内職業界に再び注目を集める! これまで存在しなかった 潜在需要を掘り起こす内職市場
潜在マーケットを掘り起こし、内職は新たなビジネスへと進化
昭和の高度経済成長期には、全国で180万以上もの人が内職に従事していたと言われるが、現在は12万人程度にまで減少している。そんな内職に再び光を当て始めているのが、内職市場だ。平成18年に創業した内職市場は、内職業界の拡大を目指し、潜在マーケットに注目した。「当初、内職の既存マーケットというのは製造業や印刷業が主だったんですが、そこに参入してしまうと最終的には単価の叩き合いになります。内職業界の活性化を目指しているのに、それでは逆に乱してしまう。そこで潜在マーケットの掘り起こしに注力してきました」と話すのは、株式会社内職市場の取締役社長・針尾智子さん。
内職業における潜在マーケットとはどのようなものなのか。
「今は推し活がブームです。推し活を背景にしたアニメキャラのグッズも人気で、たとえば、缶バッジに安全ピンを差し込んだり、キーホルダーやチェーンをアクリル板とセットにするといった加工作業。あるいは、まつげのエクステの1本1本をピンセットで付けていく作業など、雑貨関係や美容関係など幅広い分野で内職作業が存在しています」
そもそも内職とは、時給ベースではなく単価計算の仕事。1個いくら、1回いくらで請け負える簡単な軽作業のことを指す。労働力の減少や人件費の高騰などの悩みを抱える企業側にとって、それまで自社内でこなしていた作業を内職として外に出すことで、経費の削減、コストダウンにつながる。また、働き手側にとっては、自由な時間に自分のペースで仕事ができるというのが最大の魅力。それら双方をマッチング、架け橋となるのが内職市場というわけだ。
時間と場所を選ばない内職という働き方が時代とマッチし始めた
内職従事者が12万人と減少したなかでも、潜在需要は高いと針尾さんは言う。
「昔と違って、女性が働くことが当たり前の世の中にはなりましたが、出産育児というタイミングで、どうしても外に出て働くことができなくなってしまう方も多いのが現状です。子育て中のお母さんたちは、お子さんがお昼寝をしている間に内職をパパッとやってみたりといったことができるので、喜んでいただいています」
ほかにも、現役を退いたシルバー世代や就労支援事業所の利用者、介護者や障害者を抱えている方など、内職業に従事している人は多種多様だ。
「人生100年時代と言われていますが、シルバー世代のご夫婦で内職を取りに来られて、帰り道の喫茶店でコーヒーを飲んで、家に帰って内職仕事をする。そんなライフスタイルもできてきているんですね。また、就労支援事業所の職員さんが内職を取りに来られるんですけど、うちには様々な内職仕事があるので、利用者の方でもできる仕事が必ず見つかる。自分でも仕事ができるって思えると、それが自信につながって、利用者の方にも大きな変化があると伺っています」
FC展開によるスケールメリットを生かした今後の事業展開
時代はAI、チャットGPTなど、目まぐるしく様変わりしているが、人の手が必要になる仕事がなくなることはない。まだまだ未開拓な潜在マーケットがあるので、そこを広げていくことによって需要も大きく広がってくる、と針尾さんは自信を覗かせる。
「機械で大量生産はできるものの、生産数が少なかったりすると、どうしても手作業や目視検品といった、人の手が必ず必要になってきます。母の日や誕生日にプレゼントするプリザーブドフラワーも、グリセリン液の中に押し花をピンセットで入れていくのは手作業。結婚式場で新郎新婦が渡すプレゼントの可愛い帯留めだったり、手染めのヘアカラーの手袋と説明書を箱に入れる作業など。そう考えると、身の回りに内職作業でできることが本当にいろいろありませんか?」
そう話す針尾さんに、今後の展望を伺うと。
「うちの大きな目的の中に、業界の活性化というのがあります。単価がどんどん削られていく中で、内職に従事してくれる方たちを守っていきたいし、もっと表舞台に立つべきだとも思っています。そのためにも全国に広がるFCチェーンメリットを生かした事業展開を行っていきたい。今後もFC加盟店さんを増やすとともに、内職市場としてもインフラを活用したビジネスをどんどん生み出していきたいと考えています。そのためにもFCオーナーとして、参入してみようと思う人がひとりでも増えてくれるとありがたいですね」
現在全国に90店舗以上と、成長し続けている内職市場。働き方の多様性も広がりつつある時代に、そのひとつの選択肢として、内職という存在が今後ますます大きくなっていくのは間違いない。また、そのときには内職という仕事自体のイメージも大きく様変わりしているはずだ。