フランチャイズで工芸品業を開業するメリットは?経済産業省の支援も解説
今伝統工芸品をはじめとした、工芸品業の注目が高まってきています。
日本を代表する伝統産業の1つで、存続や発展の重要性が認識されている背景もあります。
この認識と注目の中、工芸品業で起業を目指す人も増えてきています。
一方で工芸品業は、採算の見込めそうな商品の見極めが難しいなど、複数の難点がある業種です。
ですがフランチャイズ本部の力を借りることによって、オリジナルの商品も作りやすいなど、運営を進めやすい方法もあります。
今回はフランチャイズと工芸品業について、工芸品の業界事情や、フランチャイズで開業するメリットなどに触れながら解説します。
目次
フランチャイズの工芸品の収益
フランチャイズの工芸品では、比較的高い利益率を確保しやすいといえます。
製造業の売上総利益率が平均で22.3%ともいわれることがある中、フランチャイズの工芸品では30%程ともいわれ、高いケースでは70%程、確保が可能な場合もあります。
そして、工芸品には収益の数値そのもの以上に、日本の伝統や文化などを表現できる役割もあります。
日本国内はもちろん世界中へ対しても、日本文化の特徴を発信しているといえます。
高収益を目指すためには、以下のような点を心がけるとよいでしょう。
- 経済産業省の支援対象になれるよう、前もって高精度な事業計画を考えておく
- 工芸品製作のための技量をアップする
- 本部とも相談し、需要の高そうな工芸品を開発する
- 外国人需要にも対応できるよう、インターネット戦略などを考える
- 展示会などに出展し、認知度を上げる
- 無店舗開業など、なるべく固定費がかからないようにする
初期費用とロイヤリティなどの費用
(1)初期費用
工芸品業の初期費用として一般的に、100~200万円程度かかる傾向にあります。
一方でフランチャイズの工芸品業では、50~100万円程で済むところもあります。
ビジネス一般の開業費では安価と考えられ、初期費用リスクが低いともいえます。
【初期費用内訳】
- 加盟費
- 研修費
- 製作ソフト費
- 初期材料費
- webサイト制作費
- 販売促進費 など
(2)ロイヤリティ
フランチャイズのロイヤリティは、一般的に変動制で5~15%や30%、定額制で1~15万円ほどになります。
一方でフランチャイズの工芸品には、ロイヤリティがないところもあります。
工芸品の業界事情
工芸品には、次のような業界事情もあります。
(1)伝統工芸品のジャンル
伝統工芸品には、次のようなジャンルがあります。
- 陶磁器
- 漆器
- 金工品
- 仏壇や仏具
- 石工品や和紙
- 織物や染色品
- 木工品や竹工品 など
(2)伝産法
伝統的工芸品産業には振興を目的とした「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」があります。伝統的工芸品の指定などの、規定内容があります。
(3)生産額減少傾向
生活様式変化や人口減少などにより、工芸品製作会社数や生産額は慢性的な減少傾向にあります。
素材不足や必要燃料の価格高騰により、経営維持が困難になってきている背景もあります。
(4)工芸品の重要性
生産額減少にもかかわらず、工芸品、特に伝統工芸品の存在は重要です。
工芸品は単なる物の次元を超えて、歴史をも反映できる日本固有の文化と産業ともいえます。
そして工芸品の販売普及は、地方経済再発展につながるともいえます。
経済産業省による支援
伝統工芸品産業には、費用の2分の1以内か3分の2以内を補助率とした経済的補助があります。
そして補助金上限は、原則2,000万円となっています。
(1)対象事業
次のような事業が、費用対象となります。
伝産法の定めるところにより、計画の認定を受けた事業者などとなります。
- 伝産法第4条に沿った、需要開拓事業
- 伝産法第7条に沿った、新商品合同考案事業
- 伝産法第9条に沿った伝統工芸品や事業について、研究することにより活性化する事業
- 伝産法第11条に沿った、異なる伝統工芸品事業同士で話し合い、協同して活性化を目指す事業
- 伝産法第13条に沿った、伝統工芸品事業の人材育成を図った事業 など
(2)対象経費内容
次のような経費が、補助対象となります。
- 研修講師費
- 資料収集費
- 原材料調達に関する費用
- Webサイト費用をはじめとした、展示会準備費
- 新商品開発費 など
(3)支援実施システム
i.応募
まず事業者が、必要書類を経済産業局へ提出し応募します。
