フランチャイズにおける競合避止義務とは?
フランチャイズに加盟して開業する場合、フランチャイズ本部と契約を結ぶことになります。
その際には、契約書に書かれたさまざまな項目を確認する必要がありますが、契約書の中には「競合避止義務」について書かれていることが多いです。
競合避止義務とはどのようなものなのでしょうか。
今回は、競合避止義務の概要や目的、契約に違反した場合のペナルティなどについて解説します。
目次
フランチャイズ契約における競合避止義務
フランチャイズに加盟する際は、フランチャイズ本部と加盟者が契約を締結します。
契約締結後は、加盟者はフランチャイズ本部の商標やノウハウを利用することができるようになり、本部に対して対価を支払う義務が生じます。
契約内容に関してはフランチャイズ本部ごとによって異なりますが、基本的にはフランチャイズ本部側が用意している契約内容を加盟希望者側が受け入れるかどうか判断します。
契約書に記載されている主な内容としては、契約期間、加盟金とロイヤリティ、秘密保持義務、中途解約やテリトリー制に関する事項などが挙げられます。
また、競合避止義務についても契約書に記載されていることが多いです。
競合避止義務とは、フランチャイズに加盟する本部と同種または類似する事業を行うことを一定の期間、控えなければならないという義務です。
例えば、ラーメンのフランチャイズチェーンに加盟した場合、競合避止義務によってオーナーはフランチャイズ契約期間中や契約終了後の一定期間は自らラーメン店を立ち上げることができなくなります。
競合避止義務を設ける理由とは?
フランチャイズ契約において競合避止義務が設けられることには理由があります。
主な理由について説明します。
(1)ノウハウの漏洩や不正使用を防ぐ
フランチャイズ契約をすれば、本部がこれまでに確立してきた経営ノウハウを提供してもらうことができ、そのノウハウを利用して加盟者は開業することができます。
フランチャイズの本部側からすれば、重要な会社の資産であるノウハウや営業方法などを共有することになるため、漏洩や不正使用が起きることは防ぎたいものです。
そのためにフランチャイズ契約の条項に秘密保持義務を定めることが多いですが、秘密保持義務だけでは守り切れない部分もあります。
そこで、秘密保持だけではなく競合避止義務も定めることで、フランチャイズ本部にとって重要な経営ノウハウを漏洩や不正使用から強固に保護しています。
(2)顧客や商圏の確保
フランチャイズ契約で競合避止義務を定める目的には、顧客や商圏の確保も含まれます。
競合避止義務を定めなければ、加盟者が同じエリア同じターゲット層に向けて出店を行い、既存のフランチャイズや本部が経営する店舗の顧客や商圏を奪ってしまう可能性があります。
そのため、「同一市町村区において競合する事業に従事してはならない」などエリアの制限を設けて競合避止義務を定めることがあります。
競合避止義務の期限
フランチャイズである程度経営ノウハウを身につけた後に、自分でも新たに事業を展開しようと考える方もいらっしゃるでしょう。
競合避止義務はどれくらいの期間、効力が持続されるのでしょうか。
(1)競合避止義務の期限
競合避止義務の期限については、本部とのフランチャイズ契約によってそれぞれ異なります。
競合避止義務によって加盟者の自由が過度に制約されないように、場所や期限の制限を設けることが一般的です。
競合避止義務の期限は、フランチャイズ契約期間中と契約終了1~3年の期間で設けられることが多いです。
(2)競合避止義務が無効になる場合もある
競合避止義務がフランチャイズ契約に定められていても、必ず有効になるとは限りません。
競合避止義務条項で業種や場所、期間の制限を具体的に設けていないような場合や、義務の範囲が広すぎるような場合は、加盟者の営業の自由を過度に制約することになります。
こうした場合、競合避止義務の条項が公序良俗違反として無効になる可能性があります。
本来であれば加盟者には自由に営業をする権利がある中で競合避止義務によって制約が発生するため、競合避止義務の有効性に関してはトラブルが起きる可能性があります。
競合避止義務に違反したらどうなるのか?
