フランチャイズで中古車買取業を開業する手順と初期費用・必要な許可も解説
節約志向の増加や、売り手にとって好都合な売却状況もあるなど、中古車買取業の需要は増えてきています。
この状況の中で、中古車買取業の独立開業を目指す人も増加傾向にあります。
一方で中古車買取業は、買取時に高い眼力が必要など、難しい業務がある業種です。
ですがフランチャイズ加盟開業によって、比較的業務の段取りが進みやすくなる方法もあります。
今回はフランチャイズと中古車買取業について、開業に必要な許可や、フランチャイズで開業するメリットなどに触れながら解説します。
目次
フランチャイズの中古車買取業の年収
フランチャイズの中古車買取業の年収は、標準的に500万円程度といわれています。
そして人気車を集められたり、高級車にもうまく対応できたりすると、700万円以上を目指すことも可能です。
また2店舗目開業や、大型取引になる事業者との取引もできてくると1,000万円以上も視野に入ってくる業種といえます。
高収入を目指すためには、以下のような点を心がけるとよいでしょう
- 自分の中古車買取業事業計画を、実現できそうな本部を選択する
- 商圏エリアで需要の高い車種取引に精通し、早く取引に慣れる
- 国道沿いなど、入りやすく看板が目につきやすい場所で開業する
- 顧客と本部に対し、早め早めの連絡を自分と従業員に徹底する
- 修理歴を見抜く眼力を培う
- 車そのものに対する知識や、接客能力を向上させる
- 勉強会に出席し、情報や他の方法などを学ぶ など
初期費用とロイヤリティなどの費用
(1)初期費用
初期費用として一般的に、300~400万円程度を要する傾向にあります。
そして広い在庫スペースを確保したり、店舗を新たに構えようとしたりすると、1,000万円を超える時もあります。
一方で店舗や在庫スペースは、元々もっているなどのケースでは、100万円以内に抑えられる可能性もあります。
また上記金額は、フランチャイズビジネスとしての初期費用であって、自己準備資金は安くなる可能性もあります。
車買取費用としての運転資金は、別途考慮する必要もあります。
【初期費用内訳】
- 加盟費
- 出店費
- 研修費
- 店舗初期費
- 看板取付工事費
- 許可証申請費
- 店舗内設備準備費 など
(2)ロイヤリティ
定額制:月額50,000~150,000円程となっています。
ロイヤリティはなく、月会費としているところもあります。
そしてシステム利用料で1~2万円程要するケースもあります。
中古車買取業の業務内容
中古車買取業には、次のような業務内容があります。
(1)仕入れ
まずビジネスの商品である、車の仕入が必要です。仕入れの方法には、一般的な買取に加えオークションでの入手方法もあります。
販売をするケースでは、以下の業務内容もあります。
(2)メンテナンスと値付け
実際に第三者へ売り渡すための、段取りです。
まずメンテナンスをして、売れる商品にする準備をします。
そして会社に利益が残るよう、上司の人などとも相談して販売価格設定をします。
(3)販売
次のユーザーへの、販売となります。販売方法には一般的な店頭での個人への販売に加え、オークションでの販売があります。
そして本部や加盟者同士と情報を共有して、他店舗で売れる可能性もあります。
買取価格の事情
買取価格には、次のような事情があります。
(1)買いやすさ
当然のように感じるかもしれませんが、需要の高い車ほど買いやすくなります。
同じ車種のケースでは、基本的に次のような査定項目となります。
- 外装と内装の状況
- エンジンやブレーキなどの、機能的な状態
- 年式や走行距離
- 事故や修理の記録
機能や外観などに特に目立った問題がなければ、年式や走行距離が大きく影響する傾向にあります。
(2)高いケースでは販売価格の90%程
需要の高い車種で車の状態もよく、タイミングもよければ、買取価格は最大限販売価格の90%程ともいわれます。
つまり業者側の利益は、マックスで10%程のみなわけです。
