人に依存しないリラクゼーションビジネス。無人マッサージ「ちょこま」の成長戦略

合同会社あさあさ/無人マッサージ屋ちょこま

無人という新しいマッサージ店のカタチ

仕事帰り、駅へ向かう道すがらにふと目に留まる、24時間営業の「無人マッサージ」の看板。今、東京を中心に確実に数を増やしているのが、無人マッサージチェア専門店「ちょこま」だ。

10分300円、予約不要、完全無人。一見すると、かつて銭湯の脱衣所に置かれていたマッサージ機の現代版のようだが、その実態は全く異なる。それは、シェアサイクルやスマホの充電スポットを利用するような感覚で、「街中のリソースを必要な時だけセルフで使う」という、極めて現代的なリフレッシュの形である。

「ちょこま」誕生のきっかけは、代表の森俊彦氏の極めて個人的な体験に遡る。
「私と妻どちらも、マッサージチェアが大好きだったんです」と森氏。銭湯やショッピングモールの一角に並ぶ最新のマッサージ機。そこにある「手軽なリフレッシュ」の心地よさに魅了されていた。しかし、ふと街を見渡すと、その「手軽さ」が欠落していることに気づく。
既存のマッサージ店は数千円の費用がかかり、事前の予約が必要で、何より施術者とのコミュニケーションに気を使う場面も多い。一方で、銭湯やショッピングモールは、「わざわざ出かける場所」であり、日常の動線上には存在しない。

「身近な場所に、安価で、誰にも気を使わずに済む場所があったらいいのに」。この「自分たちが欲しかったもの」への純粋な欲求が、ビジネスの原点となった。

防犯は環境で解決。路面店戦略へのこだわり

森氏の経歴は異色だ。東京大学工学部でITを学び、その後はITスタートアップ企業で事業開発や人事を務めてきている。そんな彼がなぜ、あえて物理的な「店舗ビジネス」に乗り出したのか。
そこには「人」という不確定要素を排除した先にある、成長可能性があった。

「人を採用し、教育し、定着させることの難しさは、誰よりも知っていました。事業を拡大しようとする時、常に『人』が成長のボトルネックになる。であれば、最初から人を介さないビジネスモデルを構築できれば、スピーディーな成長ができるのではないかと思ったんです」

森氏が「出店が9割。場所を間違えなければ負けることはありません」と断言するように、このビジネスの成否は立地に集約される。だが、あえて視認性の高い路面店を選ぶのには、収益性以外にも明確な狙いがある。無人店舗につきまとう防犯や居座りへの対策だ。

「人の目がある場所では、不適切な利用はしづらい。特に女性のお客様にとって、雑居ビルの上階で知らない男性と二人きりになるかもしれない環境は恐怖でしかありません。外から店内の様子が分かり、通りに人の気配がある路面店であること自体が、最高のセキュリティになるんです。もちろん防犯カメラも複数台設置しておりますし、キャッシュレス決済比率が高いことで安全性も高いです。」

さらに、集客面でも路面店は圧倒的な優位性を持つ。特別な広告費を投じずとも、看板や、店内に見える白くて大きなマッサージチェアが、道行く人々へのプロモーションになるからだ。都内で路面店を増やし、「見たことある」という認知を広めることが、将来的に指名検索で集客できるブランド力へと繋がっていく。

「設備」を置いて、仕組みで稼働させる。究極のセルフ型ビジネス

「ちょこま」のビジネスモデルは、一般的なマッサージ店舗運営というよりも、駐車場やコインランドリーに近い「設備稼働型ビジネス」としての側面が強い。
店舗のサイズは、わずか10平米から20平米(約3坪~6坪)という最小クラス。この小さな坪数で完結するからこそ、都市部の隙間のような立地にも潜り込める。

「マッサージチェアという装置を買い、場所を確保して、あとはそれを使っていただく。仕入れもなければ在庫の陳列もない。手間やコストの構造で言えば、コインロッカーが近いのかもしれません」

初期投資は約300万円強、回収期間は3~4年。一度仕組みが回れば、オーナーが行うのは清掃と集金、そしてメンテナンス程度。在庫管理や集客活動は不要だ。この「手離れの良さ」が、増店を検討するオーナーが多い理由でもある。

利用者のボリューム層は30代~50代の働く世代。そこには「24時間いつでも」「短時間で」「誰にも邪魔されず」という現代人の切実なニーズがある。

「美容院やマッサージ店で、スタッフと話さなければいけないのを負担に感じる方は少なくありません。うちではスマホホルダーを用意していますが、皆さん自分のスマホで動画を見たりしながら、完全に自分だけの時間を過ごしています」

森氏が見据えるのは、単なるマッサージビジネスの拡大ではない。その視線の先にあるのは、テクノロジーがもたらす「無人ビジネスの完成形」だ。

「5~10年後に人型ロボットが進化し、低コストで導入できるようになった際、その時は既に全国に店舗が行き渡っており、無人での物理店舗ビジネスの豊富なノウハウを持っている『ちょこま』では、真っ先にロボットを物理世界でのビジネスに活用していくことができます。特に、マッサージは人件費比率が極めて高いビジネスだからこそ、自動化の恩恵が最大化されます。今は『ちょこま』ではマッサージチェアのみを活用していますが、将来的には人型ロボットがマッサージを行う形も『無人マッサージ屋ちょこま』のサービスとして追加していきたいと考えています。」

その壮大なビジョンの第一歩として、森氏は「2030年までに1000店舗」という具体的な数字を掲げる。これは日本全国にあるマッサージ店のわずか1%に過ぎない(現在のマッサージ店舗数は約10万店舗で、コンビニの約6万店舗よりも多い!)。しかし、その1%を「ちょこま」のような無人店が担うようになることは、日本のリラックス体験を根本からアップデートする、極めて現実的な挑戦に思える。


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