ii.審査
経済産業局と審査委員会で、審査をします。
iii.結果通知
経済産業局から事業者へ、結果通知があります。
iv.交付の段取り
事業者が交付申請書を経済産業局へ提出し、経済産業局から交付決定の知らせがあります。
v.事業実行
計画に沿って、事業を実行します。
vi.報告
事業者が経済産業局へ、事業実績を報告します。
vii.補助金確定の段取り
経済産業局が交付金額を確定し、事業者が請求書を提出します。
viii.支払い
経済産業局が、支払います。
(4)提出書類
次のような書類を準備し、管轄の経済産業局へ提出します。
- 伝統工芸品補助金事業計画書
- 申請事業内容などの、必要に応じた書類
- 計画の認定申請書
- 直近の事業状況報告書や決算書
- 定款もしくは登記簿謄本
- 会社の組織状況などがわかる資料
- 上記に加えた、会社や事業内容の参考になる資料 など
(5)採択評価基準
次のような項目が、審査基準となります。
① 認定の申請状況や、計画と補助事業の合致性
② 事業実施のために、人員や財政基盤が確保されている旨
③ 事業について、現状や未来へ向けての正当性
④ 妥当と解釈される事業効果が、見込める旨
⑤ 経費の適切性
⑥ 該当産業の地域にとって、振興につながる旨 など
①と②は必須基準で、他は重要項目となります。
フランチャイズによる工芸品業開業の手順
(1)資料請求
まずメールや電話で問い合わせて、資料請求をします。そして、フランチャイズビジネスの概要を確認します。
(2)説明会出席と面談
説明会へ出席し、業務内容や仕事の進め方などを理解します。
説明会後、現在の状況や開業時期などを話し合います。
(3)申込と契約締結
業務内容や契約内容で合意すると、正式申込と契約締結となります。
幾分か開業費用の、支払いがあるところもあります。
(4)研修
開業前に、研修をするところもあります。まず販売戦略など、営業展開方法があります。
そして受注から製作と納品まで、一通り体験できるところもあります。
(5)開業
(1)~(4)のプロセスを経て、開業し本格的に製作開始となります。
また、副業のケースもあります。
フランチャイズで工芸品業を開業するメリット
フランチャイズの工芸品業開業では、次のようなメリットもあります
(1)ホームページサポート
今ジャンルを問わず、ビジネスには自社ホームページが、非常に重要な販売戦略ツールの1つといえます。
一方でホームページの段取りについては、慣れないと作成や管理が容易ではないです。
ですがフランチャイズでは、作成ノウハウをアドバイスしたり、共有データを提供したりするところもあります。
(2)各種ダウンロードサポート
パソコンについては、たくさんのソフトウェアがあります。
一方でソフトウェアに慣れていないと、どのソフトウェアが自分に合うのかわからなくて困ります。
そしてソフトウェアのバージョンアップや不具合に、うまく対処できない時もあります。
ですがフランチャイズではダウンロードなど、ソフトウェアについてサポートします。
(3)副業も可能
副業での取り組みが、可能なところもあります。
本業がありながらも時間が余っていたり、子育て中でありながらも、家で時間の確保が可能であったりするママも、参入可能なケースもあります。
隙間の時間で、物作りのセンスを活かせます。
(4)低い初期費用リスク
ビジネス一般に、初期費用を回収できるか否かの懸念があります。
フランチャイズ工芸品では、初期費用が数十万程度のところもあります。
よって初期費用リスクが低いといえます。
(5)固定費を節約可能
自宅開業や、1人運営も可能です。家賃や人件費は、固定費において大きな割合になる傾向もあります。
よって固定費を節約可能で、収益確保にはプラス要素といえます。
(6)業務時間を選択可能
業務取り組み時間が、定まっていません。
よって自分のライフスタイルに合わせ、スケジュールを組めます。
家事や子供の学校行事などの合間などにも作業時間を組むことができ、仕事を進めやすいです。
(7)オリジナル商品考案
工芸品には多種多様なものがあり、売れ続けるには新商品開発も重要です。
一方で、売れる新商品開発は容易ではありません。
ですがフランチャイズでは大きな情報収集力で、必要とされそうなグッズを予測もできる傾向にあります。
そしてこのような強みから、オリジナル商品の考案もします。
(8)販売戦略提供
工芸品はジャンルが様々で、販売ターゲット層や販売場所も多岐にわたります。
