シニア起業で利用できる助成金の種類は?支給条件や限度額も紹介
少子高齢化による労働人口の減少が危惧されていますが、元気なシニア層が増えており、シニア層から新たなビジネスに取り組む動きが活発になっています。
この記事では、シニア起業のメリットやデメリット、シニア起業で活用できる助成金について詳しく解説していきましょう。
シニア起業の特徴や現状
シニア起業のメリットやデメリットを解説する前に、まずはシニア起業の定義やシニア起業が増加している理由などについて解説していきます。
(1)そもそもシニア起業とは?
明確にシニアの定義があるわけではありませんが、年金の受給開始が65歳以上で、老人福祉法では65歳以上を高齢者としています。
しかし、70歳以上を高齢者と定義している法律などもありますので、非常に定義があいまいではっきりしているわけではありません。
世界保健機構は65歳以上の高齢者としていますので、一般的には65歳以上をシニアとし、65歳以上の方が起業することをシニア起業としています。
定年などでいったんサラリーマン生活などを終えられた層が新たに起業することをシニア起業と呼ぶのが一般的です。
(2)シニア起業の現状とは?
少し前までは、会社を定年退職してしまうと、自宅でゆっくりと過ごすケースが一般的でした。
しかし近年ではシニアといえども元気な方が多くなり、65歳を過ぎても働いている方が多くなっています。
さらに、高年齢者雇用安定法の改正により、希望すれば70歳まで働くことも可能です。
少子高齢化で労働人口が低下している中、高齢者は新たな労働の担い手として期待されています。
このような事情がシニア起業への動きへと繋がっているといえるでしょう。
(3)シニア起業が増加している背景
上記のような理由から高齢者が今までよりも仕事をする機会が増えています。
パートなどで働くのではなくシニア起業が増えている理由も、高齢者でも元気でまだまだ働ける方が増えているのが要因のひとつです。
ただし、再び会社員として働くのは窮屈で嫌だという方も多く、自由に仕事をしたいと思うシニアがシニア起業にチャレンジしています。
また、定年した後の年金では生活ができないから働きたいが、会社勤務だと条件が悪いといった理由も挙げられるでしょう。
趣味や特技を生かしたいので自分で起業するなど、シニア起業の理由はさまざまです。
起業する理由が多岐にわたり多くの方がシニア起業を検討しているといえるでしょう。
シニア起業におけるおすすめの支援や助成金制度
前述したように、シニアを新たな労働の担い手として活躍してもらいたいといった目的で高年齢者雇用安定法が改正されました。
シニアに活躍の場を与える一方で、シニア起業をサポートする助成金制度も利用可能です。
ここからはシニア起業におけるおすすめの支援や助成金制度について解説します。
(1)シニア起業家支援
日本政策金融公庫が行っている企業支援制度が、シニア起業家支援資金です。
日本政策金融公庫は個人事業主やフリーランス、中小企業の支援を目的とした政府の金融機関です。
一般的には民間の金融機関と比較して融資を受けやすく、金利もあまり高くありません。
個人事業主などは非常に利用が多い金融機関といえます。
その日本政策金融公庫が行っているのがシニア起業家支援の助成金制度です。
シニアだけではなく女性や若者も対象となっている助成金です。
シニア対象として55歳以上の方で新たに事業を始める方か、事業開始して7年以内の方が対象なります。
融資限度額として7,200万円を上限とし、運転資金を目的とする融資は4,800万円が上限です。
場合によって無担保、無保証で融資を受けられます。
(2)新創業融資制度
日本政策金融公庫が融資する制度として新創業融資制度が挙げられます。
対象としては新たな事業を始める方です。
融資の限度額は3,000万円で金利も前述したシニア起業家支援と比較すると若干高めの設定となっています。
シニア起業家支援と比較すると、担保や保証金が不要である点や自己資金が1割以下でよいといった点が優位です。
新創業融資制度も、非常に利用しやすい融資支援といえます。
(3)創業補助金
地方自治体によって異なるところはありますが、新たに起業する場合に補助金を申請できる制度です。
補助金を受ける前にいくつかの書類が必要となり、そのうちのひとつが創業計画書です。
創業計画書とは、どんなビジネスをどのような計画で行うのかといった設計図的な書類です。
創業の動機や事業の経験、取り扱う商品やサービス、販売先などを詳しく記載しなければいけません。
創業計画書を提出し、自治体から承認されると、補助率が1/2以内で最大200万円まで支給されます。
事業資金の半分を補助金で賄うことができますので、スモールビジネスで起業する場合は、非常に便利な補助金です。
従業員が1名以上といった条件などもありますので、自治体のHPなどで確認してみるといいでしょう。
(4)中途採用等支援助成金
中途採用支援助成金は、40歳以上で起業するときに従業員の雇用部分や雇用した従業員の研修費用などを助成金として受け取れます。
中途採用支援助成金のメリットとして、起業時の年齢が60歳以上の場合、200万円を上限として、2/3までが助成される制度です。
シニアにとって有利な内容となっており、従業員を雇用する場合などはこれらの制度を利用するといいでしょう。
また、中途採用等支援助成金を受けた結果、一定期間内に生産性が向上したと認められた場合、新たに生産性向上助成金が支給されます。
従業員を雇う際などは注意しておくといいでしょう。
中途採用等支援助成金について詳しく知りたい方は、以下を参考にしてください。
参考:早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)|厚生労働省
シニア起業するメリットとは?
