フランチャイズで整骨院を開院するために必要な資格と手続き・健康保険との関係も解説
高齢化が以前にも増して進む中、整骨院を利用する人は増えてきています。
そして一般的に40代後半あたりから、骨や関節などに何らかの違和感や痛みが出始める傾向もあります。
この整骨院の必要性が高まってきている中で、整骨院を開院しようと考える人も増えてきています。
整骨院への支払いは事実上、一部保険から支払われる背景もあります。
一方で整骨院運営は、施術以外にも複数の、複雑な段取りがあります。
ですがフランチャイズ加盟の開院で、複雑な段取りをはじめとした、整骨院運営が進めやすくなる傾向の選択肢もあります。
今回はフランチャイズと整骨院について、健康保険と整骨院の関係や必要な免許と手続などに触れながら解説します。
目次
フランチャイズの整骨院の年収
フランチャイズの整骨院の年収は、標準的に450~500万円程度といわれています。
開院して集客や経営状況が落ち着くまでは、300~400万円程度の加盟者もいます。
一方で施術可能な従業員を複数雇えば、600万円や700万円程度も見込めます。
また大規模経営にすれば、1,000万円程度も可能な業種といえます。
【高収入のコツ】
初期費用とロイヤリティなどの費用
(1)初期費用
初期費用として一般的に店舗規模にもよりますが、400~700万円程度は要する傾向にあります。
そして、高いケースでは700万円や1,000万円以上、さらに3,000万円程度の時もあります。
一方で自宅開業や居抜き物件にするなどすれば、250万円以内に収まる時もあります。
また、加盟金や保証金がゼロ円のところもあります。
なお必要自己初期準備資金は、本部との話し合いで想定より低くなる可能性もあります。
【初期費用内訳】
- 加盟費
- 保証費
- 研修費
- 物件取得費
- 内装外装費
- 施術機器準備費
- 初期宣伝費 など
(2)ロイヤリティ
定額制:月額5~15万円程となっています。
変動制:売上の5~10%程となっています。
ロイヤリティの他に、システム利用料が3万円ほどかかるところもあります。
そして複数店舗経営になると、ロイヤリティが割引になるケースもあります。
健康保険と整骨院
整骨院にかかる時には、療養費の一部が健康保険から支払われることがあります。
ところが健康保険支払い対象になるケースと、ならないケースがあります。
(1)健康保険適用になるケース
健康保険は、次のような症状で急性の時に適用となります。
- 脱臼
- 捻挫
- 骨折
- 不全骨折
- 挫傷
- 打撲
上記に加え、医師の同意が必要な時もあります。
(2)健康保険適用にならないケース
次のようなケースでは、健康保険適用にならないので注意が必要です。
- 日常生活の疲れなどによる、肩こりや筋肉疲労
- マッサージ効果を得る目的での利用
- 慢性的な持病による痛み
- スポーツで過度の練習をしたことによる、痛みや疲労
- 短期間では症状改善が見込みにくい、長期にわたる症状 など
(3)健康保険利用の流れ
健康保険の具体的な利用方法は、次のような手順となります。
①受療者が施術を受ける
まず受療希望者が、保険証を提示して施術を受けます。
②療養費支給請求書を整骨院へ提出
自身か代理署名による療養費支給請求書を、整骨院へ提出します。
③一部負担金の支払い
受療者が一部施術費を、整骨院へ支払います。
④受療者が必要書類を受取
受療者が整骨院より、領収書と施術明細書を必ず受け取ります。
⑤整骨院側が療養費支給請求書を健康保険機関へ提出
整骨院側が、施術内容などの必要事項を療養費支給請求書に記入します。
そしてこの書類を健康保険機関へ提出し、療養費の請求をします。
⑥施術内容などの確認
健康保険機関側が受療者に、施術内容などの確認をします。
⑦療養費支払い
健康保険機関側が、整骨院へ療養費を支払います。
整骨院と整体院の違い
整骨院と整体院には、次のような違いがあります。
(1)施術者の資格
①整骨院
柔道整復師の国家資格が必要です。
②整体院
資格は必須ではなく、集客に有効な可能性のある民間資格はあります。
(2)保険適用
①整骨院
国家資格保持者がいる整骨院では、保険適用要件を満たせば、保険が適用されます。
保険は健康保険の他に、労働災害保険や自賠責保険が適用になることもあります。
②整体院
保険は適用になりません。
(3)施術方法
①整骨院
次のような施術方法があります。
- テーピング固定
- マッサージや矯正
- ストレッチ
- 関節の運動 など
上記に加え、電気治療や温熱療法もあります。
