フランチャイズのテリトリー制とは|契約内容やエリア制との違いを解説
独立開業したいと思っている人の中には、フランチャイズに加盟して事業をスタートさせたいと思っている人もいるのではないでしょうか?
フランチャイズによる開業を検討する際、気になるのは、競合する店舗や加盟しようとしている同じブランドの店舗が出店しているかどうかです。
いくらフランチャイズに加盟したからといって、周辺の環境次第では、開業したいエリアで店舗経営ができない場合があります。
なぜ、自分が開業したい場所で事業を行うことができなのでしょうか?
これは、フランチャイズ本部がテリトリー制により店舗の出店を取り決めていることが原因です。
この記事では、フランチャイズ契約のテリトリー制について詳しく解説します。
目次
フランチャイズ契約のテリトリー制って何?
フランチャイズ本部は、テリトリー制やエリア制など、独自の取り決めにより出店する店舗の数を決定しています。
ここからはテリトリー制の概要や、テリトリー制を採用する理由などについて解説しましょう。
(1)テリトリー制の概要
フランチャイズのテリトリー制とは、一定の商圏下では、同じフランチャイズ店舗を出さないという制度です。
全てのフランチャイズ本部がこの制度を採用しているわけではありません。
逆に複数の店舗を同じ商圏に出店してしまうドミナント戦略などもあり、地域の特性やフランチャイズ本部の経営方針などによって大きく異なります。
どの制度にもメリットやデメリットがありますので、しっかりと違いを認識し、フランチャイズ本部選びにおける判断材料としなければいけません。
(2)なぜテリトリー制が必要?
なぜ、フランチャイズ本部はテリトリー制を採用し、あまり複数の店舗を同じ商圏に出そうとしないのでしょうか?
最も大きな理由は、フランチャイズ加盟店の利益を確保するためです。
フランチャイズ加盟店が店舗を開業し経営する中で、近くに同じブランドの店舗が出店されてしまうとどのような事態が想定されるでしょうか?
お客様の取り合いが想定されます。
お互いの利益を食い合いしてしまう、いわゆる共食い状態が起こってしまうのです。
フランチャイズ本部としては、数多く出店した方がロイヤリティなど売り上げ増に繋がりますので店舗が多いに越したことはありません。
しかし、共食い状態の店舗がたくさんあるといずれどちらかが廃業してしまうことにも繋がります。
せっかくフランチャイズに加盟してくれたオーナーの利益を確保する意味で、テリトリー制を採用し、共食いを防ぐようにしているのです。
テリトリー制にはどのような考え方があるの?
ひとことでテリトリー制といってもテリトリー制にはいくつかの手法があり、それぞれに特徴があります。
ここからはテリトリー制の中でも、よく採用されている3つの手法について詳しく解説していきましょう。
(1)オープンテリトリー制
オープンテリトリー制は特定の商圏を持たずどこの市場でも競争していいとされる手法です。
この手法は、まだ、商品やサービスが認知されていない時期に採用されていることが多い手法といえます。
マイナスポイントとしては、自由競争がある分、内部での競争が激化してしまい、値下げなどといった競争が自社内で引き起こされてしまうことです。
認知度が高まるまでの間で採用される手法です。
(2)クローズドテリトリー制
クローズドテリトリー制は、テリトリー制の最も代表的な手法です。
フランチャイズ加盟店に一定の商圏を与え、その商圏内においては同じブランドのセールスを心配する必要がありません。
当然ながら自分たちも、その商圏内での販売しかできず、他のテリトリーに侵入して営業してはいけません。
商圏が決まっていますので、そのエリアにおいては、サービスを充実させることが可能ですが、成長性の面では一定の数字で頭打ちになってしまう可能性があります。
(3)ロケーション制
コンビニや飲食店経営などで採用されており、店舗がある所在地のみ事業を行うことができる手法です。
コンビニの場合、近くに同じブランドの店舗が複数存在している場合がありますが、これはロケーション制を利用していることが大きな要因となっています。
店舗が多いことで相乗効果を発揮するケースもあるのですが、反面、エリアによっては前述した共食いを起こす可能性もあるでしょう。
しかもロケーション制を採用しているフランチャイズ本部の場合、近くに同じブランドの店舗がオープンしたとしてもフランチャイズ本部に異議申し立てはできません。
ロケーション制を採用するフランチャイズ本部に加盟する場合は、近くに同じブランドの競合店が出店する土地がないかといった事前調査が必要です。
フランチャイズにおけるエリア制とテリトリー制の違いは?
フランチャイズ本部が商圏についての出店方法としては、前述したテリトリー制だけではありません。
いくつかの制度がありますが、エリア制も良く採用されている制度です。
では、このエリア制とはどのような概要なのでしょうか?
エリア制にもテリトリー制同様いくつかの手法があります。
ここからはエリア制の概要やエリア制で採用している手法について解説しましょう。
(1)フランチャイズにおけるエリア制
通常、フランチャイズ本部は一ヶ所あり、フランチャイズ本部が加盟店において出店が可能かどうかといった判断を行います。
しかし、全てのエリアにおいて本部が一ヶ所となってしまうと、出店審査において時間がかかってしまう場合があります。
このような問題を解消するための制度として、エリア制を採用しているフランチャイズ本部があるのです。
エリア制とは、フランチャイズ本部が一定のエリアごとに複数ある制度といえます。
それぞれのエリアにおいて加盟を決定するエリア本部がありますので、スピード感をもって判断することが可能です。
(2)エリア・ディベロップメント・システムとは?
