日本政策金融公庫で資金調達するメリットや融資を受けるためのコツを解説
フランチャイズや個人店などで開業したいと考えても、自己資金では不足しているという方も多いのではないでしょうか。
開業したいけれど資金が不足している方に役立つのが日本政策金融公庫の融資制度です。
条件を満たすことで低い金利で資金を調達でき、審査期間も短いというメリットがあります。
ただし、融資を受けるためには手続きや準備が必要であり、申し込む前に資金調達のコツを理解しておくことが重要です。
ここでは、日本政策金融公庫から資金調達する方法について詳しく解説します。
目次
開業資金の融資に役立つ日本政策金融公庫
日本政策金融公庫とは、国が出資する公的な金融機関です。
日本政策金融公庫の概要や、最新の制度内容についてみていきましょう。
(1)日本政策金融公庫の概要
日本政策金融公庫は民間の金融機関とは異なり、利益を追求することを目的としていません。
主な活動は、中小企業や個人事業主などの小規模な事業者への資金調達を支援したり、災害に対処するための資金を融資したりすることです。
日本政策金融公庫の制度には、新規で事業を始める人を対象とした新規開業資金を融資するものがあります。
新規開業資金を利用するには一定の条件を満たしている必要があり、主な条件は以下の通りです。
- 新たに事業を始める人(事業開始後7年以内)
- 女性やシニア、若年層で新たに事業を始める人
- 高い成長性が見込まれる新たな事業を行う人
- 適正な事業計画を策定し、計画遂行の能力が認められる人
新規開業資金の融資限度額は7,200万円で、運転資金4,800万円が含まれます。
(2)旧制度の廃止により新規開業資金が拡充
2024年3月で日本政策金融公庫の「新創業融資制度」は廃止され、「新規開業資金」が拡充されることになりました。
旧制度廃止によりリニューアルされた新規開業資金の主な内容は、以下の通りです。
- 無担保・無保証人でも利用できるようになった
- 返済期間が延長され、設備資金は20年以内、運転資金は7年以内から原則10年以内になった
- 利率が一律0.65%引き下げ
- 創業資金総額の10分の1以上自己資金を準備するという要件の廃止
上記の内容変更に伴い、新規開業資金は新規開業をしたいと考える事業主への支援が手厚くなったといえます。
日本政策金融公庫についてさらに詳しく知りたい方は、以下の公式サイトをご参照ください。
参考:日本政策金融公庫
日本政策金融公庫で資金調達するメリット
開業するための資金を調達する方法は、自治体が提供する制度融資やビジネスローンなどもあります。
日本政策金融公庫へ申請するよりも手続きは簡略化されていますが、日本政策金融公庫で資金調達することにはメリットがあります。
日本政策金融公庫で資金調達するメリットについて詳しく知っておきましょう。
(1)銀行から融資を断られてもチャンスがある
民間の金融機関が提供する金融を補完するのが日本政策金融公庫の役割であり、銀行よりも融資のハードルが低いという特徴があります。
つまり、民間の金融機関では融資が断られてしまうような信用の低い小規模の事業者でも資金調達できる点が日本政策金融公庫の大きな魅力です。
事業を始めたばかりの事業者に資金を融資してくれる金融機関は多くありません。
なぜならば、経営の実績がなければ収入の安定性が保証されず、金融機関側からすれば融資しても資金が返済されないというリスクを負うことになるからです。
もちろん長期的に事業が続いており、経営が安定している事業であれば融資は通りやすくなります。
開業したい人にとって資金調達は、審査が通りにくいので大きな難関になります。
しかし、日本政策金融公庫であれば民間の金融機関から融資を断られた場合でも申し込むことができ、実績がなくても審査が通りやすい点がメリットといえます。
(2)融資を相談するハードルが低い
日本政策金融公庫には経営や事業についてアドバイスするコンサルタントが在籍しており、知識の少ない経営者が気軽に相談できるような環境が整っています。