小売業の売上高総利益率は30%弱といわれることもあり、マックスで10%程は妥当とはいえません。
この事情にも関わらず90%程で買取るのは、恐らくすぐに売れるだろうと強い自信があることによります。
売上高総利益率:売上高から売上原価を差し引いた、利益率のこと。
(3)安いケースでは販売価格の60%程
人気が高くない車種や、良好な状態でも5年落ちなどのケースでは、販売価格の60%程になることもあります。
なかなか売れないとスペースを占有し、維持に手間や費用がかかるなどの事情もあります。
(4)店によっても買取価格が異なる
例えば次のような要因で、同じ車種でも各々の店で買取価格が異なってきます。
①回転率
中古車買取業において、販売量も大切です。
買取価格が高ければ、利益が低くなることがある旨は上記でも述べています。
一方で1台1台の利益は低くても、販売量が多くなれば、結果的に1か月や数か月単位での利益は高くなります。
そして需要の高い車種と、そこまで需要が高くない車種の買取価格は、店によります。
②時期やエリア
例えば3月は、辞令に伴う転勤と引っ越しのシーズンでもあります。
都心部から地方への転勤になれば、マイカー購入の意向にもなりやすい可能性もあります。
そして6月や12月はボーナスシーズンで、車買替により需要が高くなる傾向もあります。
(5)利益の考え方
必ずしも販売価格から買取原価を差し引いた額が、買取業者の利益になるというわけではありません。
買い取った車に対して別途整備が必要であったり、販売に手数がかかったりする可能性もあります。
フランチャイズによる中古車買取業開業の手順
(1)資料取得
まず問い合わせをして、資料を取得します。そして中古車買取業について、大まかに理解します。
(2)説明会参加
フランチャイズビジネス方針や中古車買取業の詳細について、理解します。
この説明会では、商圏エリアや加盟条件についての話も含めます。
(3)契約段取
加盟申込をして審査通過後、加盟と契約締結となります。この段階で、古物商許可の確認をする時もあります。
(4)店舗段取
物件取得と、店舗準備をします。人目を惹けるよう、デザイン性のある外装や看板も重要です。
(5)従業員段取
最初から従業員を雇うケースでは、従業員の手配もあります。
従業員の手配は、容易ではありません。慣れていないケースでは、本部に密に相談しながら進めることがポイントともいえます。
(6)研修
中古車買取業として、研修をするところもあります。
自営業に初挑戦するケースでは、情報の取り扱い方や経営に関する書類のことなども、学んでおきたいものです。
(7)開業
(1)~(6)のプロセスを経て、中古車買取業開業と業務開始となります。
必要な許可とその内容
古物商許可:古物をビジネスの上で取引し、利益を上げていくために必要な許可のことです。
許可取得のためには、次のような段取があります。
(1)欠格要件
次のような要件に該当すると、許可を取得できない可能性が高いので、まず確認が必要です。
- 古物商許可取り消し処分を受けてから、5年経過していないケース
- 住所不定のケース
- 暴力団員もしくは、類似した行動をとる恐れがあると解釈されるケース
- 未成年者のケース など
(2)必要書類
申請に当たっては、次の書類を準備します。
①個人のケース
- 古物商許可申請書
- 略歴書
- 誓約書
- 健康保険証や運転免許証でない、申請者の本籍地記載のある身分証明書
- 住民票
- 店舗の賃貸借契約書コピー
※業務でホームページも使うケースでは、ドメイン割り当て通知書のコピーが必要な可能性もあります。
※申請書は申請者が必要な一方、申請書と賃貸借契約書コピー以外は、管理者も準備が必要です。
②法人のケース
法人のケースでは上記書類に加え、定款の写しと法人の登記事項証明書が必要となります。
(3)管理者選任
申請者と管理者が異なるケースでは、管理者の選任も必要です。管理者には、次の要件があります。
- 店舗に常駐する旨