競合避止義務の期間中に類似するような店舗を独自で出店すれば、競合避止義務に反することになります。
フランチャイズ契約に定められた競合避止義務に違反した場合、主に以下のようなペナルティを受ける可能性があるので注意しましょう。
(1)違約金の発生
フランチャイズ契約では契約違反があった場合のペナルティとして違約金に関する規定が契約書に記載されていることが多いです。
違約金の金額についてはフランチャイズ本部ごとに異なります。
高額な金額が設定されている場合もあれば、大した負担にならない金額が設定されている場合もあります。
ただし、違約金が安いからといって「違約金を払えば済むことだ」などと考えて競合避止義務を無視することは非常に危険です。
競合避止義務に違反すれば、違約金以外にもリスクを負う可能性があるからです。
(2)営業の差止請求
競合避止義務に違反した場合、フランチャイズ本部より営業の差し止め請求が行われる可能性があります。
フランチャイズ契約に競合避止義務が定められており、その条項が有効だと判断されれば、フランチャイズ本部側は営業の差止請求が可能です。
営業の差止請求が有効な場合、オーナーは該当店舗の営業を止めなければなりません。
多額の初期投資をして開業したにも関わらず、差止請求を受けることにより営業できなくなるため、大きな損害を被ることになります。
(3)損害賠償請求
競合避止義務違反が深刻な場合、損害賠償を請求される可能性があります。
損害賠償とは、他人に与えた損害を加害者が賠償する行為です。
競合避止義務に違反した場合、フランチャイズ本部は競合行為によって生じた損害に対して損害賠償を請求することができます。
損害賠償請求に応じなければ裁判に発展する可能性もあります。
競合避止義務違反にならないように注意すべきこと
フランチャイズ契約の中でも競合避止義務は非常に大切なものであり、トラブルの原因にもなりやすい義務です。
競合避止義務に違反しないようにするために、以下の点に注意しましょう。
(1)契約書の内容を確認する
フランチャイズ契約をする際には、契約書の内容について簡単に説明を受けるでしょう。
しかし、契約書内容は非常に細かくて量も多いため、全ての内容についてその場で説明してもらい理解することは難しいです。
契約書は持ち帰るなどして内容をしっかりと把握し、分からない部分や納得できない部分がないか確認すべきです。
競合避止義務についても明記されているかどうか確認し、明記されている場合はペナルティや期限などについて確認しましょう。
(2)競合するような店舗を開業しない
フランチャイズの契約期間中、また契約が終了しても競合避止義務になる期間中は、競合になるような店舗を開業することは避けましょう。
競合するような店舗を構えれば、競合避止義務違反として違約金や損害賠償を請求される可能性があります。
実際に裁判で争うことになればリスクが大きいため、競合するような店舗の開業は避けるべきです。
フランチャイズ契約で競合避止義務以外に注意すべき点
フランチャイズ契約の項目は多岐にわたるため、競合避止義務以外にも注意すべき点は多数あります。
フランチャイズで開業した後に後悔しないために、契約書の中で注意すべき点についてご紹介します。
(1)契約期間
フランチャイズの契約期間は本部によって設定が異なります。
3~5年の契約期間であることが一般的で、規模の大きなビジネスは投資資金の回収に時間がかかるので契約期間が長めに設定されています。
コンビニなどは契約期間が5~10年に設定されていることが多いです。
適切な契約期間であるのか確認しましょう。
また、契約の更新は自動もしくは合意で更新されるため、契約更新の方法についても確認しておくとよいでしょう。
(2)本部に支払う金銭の内容と金額
フランチャイズ本部へ加盟者が支払う金銭は、以下のようなものがあります。
- 加盟金
- 保証金
- ロイヤリティ
- 研修費、システム使用料など
本部に支払う金銭が説明会などで聞いた内容と、契約書に書かれている内容とで相違がないか確認しましょう。
しっかり確認しておかなければ、聞いていなかった項目が契約書に盛り込まれていることに後から気づく可能性があります。
内容だけではなく金額や利率なども確認し、納得してから契約をしましょう。
(3)テリトリー制
テリトリー制とは、フランチャイズ加盟店の営業する地域を指定する制度です。
テリトリー制は商圏を守るための制度になるため、加盟店は指定された地域で営業活動や広告を行います。
自分が出店したいと考える地域がテリトリー制の範囲外であれば出店できない可能性があるため、あらかじめ確認しておくべきです。
(4)中途解約について
中途解約について契約書に記載されているか確認しておきましょう。
中途解約についての記載がある場合、規定に沿って中途解約をすることができます。
一方で、中途解約の定めがない場合は加盟者側から中途解約をすることができません。
中途解約の際には解約金が生じることが多いため、解約金の金額についても把握しておきましょう。
まとめ
今回は、競合避止義務の概要や目的、契約に違反した場合のペナルティなどについて解説しました。
フランチャイズに加盟して開業することには、既存のビジネスが成功したノウハウや商標などを利用できるという大きなメリットがある反面、競合避止義務によってノウハウの流出や不正利用されることが防がれています。
フランチャイズで開業する際には、契約書に競合避止義務などさまざまな項目が記されているため、全ての内容をしっかり確認して理解してから契約するようにしましょう。