などで、開業までの段取や業務内容などを理解します。
面談に備えて、質問などがある時には伝えておきます。
(2)面談
面談で質問への回答や、加盟希望者の生活状況などの話し合いがあります。そして市場特性や、事業展開方針の内容も大切です。
(3)審査
本部方針と加盟希望者方針を鑑みて、審査があります。
(4)加盟手続
審査通過後、加盟手続きがあります。契約書段取や、初期費用納入で加盟手続き完了となります。
(5)研修
研修があるところもあります。訪問介護業は特殊な業務ともいえるので、仕事の進め方や関係する法律などもしっかりと慣れておきたいものです。
実際の事業所を、視察できるところもあります。
(6)必要物品調達
ユニフォームや名刺などの必要物品を、本部などより調達します。
(7)指定申請など準備
開業準備として、指定申請段取は非常に重要です。そして、スタッフ段取やオフィス段取もします。
指定申請:介護保険法に基づく、介護事業者として承認を受けるための申請のこと。
(8)開業
(1)~(7)の段取をもって開業し、訪問介護業務開始となります。最初は本部スタッフが、営業活動に同行するところもあります。
フランチャイズで訪問介護業を開業するメリット
フランチャイズの訪問介護業には、次のようなメリットがあります。
(1)営業同行支援
介護事業所に入れず、確かに訪問介護需要者数は他の産業より多い現状もあります。
一方で需要はあっても要領を知らないと、せっかくの見込み客も逃してしまう懸念があります。
ですがフランチャイズでは、本部の営業同行支援があるところもあり、仕事を取りやすいといえます。
(2)報酬請求業務代行
国民健康保険連合会を通じて市町村へ提出する、請求業務も非常に重要です。
この請求業務も、1件や2件程度なら正確に進めやすいでしょう。
一方で利用者数が多くなり請求業務数も多くなると、記入不備も生じがちです。
ですがフランチャイズでは、本部が請求代行をするところもあり、手間が省けます。
(3)指定申請支援
地方自治体より指定を受けて訪問介護業をするには、指定申請が必要です。
一方でこの指定申請段取は、複数の注意事項もあるなど容易ではありません。
ですがフランチャイズでは指定申請段取を、サポートするところもあります。
(4)類似業務経験を活かせる
過去に看護や介護業務を、こなしたことがあるとします。
そして今から自身や複数名で、訪問介護業に参入しようと考えているケースもあるでしょう。
一方でこのようなケースでは、法人設立や経理業務などをスムーズにこなしにくい時もあります。
ですがフランチャイズでは、このような段取にもアドバイスがあり、類似業務経験を活かしフリーランスになりやすいです。
(5)人生を変えるチャンス
訪問介護需要は全国にあり、全国展開している本部もあります。
そして介護業務スキルはなくても、経営者として開業する方法もあります。
サラリーマンなどの形で、ある程度資金をためた人にとっては、脱サラして生まれ故郷で起業できる可能性もあります。
(6)複数の代行業務
開業後間もないうちは、加盟者自身が介護業務に入る時もあるでしょう。
このような時に新規問合せ電話が入ると、問合せ対応と介護業務双方の精度が落ちてしまう可能性もあります。
この事態をなるべく避けられるように、本部が電話代行対応をするところもあります。
そして月末集計業務も本部がするところもあり、肝心な介護業務そのものに集中できやすいです。
(7)開業後の研修
訪問介護業務内容は多岐にわたり、複雑でもあります。
開業前に研修があるとはいえ、研修内容で全訪問介護業務は網羅できにくいです。
ですがフランチャイズでは、定期的に研修会や勉強があり、さまざまな知識や知恵を学べるところもあります。
(8)自宅開業も可能
自宅開業で、まず3台程度のパソコンがあれば業務開始可能なところもあります。
既に訪問介護需要者が見込み客として存在する時には、オフィス段取などは後回しでも、肝心な顧客を確保できやすいです。
次の内容は、訪問介護一般についてもいえます。
(9)報酬アップ
国の方針により、処遇改善加算金の大幅アップの動きがありました。
つまり訪問介護業の報酬が、アップしてきている傾向ということです。
処遇改善加算金:介護職のためにキャリアアップ体制を整備したり、職場環境の改善を実施したりすると、賃金アップのために費用を支給すること。
(10)景気に左右されない
介護事業は国も重要視している事業で、介護報酬の大部分は国から支払われます。
よって景気に大きくは左右されず、安定した収入を見込めるともいえます。
フランチャイズで訪問介護業を開業するデメリット
フランチャイズの訪問介護業には、次のようなデメリットもあります。
(1)運営方針の制約
加盟者の、オリジナリティを尊重するところもあります。
一方で加盟当初の一定期間は、本部の方針に沿うよう要請するところもあります。
よって加盟当初は、運営しにくく感じる可能性もあります。
(2)経費支払いの計画性
フランチャイズでは、基本的にロイヤリティの支払いがあります。
そして3年に1度、介護保険法が改正されます。
つまり介護保険法の改正によって、経費支払いに想定外が生じる可能性もあります。
よって収益計画作成が、想定外の経費とロイヤリティ支払いを含めた、より複雑な作業になる可能性もあります。
(3)開業当初の運転資金
フランチャイズビジネス一般に、開業当初の運転資金をある程度ゆとりをもって考えておく必要はあります。
そして訪問介護では、健康保険からの入金までに最低90日間要することもあります。