- 古物商許可申請の、欠格要件に非該当の旨
- 古物商許可を取得した者
(4)警察署へ書類提出
所轄警察署の生活安全課へ、必要書類を提出します。そして収入印紙代で、19,000円が必要となります。
提出へ行く前に、アポを取っておくことがおすすめといえます。
(5)許可証取得
申請から許可承認まで、40日程度を要します。承認されたら、許可証を取りに行きます。
※古物商許可に加え、次の許可取得も考慮がおすすめといえます。
- 自動車解体業許可
- 自動車引取業登録
- フロン回収業許可
フランチャイズで中古車買取業を開業するメリット
フランチャイズの中古車買取業開業には、次のようなメリットもあります。
(1)ブランド力
本部に30年程度にわたる、大きな業績とブランド力のあるところもあります。
この業績とブランド力は、リピーター獲得や継続的な収益確保につながります。
(2)価格設定やタイミングのアドバイス
加盟者は基本的になるべく安価で買取り、高い値段で売りたいものです。
一方でこの値段設定は、容易ではありません。
欲しかった車買取の問い合わせがあったにも関わらず、自社の値段が安くて、他店に売却される可能性もあります。
そして小売業では特典を伴った、キャンペーン開催も重要です。
このキャンペーン開催については、開催のタイミングも重要ながら、タイミング設定は容易ではありません。
ですがフランチャイズでは、このような価格設定やイベント開催タイミング時期について、専門家がアドバイスします。
(3)自分の店舗を活かせる
現状仮に自動車整備士か何か、自動車に関する事業を店舗持ちで営んでいるとします。
すると現状の店舗を活用し、整備士などの経験も活かしながら、加盟と開業できる時もあります。
(4)自動車営業経験を活かせる
過去に自動車営業経験があると、この営業経験が活きる可能性もあります。
営業経験から評価されるのは、次のような点です。
- 顧客との折衝力
- 見やすくわかりやすい資料作成力
- 本部との連絡やスケジュール調整
- 従業員管理
- 気遣いとタイミングの計り方
- プレゼンテーション力
(5)情報管理システム
小売業では、随時様々な情報が必要となります。現状進行中の取引に関する時はもちろん、顧客と会話中に、取引とは直接関係がなさそうな会話もあります。
このような会話の時にも情報があると、会話がスムーズに和やかに進む元にもなります。すると、別の取引にもつながる可能性もあります。
フランチャイズでは、様々な情報を本部が作成及び管理し、随時閲覧できるようにしているところもあるので便利です。
(6)勉強会
フランチャイズでは、加盟者による勉強会を開催するところもあります。
本部ホームページに掲載されていない情報や知識などを、本部の担当者より聞ける可能性もあります。
そして加盟者同士のコミュニケーションにより、自分にとって有益な情報を得られるチャンスでもあります。
(7)備品サポート
販促チラシやノボリなどの備品に加え、ロゴ付きのジャンパーなども、スムーズな運営にはプラスとなります。
一方でこれら備品の調達を自分たちでしようとすると、現状業務に関して何かミスが生じる傾向もあります。
ですがフランチャイズでは、このような備品調達も本部がするところもあります。
(8)買取代金立替サポート
買取業なので、顧客から買い取る際の現金が必要です。
一方でまだ売上や入金が軌道に乗っていない時は、常に数十万円や150万円以上の大金を、準備しておくことは容易ではありません。
ですがフランチャイズでは、本部が立て替えサポートをするところもあります。
(9)在庫リスク軽減
全国加盟店による買取ネットワークによって、常時2万台程度の車を自店の在庫として取り扱えるところもあります。
そして顧客との取引成立後に、仕入れる方法が可能なところもあります。
よって、在庫リスク軽減につながります。
フランチャイズで中古車買取業を開業するデメリット
(1)本部の支払いを待ってもらえない
