脱サラしてフランチャイズに加盟する際の流れや注意点・失敗談を解説
フランチャイズビジネスは、ブランドのサポートを受けて独立できます。
そのため、起業未経験の方からも注目を集めており、脱サラしてフランチャイズオーナーとして開業する方も増えています。
フランチャイズビジネスは、ゼロから独立する場合と比べ集客がしやすい、知名度のある商品・サービスを扱えるという強みがあります。
一方、フランチャイズならではの制約やデメリットも存在するため、加盟の可否は慎重に検討する必要があります。
今回の記事では、脱サラ後のフランチャイズオーナーとしての独立について、フランチャイズの特徴や必要な準備、注意点などを解説します。
目次
サラリーマンのうちに最低限準備しておくこと
フランチャイズオーナーとして独立する場合、退職前に検討し始める人が多いのではないでしょうか。
会社勤めをしているうちから最低限準備をしておきたいポイントを二点紹介します。
(1)業種選び
まずは、フランチャイズ開業にあたり、どの業種を選ぶかを考えなければなりません。
最初にこの点を決定しなければ、以降の準備も進められないためです。
とはいえ、いきなり業種を決めるように言われても、どのように判断すればよいか分からない方も多いでしょう。
例として、業種選びの基準を三点紹介します。
①過去に経験した業種を選ぶ
以前従事していた業界であれば、情報やノウハウを蓄積している分、開業後に事業を軌道に乗せやすいという強みがあります。
開業に際し巨額の設備投資が必要な場合は難しいですが、個人でも開業可能な業種であれば検討してみてもよいでしょう。
②供給不足で売り上げを伸ばしやすい業種を選ぶ
市場が供給不足であり、需要過多の状態の業種は、開業後に売上を伸ばしやすいでしょう。
市場の追い風を受けて業績を伸ばせるという面から、トレンドに乗って業種を選ぶのも一つの方法です。
ただし、過熱した需要はいつか落ち着くときが来ます。そのため、時勢に頼らない商品・サービス作りも並行して行うことが必要です。
2019年現在、市場が盛り上がりを見せている業種として代表的なのは「介護」「ハウスクリーニング」の二種です。
近年市場規模が大きく拡大している業界です。過去10年間では成長率240%を突破しており、新規参入者も売上を伸ばしやすいといえます。
【ハウスクリーニング業界の特徴】
- 無店舗営業でコストを抑えることが可能
- 初期費用が比較的安い(200万円~300万円程度で開業可能)
- 研修が充実しているフランチャイズブランドが多い
介護業界
少子高齢化という社会情勢に後押しされ、大きく市場規模を拡大している業界です。
【介護業界の特徴】
- 初期費用は1,000万円~2,000万円程度と高め
- 日本政策金融公庫の専用の融資制度が用意されている
- 景気に左右されにくい
上記以外にも、需要が拡大している業界は複数存在します。様々な面から業種を評価し、自分に適したものを検討してみましょう。
(2)開業資金の準備
フランチャイズオーナーとして開業するには資金が必要です。現在の預貯金や融資を受けられる金額を整理し、資金をいくら使えるのかを考えてみましょう。
開業資金は業種やビジネススタイルによって大きく異なるため、業種選びと並行して検討してみることをおすすめします。
なお、開業資金は全額を自己資金で賄う必要はありません。新規開業にあたって融資を行っている銀行など金融機関に相談してみるのも一つの方法です。
事業内容によっては自治体の助成金や補助金を利用できることもありますので、あわせて検討してみましょう。
コストを抑えて事業を行なう方法
失敗を防ぎ事業を長く存続させるには「コストを抑える」ことが一つの選択肢となります。
では、コストを抑えて事業を行なうにはどうすればよいのでしょうか。具体的な方法を確認してみましょう。
(1)無店舗・自宅開業が可能な業種を選ぶ
無店舗で営業可能な業種を選ぶことにより、コストを大きく抑えることができます。
業種にもよりますが、店舗を用意すると、取得費だけで数十万円~100万円程度かかる場合もあります。
店舗を持たずに営業すると、初期費用を大きく削減することができます。
無店舗で開業できる業種としては、ハウスクリーニング業・家事代行業・英会話業・リペア業・ネットショップ業などが挙げられます。
(2)在庫の不要なビジネスを検討する
コストを抑えたい場合、在庫を持たずに運営できる業種を選ぶことも選択肢の一つになります。
IT系のフランチャイズブランドなどが代表的で、形のない「サービス」を売る業種に見られる運営スタイルです。
在庫を持つと、どうしても「維持管理」「廃棄」「仕入れ」などにコストが発生します。こういったリスクを排除できる点が強みといえます。
脱サラ前に抑えておきたいフランチャイズのメリット・デメリット