融資についても相談することができるので、申し込み前に不安や疑問も解決できます。
コンサルタントと相談するには、日本政策金融公庫の店舗への来店もしくはメール相談です。
日本政策金融公庫の店舗案内ページでお近くの支店を探してください。
融資について相談する場合、来店前に事前予約しておくとスムーズです。
「相談予約・メール相談・資料請求」から予約相談に進んで都合のよい日程に予約を入れましょう。
忙しくて来店できない場合は、創業メール相談サービスを活用しましょう。
メールで新規開業融資と申込方法を手軽に相談できて、資金調達の悩みを解決できます。
(3)金利が民間の金融機関よりも低い
日本政策金融公庫から資金を借りる場合、民間の金融機関で資金調達するよりも返済額は少なくなる傾向です。
返済負担を軽減できることは、事業主にとって大きなメリットといえるでしょう。
無担保で資金調達を行う場合の基準利率は、令和6年10月度現在で2.20%~3.4%です。
有担保で融資を利用する場合であれば、1.2%~3.0%の金利で利用できます。
一方で、民間の金融機関で資金調達すれば金利が大きくなる傾向にあります。
例えば、りそな銀行でビジネスローン「活動力」を利用する場合であれば、金利は3.15%~14%までと高くなります。
金利が大きくなると返済額も大きくなるものです。
事業のリスクを軽減するには、金利の低い融資制度を活用して返済額を減らす必要があります。
そのため、金利の低い日本政策金融公庫は、事業が不安定である経営者に便利で役に立つ資金調達の媒体だといえます。
(4)返済期間が長く設定されている
日本政策金融公庫は民間の金融機関に比べると、返済期間が長く設定されています。
経営が安定するまで返済に余裕を持たせることができるため、新規開業する事業主にとってはメリットが大きいです。
日本政策金融公庫の返済期間は、設備資金は20年以内、運転資金は7年以内から原則10年以内です。
ただし、返済期間が長くなると利息の支払いが多くなります。返済総額は増加するため、注意が必要です。
日本政策金融公庫で資金調達するデメリット
融資のハードルが低く、低金利で資金調達できるというメリットがある日本政策金融公庫ですが、デメリットも存在します。
メリットだけではなく、デメリットについても把握しておきましょう。
(1)資金の借入まで時間がかかる
日本政策金融公庫で資金を調達する場合、民間の金融機関から資金を借りるよりも借入に時間がかかる点がデメリットです。
民間の金融機関ならば、数日から1週間程度と融資の実行まで迅速に行われます。
一方で、日本政策金融公庫では最大1ヵ月も時間がかかります。
日本政策金融公庫の審査に時間がかかる理由は、経営者の信用を厳しく審査して低金利で融資をするからです。
毎月の収支やキャッシュフローなどについての確認が行われます。
すぐに資金調達して事業を始めたいと思っている事業主にとっては、融資を受けるのに時間がかかることはデメリットになるでしょう。
日本政策金融公庫で融資を申し込みたい場合は、スケジュールに余裕を持つことを推奨します。
(2)保証人が必要な場合がある
民間の金融機関では無担保無保証で資金調達できますが、日本政策金融公庫では資金調達するために保証人が必要とされるケースがあります。
保証人を準備できない事業主にとってはデメリットになるでしょう。
ただし、必ずしも保証人が必要になるというわけではありません。
担当者の判断によって保証人は不要と判断されるケースもあります。
保証人の必要性に関して不安がある場合は、あらかじめ日本政策金融公庫の支店窓口で相談しておきましょう。
日本政策金融公庫から資金調達する手順
開業のために日本政策金融公庫からの融資を希望する場合、手順に従って手続きすることが必要です。
日本政策金融公庫から資金調達する場合の手順について詳しく解説します。
(1)手続きに必要な書類を準備する
