運送業で独立するメリットとデメリット・開業までの流れも解説
現在、運送業に従事しており、いつかは独立して自分で事業を行いたいと考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
運送業の独立には、いくつかの開業方法から、自分に合った方法で開業し、申請を行うなどの準備も必要です。
また、運送業での独立にはメリットやデメリットもあります。
この記事では、運送業で独立する場合の開業方法や開業までの流れといった点について詳しく解説します。
運送業で独立する場合、開業の方法にはどんな方法がある?
運送業で独立する場合、開業する方法として3つの方法が挙げられます。
それぞれの開業方法について解説しましょう。
(1)個人で独立開業する
個人で開業届を提出し、個人事業主として開業する方法が挙げられます。
税務署に開業届を提出すると始められますので、3つの開業方法の中でも比較的開業しやすく、費用が抑えられるといった点がメリットです。
しかし事業を拡大するにあたり、銀行融資が必要な場合などは、融資に限度がある点や、顧客の信用といった点で苦労する可能性が考えられます。
また、個人事業主として開業後、例えば法人などに業態変更した場合、再度認可の取り直しといった手間がかかる可能性がある点も注意点といえるでしょう。
(2)法人を立ち上げて独立開業する
法人を立ち上げて開業することも可能です。
個人事業主として開業する場合と比べ、法人の手続きなどにより費用がかかってしまいます。
開業時に費用がかかってしまう点が難点ですが、事業資金の融資などにおいて個人事業主よりも法人となっている方が融資を受けやすく、社会的信用度が高くなる点も特徴です。
開業当初から、一定の事業規模でスタートする場合などは、最初から法人となって開業するといいでしょう。
(3)フランチャイズに加盟する
フランチャイズに加盟しての開業も考えられます。
フランチャイズとは、フランチャイズ本部と加盟契約を締結し加盟店となることで、本部の商号や運送システム、本部のサポートなどを受けての開業が可能です。
車両リースのサポートや物件探しのフォローだけではなく、集客面でも顧客の紹介なども期待できます。
商号や運用システムの利用に対し毎月のロイヤリティが発生しますが、開業当初から一定の知名度をもって開業することができます。
運送業で独立する場合、必要な資格や準備とは
運送業で独立する場合、開業までには一定の資格の取得や許可申請などの準備が必要になります。
ここからは、運送業で独立する場合の必要な資格など準備面について詳しく解説しましょう。
(1)資格取得と管理者の選任
運送業の独立に必要な資格は事業の規模によって異なります。
一般貨物自動車運送業として開業する場合、最低5人以上の運転者が必要で、運行管理者や装備管理者が、それぞれ1人以上が必要です。
運行管理者と運転者は兼任ができませんので注意しておきましょう。
貨物軽自動車運送事業として開業する場合、運転者は1名以上の運転者が必要ですが、運行管理者は必要ありません。
また装備管理者も軽貨物車が9台以下の場合は不要など、一般貨物自動車運送業で開業するよりも比較的ハードルが低いといえます。
しかし、貨物軽自動車運送事業は軽トラックやバイクに限定されますので、トラックで運送業を行いたい場合は一般貨物自動車運送業として事業を行わなければいけません。
個人事業主として事業を始める場合は、貨物自動車運送業で開業する方が比較的始められやすいでしょう。
(2)運送業独立に必要な許可申請
一般貨物自動車運送業として開業する場合は、運送業許可を申請しなければいけません。
申請先は管轄するエリアの運輸局で取得可能です。
しかし、申請したら必ず取得できるというものではなく一定の要件を満たさなければいけません。
申請に必要な要件は下記の通りです。
- 運転者や運行管理者等、一般貨物自動車運送事業を行う人員の条件を満たしている
- 2.5㎡以上の休憩室を含む営業所があること
- 確保する駐車場の出入り口前の道路幅が、一方通行の場合2.5m~3m以上、両道斜線の場合は5.5m~6.0m以上の道路幅があること
- 貨物車両を5台以上確保していること
- 法令試験に合格すること
などが必要な申請条件です。
貨物自動車運送業で始める場合は、営業所は自宅兼用でも構いません。
非住宅部分の床面積が50㎡以下で建築部分の延べ床面積が1/2未満といった条件をクリアすればいいのでこちらも貨物自動車運送業で始める方がやりやすいといえます。
(3)貨物車両の準備
貨物車両の準備が必要です。
一般貨物自動車運送業として開業する場合は5台以上の貨物車両、貨物軽自動車運送事業の場合は1台以上の軽トラックかバイクが必要になります。
車輛の確保が、開業にあたり大きな初期費用の負担となりますが、フランチャイズに加盟しての独立開業となるとリースなどが利用できる場合もあります。
個人事業主として開業する場合やスモールスタートで始める場合は貨物自動車運送業で始める方が車両の確保も少ないので開業のハードルが低いです。
一般貨物自動車運送業の車輛に関して、軽自動車は認められませんので、必ず既定の車輛を確保しておきましょう。
運送業で独立するメリットとは
