開業資金の融資(借入)はどこが良い?日本政策金融公庫や銀行などの調達方法
事業を始めるにあたり、誰もが直面するのが「開業資金をどう調達するか」という悩みです。
開業資金は業種によっては1千万円単位の金額になることもあり、全額を自己資金で捻出できない場合もあります。
このような場合、選択肢の一つとなるのが開業資金を融資で調達する方法です。
しかし「実績のない事業者が貸付を受けることはできるのか?」と疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、融資による開業資金の調達について、考えられる選択肢と各金融機関の特徴を紹介します。
開業資金の融資を受けられる金融機関
通常、中小企業が事業資金の融資を受ける場合、以下の金融機関がおもな候補となります。
- 銀行や信用金庫など民間の金融機関
- 日本政策金融公庫
- 政府や自治体からの助成や借り入れ
その他、投資を受ける形で資金調達が可能なベンチャーキャピタルや、一般の出資者から資金を募るクラウドファンディングなども、資金調達手段として検討できます。
では、各金融機関の貸付にはどのような特徴があるのか、次項より解説します。
民間金融機関の融資制度の特徴
銀行など民間の金融機関の特徴は営利法人であることです。融資で採算が取れるか否かを重視するため、融資の際の審査も相応に厳しくなります。
民間金融機関は、大きく「都市銀行」「地方銀行」「信用金庫・信用組合」の三種に分類されます。それぞれの特徴を見てみましょう。
(1)都市銀行
都市銀行は、都市部に本店を持ち、全国展開している大規模な金融機関のことです。三菱東京UFJ銀行やみずほ銀行など、いわゆるメガバンクを指します。
通常、都市銀行が融資をおこなうのは大企業に限定されます。そのため小規模の法人や個人事業主への貸付は断られるケースがほとんどです。
(2)地方銀行
地方・地域の中小企業や住民をターゲットに取引を行うのが地方銀行です。都市銀行と比べて地域に密着して営業しているため、中小規模の事業者への貸付も積極的に行っています。
新規創業者への貸付に対する方針は銀行によって異なりますが、融資が通った場合でも担保や高めの金利の設定を求められる場合があります。
(3)信用金庫・信用組合
地元の住人が組合員となり、地方の繁栄を目的に運営されるのが信用金庫・信用組合です。営業エリアは地方銀行よりさらに狭く、地域特化の金融機関といえます。
必ずしも営利追及を目的としていないため、金融機関によっては都市銀行や地方銀行と比べ、新規創業者への貸付を積極的に行なっていることがあります。
日本政策金融公庫の融資の特徴
日本政策金融公庫は、個人事業主や中小企業、一般の方の資金調達を助け「地域社会への貢献」「日本経済の発展への貢献」を目的として設立された政府の金融機関です。
新規で事業を始める方への融資を積極的に行っているという特徴があり、開業資金の貸し付けをけることも可能です。
【日本政策金融公庫の創業者向け融資制度(一例)】
融資制度 | 対象者 | 融資限度額 |
新事業育成資金 |
|
7,200万円 |
女性、若者/シニア起業家支援資金 |
上記いずれかで事業を開始する、または開始後7年以内の方 |
7,200万円 |
再挑戦支援資金 (再チャレンジ支援融資) |
廃業歴がある等一定の要件を満たし、開業予定または開業後7年以内の方 | 7,200万円 |
自治体による融資・起業支援制度
金融機関のほか、地方自治体の融資制度や起業支援制度を利用することも可能です。
自治体によっては、地方活性や税収向上を目的とした、新規創業者向けの制度を用意しています。
たとえば東京都では、都内で新規に創業する方向けに、以下の融資・助成制度を用意しています。
【新規創業者向けの東京都の制度(一例)】
名称 | 金額 | 概要 |
創業融資 |
3,500万円 ※新規創業者は自己資金+2,000万円 |
開業資金・運転資金の融資が対象。 都内に事業所があり、以下のいずれかを満たす方が対象。
|
創業助成金(東京都中小企業振興公社) | 上限300万円 |
賃借料・広告費など経費の一部を助成。 東京都の規定の要件を満たす方で、以下のいずれかに該当する方が対象。
|
参考:創業助成金(東京都中小企業振興公社)|東京都創業NET
融資や助成制度の詳細は自治体によって異なるため、居住地の自治体に支援制度がないかを確認してみましょう。
なお、自治体の助成制度は融資や助成の決定から振込までに時間がかかる場合があります。
また用意されている枠が少ないことも多いため、早めの問い合わせが必要です。まずは申込の流れや金額など、詳細を確認してみましょう。
金融機関が開業資金を融資する際の判断基準
開業資金の融資を受けたい場合に不安な点の一つが「実績のない状態で借り入れが可能なのか」という点です。
では、金融機関が開業資金を融資する際、何を基準に判断するのでしょうか。
(1)事業計画の内容
融資の可否にあたり、最も重視されるポイントの一つが、事業計画の内容です。作り込みが甘く、将来性がないと判断されると融資を断られる可能性が高いでしょう。
事業計画の作では、具体的には以下のポイントが特に重要となります。
取り扱う商品やサービス |
|
資金繰りの計画と利益率 |
|
事業の将来性 | 開業後、長期にわたり需要の見込める事業かどうか |
事業計画を作成する際は、まず上の三点を明らかにし、具体的な計画書を作成するようにしましょう。
(2)開業したい業種での経験の有無
新規創業の場合、開業したい業種での経験があるかも重要視されます。まったくの未経験で事業を始める場合、リスクが高いと判断され融資を断られる可能性があります。
ただし、フランチャイズオーナーとして開業する場合はこの限りではありません。フランチャイズブランドから商品やノウハウの提供を受けることができるため、未経験でも融資を受けられる可能性は十分にあります。
(3)自己資金の有無
自己資金がいくらあるのかも、融資の可否に影響するポイントです。「お金がないから全額融資で開業資金を調達したい」と考える方もいるのですが、金融機関にとってハイリスクな融資となるため断られる可能性が高いです。
まず、開業資金を全額融資でまかなう場合、借入金額が大きくなります。
それにともない、支払いの長期化や月の返済額の増加も懸念されるでしょう。
比較的融資を受けやすい日本政策金融公庫の「新創業融資制度」でも、創業資金の10%は自己資金で用意するよう借り入れの要件が設けられています。
(4)事業の成長
十分な収益が見込めるか事業そのものに十分な収益が見込めるのかも非常に重要です。
開業しても生き残れる見込みがない、すぐに資金繰りが焦げ付きそうだと判断されると融資は受けられないでしょう。
金融機関との面談では、将来的な発展が見込めるビジネスモデルであり、かつ十分な収益が期待できるという点を、具体的な数字で示せるよう準備をしておきましょう。
まとめ
開業資金を外部から調達する場合、金融機関からの融資を受けることが一般的です。
都市銀行(メガバンク)は、小規模事業者への融資は行わないため「地方銀行」「信用金庫」「日本政策金融公庫」から借り入れることになります。
日本政策金融公庫は小規模事業者の支援を運営目的の一つとしており、比較的審査には通りやすいといえます。
とはいえ、事業に将来性がないと判断されれば、融資は断られます。事業計画を綿密に作り込んだうえで申し込みを行うようにしましょう。