よって、運転資金を多めに見積もった資金を考慮する必要もあります。
訪問介護業の難点と失敗を避けるコツ
訪問介護業には、次のような難点もあります。
(1)感染症対策
訪問介護の利用者は、高齢の傾向にあります。
そして高齢者のケースでは、ささいな菌やウィルスをきっかけに、重病を発病する可能性もあります。
今は、コロナウィルスもあります。
賠償責任補償にも加入するでしょうが、自分自身が菌やウィルスに極力接触しないよう注意も必要です。
賠償責任補償:介護業務中に、人の身体にケガを負わせてしまうなどして、顧客に想定以上の経済的負担を負わせてしまった際に補償する制度。
(2)営業の際の文言選択
慣れない間は営業の際に、仕事欲しさに言葉を勢いで発してしまう傾向もあります。
そして顧客は訪問介護スタッフに対し、家政婦のようなイメージを抱いて、依頼する可能性もあります。
こうなると、クレームにつながる懸念があります。
そして介護保険の説明事項には、難しい内容も含みます。
営業先の利用者やその家族が、1回の説明で理解できなかった際に「だから、ですから」のような言葉遣いは、避けた方がよいです。
憤慨させて、せっかくの見込み客を逃してしまいかねません。
よって営業や挨拶へ伺う際には、本部と上司やケアマネージャーにも相談し、文言を慎重に選択する必要もあります。
(3)訪問介護で許可されない行為
訪問介護では、許可されない行為もあります。
例えば利用者当人がインスリン注射をする際の確認はできても、訪問介護員がインスリン注射を打つことはできません。
介護業務経験が浅くて細かい部分までスムーズに正確に、可能な行為と不可能な行為を判断できにくいうちは、仕事の受諾そのものを慎重にする必要もあります。
(4)利用者と親密になりすぎる
基本的に訪問介護は、介護スタッフと利用者のマンツーマン対応となります。
そして目立ったクレームや問題なく、介護サービス業務がなされれば、一見よいようにも思えます。
一方で利用者と親密になりすぎて、特定の利用者が特定の介護スタッフのみに、依存し過ぎるようになることは要注意ともいえます。
仮に何らかの事情で特定の介護スタッフが行けない時に、利用者が他スタッフを拒んでしまう懸念があります。
よって他スタッフも挨拶へ行ったり、親密になりすぎないポイントをスタッフ間で、話し合ったりしておくことも大切です。
(5)法人格段取
介護事業者として地方自治体より指定を受けるには、法人格取得の必要もあります。
そして法人格取得と一言でいっても、一筋縄には進みにくい時もあります。
例えば介護業務に精通していて、代表者に名前を記入したい人がいるとします。
一方でこちらの人物が既に別法人で代表をしていて、代表者に名前を記入できにくい時もあります。
また法人格取得には、安価でない費用もかかります。
よって法人格取得のために、人選的にも費用的にも前もった熟慮が必要です。
(6)指定申請のタイミング
介護事業者として指定を受けるには、申請をする必要があります。
申請には申請書などの書類はもちろん、タイミングも重要であり容易ではありません。
必要書類準備期間と指定承認までの期間として、2~3か月程度を見込んでおきます。
そして指定承認を受けると、その日から介護サービス事業を行う必要の可能性もあります。
つまり前もってスケジュールにゆとりをみて、指定承認だけ受けておく考えが認められないことは注意点です。
よって指定承認後すぐに業務を始められるように、スタッフ確保などを含めたタイミング見極めも大切です。
(7)移動中の事故
訪問介護業務では、移動中の事故も要考慮事項です。
任意保険にはもちろん加入するでしょうが、労災認定必要の可能性もあります。
よって本部に前もって移動中の事故について、対応方法や事例を学んでおきたいものです。
(8)人材確保
訪問介護業経営には、人材の確保も非常に重要です。
そして実際に訪問介護業務を行うには、介護職員初任者研修か介護福祉士実務者研修を修了している必要があります。
この要件を満たす人材は、容易には見つけられない傾向もあります。
よって人材募集に精通していないケースでは、なるべく自分の希望を反映させる形で人材を募集してくれる、本部選択も大切です。
本部が人材募集で掲げる文言の確認も、ポイントといえます。
(9)スタッフ同士の情報共有
訪問介護はマンツーマン対応の傾向なので、洞察力が訪問介護担当者の得意能力に偏りがちです。
つまり利用者自身も気付いていない、体調不良などの兆候を見落としてしまう懸念もあります。
よってささいな点でも気になることは報告書へ記入し、上司やケアマネージャーなどとの情報共有も大切です。
(10)サービス内容拡充
状況によっては1人の利用者に対して、2社以上が接することもあります。
1社では、能力的に人員的に対応しきれない事情もあります。
一方で2社以上の対応では情報を共有できずに、うまく対応できにくい部分もあります。
よって研修などで個々の能力を上げて、なるべく自社のみで対応できるようになることも必要です。
まとめ
ここまで、フランチャイズと訪問介護業について考察してきました。
押さえておきたい点は、フランチャイズで開業するメリットや、訪問介護業の難点と失敗を避けるコツです。
そして、国民健康保険連合会との関係性もポイントといえます。
訪問介護業は、介護サービス供給不足の解消につながる可能性もあります。
サービス技術を向上させ、情報共有とミーティングも重ね、高齢社会の日本を救う訪問介護業を成し遂げてください。