日本政策金融公庫から融資を受けるには、必要な書類を作成して提出しなければなりません。
融資を申し込む際に必要になる書類は以下の通りです。
- 創業計画書
- 借入申込書
- 前年度の収入証明書
- 許認可症(飲食店など許可や届け出が必要な事業を開業する場合)
借入申込書や創業計画書は日本政策金融公庫の個人小企業の方からダウンロードできます。
書き方が分からない場合は、窓口や電話で相談しましょう。
提出は日本公庫の支店窓口で手渡しするだけではなく、郵送も可能です。
(2)担当者と面談する
申請書類を日本政策金融公庫に提出すると、1週間から10日後に担当者との面接日が決められます。
面談では、主に資金用途や事業計画についての質疑応答が行われます。
提出した必要書類内容についての説明を求められるため、面接前にあらかじめシミュレーションしておくとスムーズに受け答えできるでしょう。
審査を通るためには、資金を返済する意思を伝えることが重要です。
ビジネスプランや条件の良さと併せ、ビジネスへの熱意も見せることが必要といえます。
面接では担当者のプレッシャーに負けることなく、毅然とした態度で対応しましょう。
(3)審査が通ったら借入が実行される
担当者との面談後に審査が実施され、融資される金額の仮決定が行われます。
審査の結果は2週間程度ですが、申し込み条件によっては期間が長くなることもあります。
開業に必要な資金を借りることが難しい場合は、民間の金融機関からの資金調達も視野に入れましょう。
日本政策金融公庫と申請と並行し、民間の金融機関の融資も申請しておくと安心です。
複数の金融機関に申し込みをしておけば、資金調達の時間を短縮できます。
日本政策金融公庫から資金調達するコツ
日本政策金融公庫の融資を申し込むのであれば、審査が通るように万全に準備をしたいと考えるものです。
審査に落ちてしまえば、半年が経過するまで再申し込みをすることはできません。
そこで、資金調達できる確率を上げるためのコツをご紹介します。
(1)小口融資を申し込む
新規での融資は実績がないため、資金の融資が受けられにくいものです。
借り入れして返済した実績があれば融資が通りやすくなるため、最初は小口で融資を申し込みましょう。
100万円から300万円程度の融資額であれば新規でも通りやすく、スムーズに資金調達できます。
資金が足りなければ後から追加で融資を申し込むことができるため、最初から大口融資で申し込むことは避けるべきといえます。
融資の審査において重要なことは、融資額の適切性です。
事業用途に見合った金額の融資であれば、審査が通りやすくなります。
(2)自己資金をできるだけ多く用意する
自己資金をできるだけ多く用意すれば、審査に通る可能性が高まります。
なぜなら、自己資金の多い事業主の方が信用度は高く、財務も安定しやすいと判断されるからです。
融資をする側からすれば、自己資金が少ないことは返済のリスクがあると判断されます。
新規開業資金に自己資金の要件はありませんが、可能な限り自己資金を準備しておくと安心です。
(3)保証人の能力に適した金額を申し込む
融資を受ける時に保証人を用意する場合は、保証人の収入能力に適した金額で申し込みをしましょう。
希望の融資額が高ければ高いほど保証人の負担は大きくなり、保証人の返済能力も問われるようになります。
経営が悪化して債務者が返済できなくなったとしても、保証人に返済能力があるならば問題は少ないです。
事業用途だけでなく、保証人の能力も考慮して融資額を決めることを勧めます。
まとめ
日本政策金融公庫は国の金融機関であり、開業するための資金調達として利用するにはメリットが多いです。
銀行から融資を断られても融資を受けられる可能性がありますし、民間の金融機関よりも金利は低めです。
資金の融資が実行されるまでに時間はかかるものの、余裕を持って申請をしていれば問題はないでしょう。
融資の審査で落ちないようにするためにも、申請の前に相談窓口を利用するなどして事前準備をしっかりすることを推奨します。