事業運営の初心者でも開業できるという点で、フランチャイズへの加盟は大きなメリットです。
ただし、ブランドの一員となる以上相応の制約も存在します。加盟時のメリットとデメリットを見てみましょう。
(1)フランチャイズの強み
①加盟先の商品・ブランドを使用できる
フランチャイズに加盟すると、屋号や知名度の高い商品名などを使用できるようになります。
ゼロからの開業と比べて顧客の認知度が高い状態で開業できることから、運営を軌道に乗せやすい点が強みです。
②ブランド本部のプロモーションが店舗の宣伝になる
ブランド本部がテレビや新聞などに広告を掲載した場合、これらが自分の店舗の宣伝になります。
大手メディアへの広告出稿は料金が高額で、個人店舗では手がでない金額になっていることが多いです。
ブランド本部の宣伝広告の恩恵を受けることができる点も、フランチャイズに加盟するメリットです。
(2)フランチャイズのコスト・制約
①ブランド本部への支払いが発生する
フランチャイズビジネスでは、ブランドの商品や屋号などを使用しサポートを受ける対価として、ブランド本部への支払いが発生します。
代表的なのは、フランチャイズへの加盟時に発生する「加盟金」と、毎月発生する「ロイヤリティ」です。
月のロイヤリティがいくらになるかは、加盟するブランドによって異なります。
「売上に対して〇%」「毎月〇万円」など、徴収方法はさまざまです。
思うように売上が伸びない場合は大きな負担になることもあるため、問題のない金額や料率かどうか慎重に判断する必要があります。
なお、昨今はロイヤリティ無料のフランチャイズブランドも存在するため、ロイヤリティのかからないブランドに絞って加盟先を選ぶのも一つの方法です。
②店舗運営に関してブランド本部から制約が課される
店舗運営に関して、ブランド本部から制約が課される場合があります。
各フランチャイズブランドは、ブランドイメージやサービスの均一化のため、加盟店に対し一定のルールのもと事業を運営するよう求めるためです。
例えば、営業時間をブランド側から指定される場合などが代表的です。
自分の方針で運営したい場合でも、必ず理想を実現できるわけではないという点を覚えておきましょう。
業種別開業の流れ
実際にフランチャイズオーナーとして開業する場合、開業まではどのように進行するのでしょうか。代表的な業種を三種あげ、例を見てみましょう。
(1)ハウスクリーニング
①開業への大まかな流れ
②ハウスクリーニング業を開業する際の留意点
「料金形態を決定する」
ハウスクリーニングは時間単位で料金を受け取る「時間単価制」と「エアコンクリーニング〇円」など作業内容に応じて料金が発生する「固定報酬制」の二種類の料金形態が存在します。
どちらの料金形態を採用するのかを考えておきましょう。
【ライバルとの差別化】
競合他社に対して強みを持っておくと安定した事業運営が可能です。「他にはないオプションサービスがある」「安価で高品質のクリーニングができる」など、ならではの強みを考えてみましょう。
(2)居酒屋
①開業への大まかな流れ
②居酒屋を開業する際の留意点
【事前申請が必要】
居酒屋は無届で開業することはできません。飲食店の営業許可申請や食品衛生責任者の資格、深夜酒類提供飲食店開業の届出が必要です。
事前に申請内容を確認しておきましょう。
【メニュー作りとスタッフの手配が必要】
どのようなメニューを出すのか、店舗を運営するスタッフは何人必要なのかもあらかじめ決定しておく必要があります。
とくに、メニューの原価率やスタッフの人件費は大きな支出となり得るため、時間をとって運営のシミュレーションをしましょう。
(3)デイサービス
①開業への大まかな流れ
②留意点
【融資申請と認可申請準備をする】
介護事業には他業種と比較して初期費用が大きくなる傾向があります。
ただし、日本政策公庫の専用融資である「ソーシャルビジネス支援資金」を利用できます。
申請から融資の実行まで短くとも3週間はかかるため、早めの準備が必要です。
また、介護業は都道府県からの許可が必要なため、開業に間に合うよう申請を行なう必要があります。
事前に担当窓口に相談し、必要書類や準備、審査にかかる期間を確認しておきましょう。
【有資格者の雇用】
介護業務には介護士の専門資格を持った人材が必要です。人材を確保する必要があるため、雇用の準備も進めておきましょう。
なお、開業間際事業を支えてもらう必要があるため、ある程度経験の長い人材が望ましいです。
店舗の認知度を向上し販促を行なう
事業の運営を始める際、扱う商品やブランドと並んで重要なのが、店舗の認知度の向上です。
フランチャイズに加盟している時点で一定の優位性はありますが、それだけでは長期間に渡り事業を続けるには不十分です。