そして販売場所へのアピール方法や、必要な売込方法なども異なってきます。
インターネット販売も、もちろん対象に入ります。
一方でこれらのアピール方法や売込方法を自力のみで考え、実行していくことは容易ではありません。
ですがフランチャイズでは、いかに戦略を進めていくかのアドバイスもあります。
フランチャイズで工芸品業を開業するデメリット
フランチャイズの工芸品業開業には、次のようなデメリットもあります。
(1)自身考案の商品の承認
工芸品には、本部のカラーやイメージもあります。
仮に自分で魅力的な商品を考案できたとしても、本部のポリシーに合わない場合、本部の名前で販売できないなど不便が生じます。
(2)輸出入の際の通関手続
自分の工芸品について、輸出入の段取りが関わる可能性もあります。
そして輸出入には、通関手続きも必要です。
仮に自分の知り合いで、通関手続きを自分のペースに合わせて進めてくれる会社があるとします。
一方で本部からは、本部指定の会社に依頼するよう指示されるとします。
こうなるとスムーズに段取りを進められなくなる可能性もあり、デメリットになります。
(3)支払い方法
本部方針として、基本的に料金は前払いとします。
一方で見込み客が、何らかの事情により前払いが困難な状況にあるとします。
この段階で事情を説明したにもかかわらず、本部に購入時払いを承認されないと、せっかくの見込み客を逃す可能性もあります。
工芸品業の難点と失敗を避けるコツ
(1)量産体制が取れにくい
一般的なメーカーの商品のように、ある程度受注を予測し在庫を抱え、大規模機械による受注から出荷の安定した流れを構築できにくいです。
そして、購入希望者のタイミングに合致した時期での納品をできない可能性もあります。
よって生産者側の受注から納品までの、購入希望者への対応方法を、本部とも話し合っておくことも大切です。
(2)製作が容易でない
研修時に本部は、製品の製作方法を指導するでしょう。
一方で、機械にて製造する商品に比べて、工芸品の製造方法がシンプルでないことは想像できやすいです。
工芸品には、細かな部分に難度の高い技術力も必要です。
よって、より製作技量トレーニングも求められます。
(3)スタッフの育成が容易でない
一般的に飲食業や清掃業などでは、本部によるスタッフ育成サポートが整備されている傾向もあります。
一方で工芸品では、高い技術力をもった師匠的存在の人が、他業種と比較して多くはありません。
よって仮に自分のところへアシスタント的役割の希望者がきても、思ったようなペースで育成できない懸念もあります。
(4)海外購入希望者への対応
日本の工芸品には、日本の伝統や歴史と美的センスも反映されていて、海外から評されている傾向もあります。
そして今は訪日外国人に対する、伝統工芸品アピールの重要性も認識されてきています。
このように海外在住を含めた、外国人からの需要には見込みがあります。
このためには語学習得はもちろん、ECサイトの活用や展示会への出店などでアピールすることも効果的です。
また、工芸品に対する外国人の嗜好も学びたいものです。
(5)素材確保
伝統工芸品には、自然素材を材料としているものもあります。
一方で今、この自然素材そのものも入手困難になってきている傾向もあります。
素材そのものを生産できる人材が、少なくなってきている背景もあります。
よって素材確保のためには、海外も含めた新たな素材入手先探しや代替素材探しも大切です。
(6)経済産業省支援取得
工芸品には、経済産業省による支援がある旨は上記でも記しています。
一方で経済産業省支援承認取得は、容易ではありません。
よって経済産業省支援承認取得を考慮するケースでは、補助金戦略アドバイス会社や士業家へ、前もって相談しておくこともおすすめといえます。
伝統的工芸品産業の振興に関する法律も、要確認です。
(7)輸入品が競合品
工芸品業界において、今は海外より安価な輸入の工芸品も入ってきています。
このような海外の安価な工芸品に勝るために、高価でも高品質な商品や日本の魅力を表現できる商品を、加盟者自身も考える必要もあります。
まとめ
ここまで、フランチャイズと工芸品業について考察してきました。
押さえておきたい点は、経済産業省による支援やフランチャイズで開業するメリットです。そして、工芸品業の難点と失敗を避けるコツもポイントといえます。
工芸品業は、意義深い産業の1つです。
製作テクニックを磨き、できれば経済産業省の支援も得て、伝統性とオリジナル性のある工芸品作りで成功なさってください。