運送業で独立開業する場合、いくつかのメリットを得ることができます。
ここからは運送業で独立開業する場合のメリットについて解説します。
(1)初期費用が安い場合がある
一般貨物自動車運送業で開業する場合は車両の確保など一定の資金が必要になります。
しかし、貨物自動車運送業で開業する場合、確保する車両は軽トラックやバイクなどが最低1台確保できればいいので、初期費用を安く抑えることが可能です。
また、従業員も雇用する必要がなく最低自分一人だけで開業することもできます。
開業後の維持管理費に関してもそう大きな費用がかかりませんので、メリットといえるでしょう。
(2)在庫を抱える必要がない
運送業の業務内容は荷物を預かり、指定の場所へ届ける仕事です。
預かった荷物をすぐに相手先に送ると、在庫として保管しておく必要もありません。
一時的に荷物を預かる必要があるかもしれませんが、そのまま在庫として残ることはありません。
一定期間の保管期間を過ぎると、預かり先へ送り返せばいいので、在庫としていつまでも残るということがないので、余計な固定費がかかりにくいといえます。
ただし、効率よく配送しなければ、何度も配達し、長期間預かる必要もありますので、効率よく配送していくことも忘れてはいけません。
(3)将来の需要にも期待できる
近年の配送事情は、ネットでの通販が広く流通していますので、以前と比較しても配送業の需要は高まりを見せているといえるでしょう。
今後もネットでの通販に関する需要は伸びていくことが想定されており、ネット通販の需要に比例して配送業の需要も伸びていくでしょうから、将来性が高い事業です。
非常に将来性が高く、安定した経営になりやすい事業であることも大きなメリットのひとつです。
(4)フランチャイズに加盟すれば本部のサポートが受けられる
配送業での独立開業において、最も心配な要因のひとつが集客です。
せっかく独立開業したとしても、集客ができなければ、売上も上がらず赤字経営が続く可能性も考えられます。
宣伝広告費に多くの資金を投入し浸透するまで一定の期間を要しますが、フランチャイズだと本部の商号で開業できますので一定の知名度をもって開業が可能です。
さらに、フランチャイズ本部が持つ全国規模の顧客からの配送を紹介する場合などもあり、開業当初から一定の集客に期待ができます。
フランチャイズに加盟すると、本部からさまざまなサポートを受けることができますので、特に、初心者や経験が浅い方には大きなメリットとなるでしょう。
運送業で独立するデメリットとは
運送業での独立開業はメリットばかりではありません。
デメリットもありますので、デメリットもしっかりと理解して開業前に対策を講じておく必要があります。
ここからは運送業の独立開業におけるデメリットについて解説しましょう。
(1)重労働になりやすい
前述したドライバー不足にも関連しますが、重労働になりやすい点が挙げられます。
特に、配送したご家庭が不在だった場合の再配送や、夜間、休日の配送希望など顧客のニーズが高まっている中、ドライバーの負担が増加しているのが現状です。
また、世間一般からは非常に重労働になる業務だと受け取られていますので、求人をしても集まらないといった悪循環に陥っているといえます。
ドライバー不足からの重労働に関しては、サービスの低下なども同時に起こりやすくなりますので、運送業の独立において対策が必要なデメリットです。
(2)事故補償などのリスクを伴う
運送業という業務内容上、どうしても交通事故などのリスクが降りかかってしまいます。
人身事故など、大きな事故になってしまうと、車両の修理費用だけではなく、損害賠償請求などのリスクも考えておかなければいけません。
また、交通事故による信用度の低下といったこともありますので、交通事故に関する対策は、十分に行う必要があります。
不幸にして、交通事故が発生した場合も保険などの補償関係をしっかりと充実させておかなければいけません。
(3)貨物車両のメンテナンスなど一定の経費が常にかかる
運送業で独立するにあたり、必要なものが車両の確保ですが、ただ購入していればいいというものではありません。
定期的なメンテナンスが必要です。
しっかりとメンテナンスを行った上で荷物を配送できる状態にしておかなければ、配送中の故障で期日が守れない場合や、交通事故などのリスクが格段に高まります。
車輛の維持管理を徹底しておかなければ、早い段階で車両の交換が必要になってしまう場合もあり、結局のところ運送業経営にマイナス要因となるでしょう。
常にメンテナンスなどの経費がかかり続ける点もデメリットとして挙げられます。
まとめ
運送業は今後の需要にも期待が持てる、将来的にも有望な業種です。
開業にあたり、いくつかの手順が必要になりますが、規定を満たさない場合は開業できませんので開業までの手順をしっかりと理解しておく必要があります。
特に大切なポイントは車両の維持管理と、自身の健康です。
車輛は購入してからの定期的なメンテナンスで、車両性能を維持し、車両事故を抑えることに努めなければいけません。
重労働が重なりすぎると、体調を壊してしまい作業能率が落ちるどころか、営業を休止するほどの体調悪化になるか可能性も考えられます。
経費はかかりますが、車両のメンテナンスと、自身の健康チェックは定期的に行いましょう。