本部の買い取り代金サポートで対応しようと考えても、本部からの支払いは、数日か1週間程度待つ必要がある場合もあります。
顧客が「現金ですぐに欲しいので、ないのなら他に売る」となると、困ってしまいます。
(2)あくまで自分の責任
本部専門家アドバイスによる、査定をはじめとした対応をしたとします。
それでも顧客に対する責任は、自分にあります。
顧客から査定や対応に対し不満を言われても「本部の専門家による見解なので」の弁解は、通用しない可能性があります。
(3)当初はロイヤリティ支払いの見通しが難しい
フランチャイズビジネスでは、基本的にロイヤリティの支払いがあります。
中古車買取業では、飲食店や一般的な小売系と異なり、毎日のようにたくさんの取引と現金やり取りがあるわけではありません。
よって毎月のように複数の取引や入金があるまでは、ロイヤリティ支払いのための予算作りが、スムーズにできにくい可能性もあります。
中古車買取業の難点と失敗を避けるコツ
(1)許可証取得
許可証取得段取は上記で記していますが、一筋縄に承認されるとは限りません。
中古車買取業界では、取引の単価が大金になったり、盗難車が関係するトラブルの可能性があったりと比較的リスクの懸念が注視されます。
この事情により書類やヒアリングにて「この人は本当に盗難車を見抜けるのか、中古車を扱う人として信頼できるのか」などの内容を、チェックされる傾向もあります。
よって許可証申請に当たっては、本部や専門の士業家と事前に相談や策を練っておく必要もあります。
(2)修理歴を見抜けるか否か
修理歴を見抜く眼力も、大切です。
点検記録簿に記載されていればよいですが、皆が皆理性的に修理を自己申告するわけではありません。
軽微な傷程度では、自己修理する人もいます。
もし修理歴を見逃したまま、第三者に売ってしまい、売った後に発覚すると大変なトラブルにもつながります。
(3)過度なセールは要注意
取引数や売上を確保しようと、買取と販売双方の顧客にたくさん連絡をしたい時もあるでしょう。
一方で顧客には顧客の、事情や都合もあります。
過度な連絡やセールスで、せっかくの見込み客を失ってしまう可能性もあります。
そればかりか本部にクレームをされると、本部からの信頼失墜にもつながります。
顧客の事情に沿ったペースでの、対応が大切です。
(4)同業他社への営業
売上のためには、個人相手の売買はもちろん大切です。
そして車関係の、同業他社とのつながりも大切です。
フリーランスにせよ法人にせよ、事業者と取引をできると、大型契約になる可能性もあります。
また個人以上に、口コミで評判が広がる可能性もあります。
(5)無在庫時の対応
自分の店に無い車について、売買契約をしたとします。
一方で想定外の何らかの不備により、納車予定日に顧客へ納車できないとします。
こうなると自分だけでなくフランチャイズ本部そのものへの、信頼損失にもつながりかねません。
もし事業者による商用車目的での購入のケースでは、さらなる問題の可能性もあります。
よって車そのものの正確な状態確認や輸送業者の状況把握、そして顧客への対応方法なども、本部にも相談しながら慎重に進める必要があります。
(6)許可申請時期
複雑な段取は、ゆとりをもって準備しておきたいものです。
本部との打ち合わせや車仕入の段取りなどで数ヶ月みておいて、許可が絶対に間に合うよう1年前の今から申請しようと考える人もいるでしょう。
一方で古物商許可には、許可から6か月以内に営業の実態がないと、許可が停止か取消になる可能性もあります。
よって許可を申請する時期も、本部や士業家との念入りな相談がおすすめといえます。
まとめ
ここまで、フランチャイズと中古車買取業について考察してきました。
押さえておきたい点は、中古車買取業開業のための許可や、フランチャイズで開業するメリットです。そして、買取価格の事情もポイントといえます。
自動車産業は、日本を代表する産業の1つです。
需要や人気の高い車種をそろえ、自身も営業力や車を診る眼力を培い、売り手買い手双方を満足させられる中古車買取業を営んでください。