そして「非観血的療法」の方法もあります。
※非観血的療法
皮膚の切開などによる、出血を伴わない療法のことです。
②整体院
基本的に施術方法は、整骨院と似ています。
一方で、整体院ではリラクゼーション器具による方法もあります。
フランチャイズによる整骨院開院の手順
フランチャイズでは、次のような手順で整骨院を開院します。
(1)問い合わせや事業計画話し合い
まずフランチャイズ本部に問い合わせ、説明会出席などで事業内容を理解します。
そして整骨院運営方針など、事業計画を話し合います。
(2)加盟申込や物件選定着手
資金面なども鑑み、前向きに進みそうなケースでは、加盟に向けて動き始めます。
この時点から、物件選定に着手するところもあります。
(3)契約と物件手続
申込と審査通過の後、契約締結となります。そして、物件手続もあります。
自宅開業や居抜き物件開業にすれば、費用が安く収まることがあります。
(4)工事と機器の段取り
内装外装工事をして、施術機器準備をします。
(5)初期宣伝の段取り
新聞広告やホームページなど、開業に向けたオープニング宣伝の段取りです。
この時点で物理的には、開院準備完了となります。
(6)従業員の段取り
最初から従業員を雇うケースでは、この段階で従業員の手配もあります。
(7)開業
(1)~(6)の段取りを経て、遂に開院となります。
必要な免許と手続
整骨院開院には、次のような免許や手続が必要です。
(1)柔道整復師
柔道整復師は整骨院開業に免許が必須です。
次のような方法で取得します。
①国家試験受験資格取得
柔道整復師国家試験受験資格を得られる、専門学校や大学を卒業します。
②学校で学ぶ内容
- 解剖学
- 一般臨床医学
- 柔道整復理論
- 整復法実技 など
③国家試験受験
年1回実施される、国家試験を受験します。
④免許交付手続
免許を申請すると、柔道整復師名簿に登録されます。
そして公益財団法人柔道整復研修試験財団より、柔道整復師免許証明書が交付されます。
(2)施術管理者
施術管理者:柔道整復療養費の受療委任を取り扱います。
取得には、次のような段取りがあります。
①必要実務経験期間
- 2018年4月から2022年3月までの届出:1年間
- 2022年4月から2024年3月までの届出:2年間
- 2024年4月以降:3年間
②必要研修
2日間合計16時間の、柔道整復師施術管理者研修受講が必要となります。
③提出書類
- 実務経験期間証明書
- 施術管理者研修修了証
上記書類を、保健所に提出します。
(3)施術所開設届
施術所開設届:施術所を開設する旨を、保健所に承認してもらう必要があります。
次の書類が必要となります。
- 施術所開設届
- 柔道整復師免許の原本とコピー
- 施術所の平面図
- 最寄り駅からの道順地図
- 定款のコピーと登記簿謄本(法人のケース)
- 賃貸契約書のコピー(施術所が賃貸のケース)
※施術所開設届は、保健所に問い合わせて入手となります。
そして、開設後10日以内に提出する必要があります。施術所は、構造設備基準も満たす必要があります。
保険治療や労災治療には、次の手続も必要となります。
- 一般保険取扱手続
- 国家公務員共済保険取扱手続
- 地方公務員共済保険取扱手続
- 自衛官関係者保険取扱手続
- 労災の指定機関手続
フランチャイズで整骨院を開院するメリット
(1)医療保険請求業務サポート
加盟希望者は、健康保険適用制度に注目して、加盟と開業を目指す人もいるでしょう。
一方で、医療保険請求業務は複雑です。
少人数なら、そう大きなミスなく進められる傾向にあります。
ですが人数が多くなると、複雑な書類段取りや手続などに不備が生じる可能性が大きくなります。
医療保険請求業務で不備があると、保健機関からの信用低下や支払いの遅れにもつながります。
このような事態を避けられるようにフランチャイズでは、本部が請求業務をサポートしたり、ほぼ代理でこなしたりしてくれるところもあります。
(2)立替サービス
まだ開院当初売上や運転資金が安定しない間は、経済的に安定しない傾向もあります。
こうなると費用のことに気をとられ、施術そのものに至らぬ点が生じたり、接客がおろそかになってしまったりする懸念があります。
こうならないように、本部が資金立替サポートをするところがあります。
(3)研修会の開催
定期的に研修会を開催し、運営がうまくいっている加盟店の事例紹介などをします。
有名な施術者や有識者を招聘し、施術テクニックや専門知識を享受するところもあります。
(4)ノウハウ提供
仮に整骨院業の業務経験そのものはあり、施術には幾分かの自信をもっているとします。