エリア制の中でもいくつかの手法がありますが、このシステムでは、エリアのフランチャイズ本部が決定できるのはそのエリアにおける直営店の出店に関する権利だけです。
加盟店を出店する権利はエリア本部に与えられません。
直営店だけを判断することより、そのエリアにおいて、エリア本部と直営店の意思疎通が図りやすいといったメリットがあります。
加盟店の出店判断はあくまでもフランチャイズ本部が決定するといったシステムです。
(3)サブ・フランチャイズ・システムとは?
サブ・フランチャイズ・システムは、エリア本部が直営店の出店と加盟店の出店までを判断することができるシステムです。
フランチャイズ本部ですべて判断することによりスピード感をより早く実現させる手法といえます。
フランチャイズ加盟する事業者も出店するかどうかの決断が早くできるという点がメリットです。
しかし、直営店と加盟店をエリア本部で統一しなければいけませんのでフランチャイズにおける方針やマニュアルの徹底が難しくなる場面も出てくるといえるでしょう。
(4)テリトリー制との違い
前述したテリトリー制との違いは、加盟店の出店について本部が判断するかエリア本部が判断するのかといった点が最も大きな相違点といえます。
エリア制を採用して、さらにサブ・フランチャイズ・システムの場合はエリア本部が出店の是非を判断できますが、テリトリー制はあくまでも本部が判断しなければいけません。
スピード感においては、エリア制が有利だといえるでしょう。
しかし、フランチャイズ本部との連携といった点ではテリトリー制の方がより強い関係性となるケースが多いといえます。
フランチャイズにおけるテリトリー制のメリットとは?
ここまでは、フランチャイズにおけるテリトリー制の概要やエリア制との違いといった点について解説してきました。
ここからはテリトリー制を採用しているフランチャイズ本部に加盟した場合のメリットについて解説します。
(1)同じ商圏での出店が無い
テリトリー制は基本的に、同じ商圏における出店を制限する制度です。
前述しましたが、フランチャイズ加盟店同士のお客様の取り合いを防ぎ、一定の収益を確保することが大きな目的とされています。
せっかく出店したのにしばらくすると同業他社ではなく、同じブランドの店舗と争うことになるのは経営者にとっては大きなデメリットとなるでしょう。
このようなリスクを防ぐ点で、テリトリー制は大きなメリットといえます。
(2)売上が安定しやすい
商圏に競合店舗の出店が制限されますので、売り上げが安定することもメリットとなります。
もちろん同業他社の出店は想定していかなければいけませんが、同じブランドの競合が避けられるというのは売り上げの安定に大きなメリットを及ぼすといえるでしょう。
(3)その地域における先行者利益を得ることができる
商圏内の出店が制限されているということは、自分たちの出店がある場合は、その商圏において同じブランドは営業を行っていないということにも繋がります。
先行者利益を得やすく、最初に固定客を掴むことも比較的獲得しやすいといえるでしょう。
いったん先行者として出店すると、その商圏におけるブランドの認知度は非常に高くなりますので注目度も高くなることが想定されます。
これも大きなメリットとなるのです。
フランチャイズにおけるテリトリー制のデメリットとは?
テリトリー制はメリットばかりではありません。
デメリットもありますので、双方をしっかりと理解した上で加盟する判断材料となるでしょう。
ここからは、テリトリー制におけるデメリットについて解説します。
(1)テリトリーの商圏次第では集客に影響
フランチャイズは地域によって同じ商圏に複数の同一ブランドを展開するドミナント戦略を用いている場合があります。
これは、その地域におけるブランド力を一気に高める手法です。
地域によっては1店舗だけの出店となると訴求効果が薄く、知名度が浸透しない場合があります。
これは、他のブランドが、エリア内でドミナント戦略を用いている場合などに起こりやすい傾向です。
1店舗で複数の他社ブランドと戦うことになり集客に影響する場合があります。
(2)同業他社には全く関係がない
テリトリー制はあくまでも同一ブランドにおける出店の制限のみです。
つまり同業他社との競合には全く関係がありません。
せっかく開業しても同時期に同業他社が開業してしまうと結局のところお客様の取り合いとなってしまい、サービス内容や知名度をもって争わなければいけないのです。
まとめ
フランチャイズ経営において、そのフランチャイズ本部がテリトリー制を利用しているのかどうかといった点は非常に大切なポイントです。
フランチャイズによる開業を検討している場合にはかならず把握し、そのフランチャイズに加盟するかどうか判断材料の一つとしなければいけません。
この記事で解説したようにテリトリー制にはいくつかの手法があり、同じテリトリー制でもシステムによって内容は大きく異なります。
他にもエリア制やドミナント戦略といった出店における手法がありますので、開業しようとしている業種の性質などから判断する必要があるでしょう。