認知度を向上し販促を行なうために何をすればよいのか考えてみましょう。
(1)対象エリアの需要を調査する
開業予定エリアにどのような需要があるのかを調査します。
仮に飲食店を開業する場合でも、オフィス街と住宅街では需要が異なります。
売れる商品・サービスを開発するために、需要と適正な価格を調査しましょう。
ある程度資金を使えるのであれば、マーケティング会社に調査を依頼してもよいでしょう。
また、インターネットを駆使してメインの顧客層を調べる、実際にエリアを歩いてみるなども有効な方法です。
(2)低コストで挑戦できる販促方法
①ポスティング
対象のエリアにチラシのポスティングを行ないます。地味ながら認知度を向上させるには効果的な方法です。
デザインに自信があれば自分でチラシを作成しても良いですし、個人のデザイナーであれば低予算でもデザインの作成を依頼できることがあります。
②Webサイト
店舗の認知度を向上させるために、Webサイトでの宣伝も効果的です。
検索エンジンで上位に表示されるよう対策ができれば、問い合わせや来店に繋げることもできます。
Webサイトは簡単なものであれば自分でも作成できますし、業者に依頼することも可能です。
TwitterやInstagramなどSNSを活用してサイトへの流入を測ることもできます。
脱サラして独立する際の注意点
脱サラして独立するには相応のリスクがともないます。リスクを押さえて開業する場合の注意点を見てみましょう。
(1)脱サラ後の生活資金に注意
開業すると、多くの場合サラリーマン時代のように安定した収入は得られなくなります。
開業直後は売り上げが伸び悩むことも多いため、生活資金を確保しておくことをおすすめします。
(2)失業給付の不正受給に注意
サラリーマンが退職し、転職先を探す場合は失業保険の給付を受けることが可能です。
ただし、一度開業してしまうと失業給付の対象からは外れてしまいます。
「就職活動中である」と虚偽の申告をして受給すると不正受給に該当するため注意が必要です。
なお、失業保険には開業時に受け取れる「再就職手当」が存在します。こちらの申請が可能な場合があるため確認してみましょう。
(3)開業のタイミングを見極める
開業後数か月の売上の伸び悩む期間を乗り越えるため、需要の大きくなる時期を見計らって開業するのも一つの方法です。
たとえばハウスクリーニング業であれば年末の大掃除の時期に需要の増加が見込めるため、この時期に合わせて開業するのも一つの方法です
脱サラとフランチャイズ失敗例
脱サラして開業するのには、それまでの安定を捨てなければならないというリスクがあります。
そのため、失敗は可能な限り避けたいところです。
では、過去のフランチャイズオーナー達は、どのような点で事業に失敗してしまったのでしょうか。
代表例を二つ見てみましょう。
(1)立地に甘んじた店舗運営は危険
ある方は35歳で脱サラし、フランチャイズにてラーメン店を開業しました。
店舗はオフィス街に位置しており、サラリーマンの需要を見込んで開業したのです。
この直感は当たり客足は多く、オープンから数カ月は目標の2倍近い売り上げを達成できました。
しかし、ラーメン店の可能性に目を付けた近隣の居酒屋運営会社が、店舗をラーメン店に転換させました。
ライバルのラーメン店は自分の店よりも店舗が広く、安価で商品を提供したため、客層を奪われてしまいました。
結果として売り上げは急激に落ち、廃業となりました。
立地頼みの店舗運営は、強力なライバルの出現など、外部からの影響に弱い面があります。
オリジナル商品の開発や他店にはない強みを作るなど、立地の良さに甘んじない運営が必要です。
(2)店舗物件は多角的に評価する
ある方は居抜き物件(設備つきの店舗物件)を見つけ、脱サラ後銀行から借り入れを行ないラーメン店を開業しました。
しかし目標売上を確保できたのは初月だけで、2カ月目以降は売り上げが伸び悩み廃業となりました。
実はこの物件は、人通りが少なく飲食業としては不利な立地でした。
設備投資を節約できる居抜き物件は魅力的ですが、店舗を選ぶ際はさまざまな条件を比較して総合的に判断する必要があります。
まとめ
フランチャイズオーナーとして成功するには、準備と情報収集が非常に重要です。
最初は自分の開業したい業種は何なのかを考え、資金や店舗運営など、様々な面から持続可能なビジネスプランを考えてみましょう。
開業後は販促による知名度の上昇が必要なほか、事業が軌道に乗るまでの生活費の確保なども課題となります。
脱サラ後のフランチャイズ開業にはリスクも伴うため「発生するコスト」「売上見込み」「販促にかかる費用」などを現実的にシミュレーションすることが大切です。
まずは、加盟するブランド本部の支援も受けながら。事業計画を練ってみましょう。