一方で自身での開院となると、施術業務そのもの以外にも複数の業務があります。
例えば、税金対策は非常に複雑です。ですがフランチャイズでは、税金に関するアドバイスや税理士の紹介をするところがあります。
スタッフ募集など、従業員の手配に関するサポートするところもあります。
(5)屋号
ビジネス一般に、認知度の拡充は重要です。
医療系業界では、特に安全性も求められます。
このような医療業界で、ブランド化して安全面のアピールにもなる屋号を使えることは集客に効果的です。
(6)機器選定
順調な施術には、よい施術機器選びも重要です。自身が雇われか何かで整骨院業務経験があれば、幾分か機器について詳しいかもしれません。
一方で、機器には種類がたくさんあります。ここでフランチャイズでは、本部が皆さんの希望に沿った機器を推薦します。
(7)デイサービスに併設
現状デイサービスなどの医療や介護事業などを営んでいれば、現状事業の場所への併設も可能なケースもあります。
現状事業の利用者や患者が、そのまま整骨院を利用すれば、集客の手間が省けます。
(8)自宅開業も可能
本部との話し合いを経て、自宅開業にできれば、初期費用低減にもつながります。
フランチャイズで整骨院を開院するデメリット
(1)ロイヤリティ
有名な名前の看板を掲げられたり、様々なサポートを受けられたりする分、本部へ対価を支払う必要があります。
収益を上げつつロイヤリティを支払える時は、フランチャイズで開院する意義はあります。
一方でロイヤリティ率1%の違いで、収益状況に少なからず悪影響が出る可能性があります。
比率の違いに注目し収益シミュレーションを重ね、念入りな分析が重要です。
(2)経営方針の制約
フランチャイズでは、経営方針や施術内容と価格も、本部から何らかの制約があります。一方で実際に開院してみると「あの施術をもう少し安くすると、売上アップするんだけどなー」という事態もあり得ます。
ですがなかなか、本部に価格ダウンを承認してもらうのは容易でないことがあります。
このように自分の店舗運営方針と、本部の店舗運営方針が合わなければデメリットになります。
(3)ライバル店出店
自分がターゲットとしたエリアに、他フランチャイズ本部の加盟者が開院する可能性があります。
こうなると自身の分のロイヤリティに加え、集客の懸念も生じます。
整骨院業の難点と失敗を避けるコツ
(1)施術で被害
施術者は常に細心の注意を払って、施術するでしょう。
それでも人間の体を相手にするので、何のアクシデントが起きるかわかりません。
やむを得ない想定できない要因によるアクシデントの可能性も、否定はできません。
このようなリスクに対して、損害賠償保険への加入がおすすめです。
一般社団法人日本治療協会も、相談先といえます。
(2)保険会社が支払いに応じない
例えば交通事故でケガをして、整形外科にもかかっている人が、自分のところにも来たとします。
そして交通事故によるケガのため、長期間になるケースもあります。
こうなると医師の同意がなければ、保険側が療養費の支払いに応じない可能性があります。一方で、医師の同意を容易には得られない可能性もあります。
整形外科医としては、仮に整骨院への通院を促す旨を記したくても、そう簡単には書きづらい心境もあるでしょう。
医師として自分が診ているにもかかわらず、整骨院への通院を積極的に促す文面を書きづらいことはうなずけます。
このようなケースでは「整骨院へ通院している、もしくは通院していた」と記して頂けるよう依頼すると、医師の同意とみなされる見込みもあります。
(3)立地選定
特に顧客が来院するタイプの業種なので、立地選定は重要です。
一方で適切な立地選定は、意外と容易ではありません。
フランチャイズ本部も立地選定についてアドバイスするでしょうが、次のような点も考慮しておきたいものです。
【好ましい場所】
- 特急や急行が停まる、駅前や駅の近く
- オフィス街や商店街の近く
- 高齢層が多い住宅街周辺 など
【好ましくない場所】
- 整地されていない、草が多く茂っている荒れ地の近く
- 工場の近くなど、大きな騒音がするところ
- 風紀を乱すような建物やお店が、近くにある場所 など
まとめ
ここまで、フランチャイズと整骨院について考察してきました。
押さえておきたい点は、健康保険と整骨院の関係や必要な免許と手続です。
そして、フランチャイズで開院するメリットもポイントといえます。
整骨院の需要は、今後も衰退はしないでしょう。
施術技量を上げ、できれば従業員も雇い、いろいろな症状を治せる整骨院で繁栄なさってください。