では実際にシニア起業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここからはシニア起業するメリットについて詳しく解説していきます。
(1)経験を活かした起業ができる
現役の時に培った経験やスキルをシニア起業で活かすことが可能です。
現役時代には会社のやり方に沿って仕事しなければいけなかったでしょうが、シニア起業だと、自分の思う通りにやり方を変えて経営することもできます。
また、今までの経験やスキルを若い世代に伝えることができるといったメリットも挙げられるでしょう。
経験をフルに活かして起業ができますので成功する可能性も高い起業といえます。
(2)辞め時を自分で決められる
シニア起業となると、一旦定年退職を経験した方が主な対象となります。
つまり、一度年齢を理由にリタイアした方です。
もしかすると、もっと働けるのに年齢でリタイアすることを後悔しているかもしれません。
シニア起業は自分が経営者となりますので、年齢を理由に会社を辞めることはありません。
自分自身で辞め時を決められます。
高年齢者雇用安定法の改正で70歳までは働くことが可能ですが、70歳以上でも元気で働きたいといった方は二度目の年齢によるリタイアを経験することになるでしょう。
自らが起業するのであれば、自分が納得できるときまで働くことができる点も大きなメリットといえるでしょう。
(3)人脈を生かせる
現役時代と同じ分野で起業する場合、経験やスキルだけではなく、人脈を生かせる場合があります。
人脈を生かすことができるので、まったく未経験から同じ分野で起業する方や経験が浅い中で起業する方と比較して有利な条件で起業できるでしょう。
人脈は非常に大事で、顧客の紹介だけではなく、そのほか経営に困ったときなどに助けてくれる場合もあります。
これも大きなメリットです。
(4)資金がある
起業する場合、業種によっては多額の資金が必要です。
事務所などを借りる場合は、店舗の賃貸に関する費用がかかりますし、設備の設置、販促品の購入などまとまった資金が必要です。
資金がない場合は融資などを利用しますが、シニアの場合まとまった資金を持っているケースが多いといえます。
子どもたちも独立している場合が多く、定年退職時の退職金を持っている方も多いでしょう。
資金的に余裕をもって起業できる点もメリットとして挙げられます。
シニア起業におけるデメリットとは?
次にシニア起業におけるデメリットについて解説します。
(1)体力面での衰え
体力の衰えはどうしようもありません。
どうしても若い時分よりは体力的な弱さが出てきます。
若い時には多少の無理が効きましたが、年齢を重ねていくとともに無理が効かない体になっています。
若い時のように頑張りすぎてしまうと体を壊してしまうかもしれません。
いかに効率的な動きができるのかといった点が、シニア起業を成功させるポイントです。
若い時の起業なら、体力的に自信があるからとひとりで頑張ることができますが、シニア起業だと数人の雇用が必要かもしれません。
若い時に起業するよりも人件費が高くなるかもしれませんので体力面での衰えがデメリットのひとつです。
(2)時代の流れについていけない
若い時には通用していたやり方が現代のやり方では合わなくなっているかもしれません。
特に、近年デジタル技術の急速な発達により、インターネットを用いたやり方が主流となっています。
現役時代にはできなかった取り組みがデジタル技術の進化で簡単にできるようになっているかもしれないのです。
シニア世代は、デジタル的な業務内容に変わっていることが理解できず、時代の流れについていけない可能性がある点もデメリットといえるでしょう。
(3)取り返しがきかない
シニア起業で失敗してしまうと、取り返しがきかない場合があります。
大規模な事業を行って大きな負債を抱えてしまうと、年齢がネックとなり、残りの人生を借金返済に使ってしまうことになるかもしれません。
最初からより大きな事業に取り組もうと資金を投下してしまうと、失敗しても次のチャレンジがほとんどできません。
シニア起業では、最初からあまり大きな資金を投下せずにリスクをなるべく抑えた起業がおすすめです。
失敗してしまうと取り返しが効かない可能性が高くなる点もデメリットのひとつです。
(4)プライドが邪魔をする
定年退職した時にはある程度の地位にいた方も多いのではないでしょうか。
しかしシニア起業する場合、経営者とはいえ頭を下げて自分よりも年下の方にお願いするケースも増えるでしょう。
しかし、現役時代のプライドが邪魔をしてしまう方も少なくはないのです。
特に、大企業で勤めていた方ほどプライドに邪魔されやすく、上から目線で相手に対応してしまい取引が流れてしまうといったこともよくあるケースといえます。
昔の肩書にこだわってしまうと、今のビジネスに悪影響を及ぼしてしまうことをしっかりと認識しておきましょう。
まとめ
今後も高齢者の数が増えていき、超高齢化社会となるのが想定されていますので、今後もシニア起業の数は増加していくでしょう。
シニア起業にはメリットもある反面デメリットもあります。
特に体力面の低下と、失敗が取り返しにくいといったデメリットはしっかりと認識しておかなければいけません。
現役時代と同じ分野での起業となると、経験やスキルも十分でしょうし、退職金などの資金もありますので成功する可能性が高いといえるでしょう。
また、シニア起業においては支援や助成金の制度がいくつも利用可能です。
助成金を有効活用した起業を検討するとよいでしょう。