フランチャイズの移動販売(キッチンカー)の開業手順と費用・失敗を避けるコツは?
近年では、イベント開催やオフィス街のランチタイムなどで移動販売(キッチンカー)を見かけることが増えています。
移動販売は店舗を持たなくても良いというメリットがある反面、開業までの段取りで苦労する点もある業種です。
移動販売の開業は、個人で行うことも可能ですが、フランチャイズに加盟するという選択肢もあります。
フランチャイズ加盟による方法を選択すれば、開業準備や商品考案に取り組みやすくなるでしょう。
今回は、移動販売(キッチンカー)のフランチャイズについて解説します。
目次
フランチャイズの移動販売の年収
移動販売にはさまざまなジャンルがありますが、フランチャイズの移動販売の年収は、一般的に400~500万円程度といわれています。
近年ではイベント出店や平日のオフィス街への出店も人気が高く、700万円以上の年収を稼ぐ加盟者もいます。
また、オリジナルの商品の人気が高まることで1,000万円以上稼げるようなケースもあるでしょう。
移動販売式のフランチャイズで高収入を得るためには、次のようなポイントを押さえるべきだといえます。
- 初期費用をなるべく抑える
- 商品の需要と客層に見合った出店場所を確保する
- 注文から商品提供までの時間を、短くする
- SNSなどを利用して効率的に広告する
- 他店と差別化した商品を考案する
移動販売のフランチャイズの初期費用とロイヤリティ
(1)初期費用
移動販売をフランチャイズで開業する場合、初期費用として一般的に200~300万円程度が必要になります。
初期費用は300万円以上必要になるケースもありますし、100万円以内で抑えられるケースもあるでしょう。
移動販売のフランチャイズで開業する場合の初期費用として必要となる具体的な内訳の例は、以下の通りです。
- 加盟費
- 研修費
- 車両準備費
- 備品・消耗品
- オープニング広告費
- 初期材料費
(2)ロイヤリティ
フランチャイズで開業する場合、フランチャイズの商標などを利用する対価として本部に毎月ロイヤリティを支払うことになります。
ロイヤリティはフランチャイズブランドごとに設定が異なりますが、定額制の場合は月額30,000~35,000円、変動制の場合は売上の6%程が一般的です。
ただし、移動販売式のフランチャイズは他業種のフランチャイズに比べると、ロイヤリティが発生しないことが多い傾向にあります。
移動販売(キッチンカー)の商品ジャンル
移動販売(キッチンカー)で取り扱う商品にはさまざまなジャンルがあるため、開業する場合は取り扱う商品のジャンルから決めなければなりません。
キッチンカーにおける代表的な商品ジャンルは次の通りです。
(1)ドリンク系
コーヒーや紅茶などを扱う「カフェ」や、フルーツなどから作った「ジュース」系のキッチンカーが定番です。
イベント出店の場合、ビールやカクテルなどアルコールを扱うキッチンカーもあります。
(2)スイーツ系
クレープやアイスクリーム、わたあめ、かき氷などスイーツ系のキッチンカーは女性を中心に人気があります。
とくに近年ではSNS映えするようなスイーツが増えています。
こうしたスイーツ系は原価が低い傾向にあり、開業しやすいジャンルだといえます。
(3)食品系
焼き鳥や唐揚げ、たこ焼きなどお祭りの屋台でも馴染みあるような食品を取り扱うキッチンカーもあれば、ランチタイム向けにお弁当販売をするキッチンカーもあります。
また、野菜やお惣菜などを販売する小さなスーパーのような移動販売も存在します。
移動販売の出店場所別の出店方法
キッチンカーは自由に好きな場所へ出店できるわけではなく、出店場所に応じた手続きを取って出店しなければなりません。
出店場所別の出店方法についてご紹介します。
(1)イベント開催場所
野外のフードイベントやコンサート、フリーマーケットなどイベント開催場所への出店です。
こうしたイベントは多くの集客が期待でき、行政が関与していれば運営に補助金を利用できるケースもあります。
出店する場合はインターネットなどでイベントの開催情報を収集し、イベント開催者へ問い合わせましょう。
イベント開催地が管轄する保健所の営業許可証のコピーが必要になるため、あらかじめ準備しなければなりません。
(2)オフィス街
オフィス街には定食屋などもありますが、限られた時間内で昼食をとる必要があるため、気軽に購入できる移動販売の需要が高いです。
昼食のみの時間帯での営業になりますが、安定した収益が期待できます。
出店場所管理業者や出店スペース貸出サイトなどにキッチンカーを登録し、出店したい場所へ応募しましょう。
(3)商業施設や遊戯施設など
ショッピングモールやスーパーなどの商業施設や、パチンコ店などの遊戯施設でも移動販売を出店できます。
こうした施設は都心部から離れていても需要があります。
出店する場合は施設の管理者への問い合わせが必要です。
(4)観光施設や公園など
観光施設や公園に移動販売を出店できるケースもあります。
こうした場所は一定の集客があるため、売上が安定しやすいでしょう。
ただし、行政が管理している場合は出店許可を取ることが簡単ではありません。
もし出店許可がおりたとしても、入口など出店場所に制約があるケースが多いです。
(5)大学
大学の敷地は広く、昼時や学園際などのイベントでキッチンカーが出店するようなケースもあります。
若者が対象になるので品物の対処を絞りやすい傾向にあります。
出店する場合は、大学に問い合わせて許可を取りましょう。
フランチャイズによる移動販売開業の手順
フランチャイズで移動販売を開業する場合の基本的な手順を説明します。
(1)問い合わせ
まずは、自分が開業したいジャンルやコンセプトに合うフランチャイズ本部を探し、問い合わせます。
インターネットで問い合わせれば、ほとんどの場合は資料を送付してもらえます。また、説明会を実施しているケースもあります。
事業内容について時間をかけて精査し、気になる点があれば直接本部へ問い合わせましょう。
(2)契約
希望するフランチャイズ本部と契約を交わします。
契約する前にしっかりと契約内容について理解し、納得してから契約してください。
契約の締結時には加盟費などの初期費用を支払わなければならないケースもあるため、あらかじめ資金を準備しておきましょう。
(3)資格や許可の取得段
キッチンカーの営業では、食品衛生責任者の資格が必要です。
資格を持っていない場合は、食品衛生責任者講習を受けて資格を取得します。
また、キッチンカーを営業する管轄の保健所の営業許可も必要です。
保健所の申請は容易ではないため、本部のサポートが助けになるでしょう。
(4)キッチンカーの外装や設備の準備
移動販売を開始できるようにキッチンカーの外装や内装工事を行います。
必要な道具なども揃える必要があります。
キッチンカーの外装や設備に関してはフランチャイズ本部との契約で制限があるようなケースもあるため、あらかじめ確認しておきましょう。
(5)研修
本部の実施する研修に参加し、実技や運営方法などについて学びます。
キッチンカーは基本的に1人もしくは数人の少ない人数のスタッフで対応しなければならないため、研修で技術やノウハウをしっかりと習得するようにしましょう。
(6)開業
研修を終えて出店場所を確保すれば、開業です。
移動販売で必要な許可と条件について
移動販売を開業するにあたり、営業許可などが必要になります。
そして、キッチンカーで営業許可を得るには一定の条件を満たしていなければなりません。
移動販売で必要になる許可と条件についてみていきましょう。
(1)許可と資格
移動販売で必要になる許可と資格は、次の通りです。
①食品衛生責任者
飲食店や販売店では、食品衛生責任者を必ず1名以上置くことが法律で定められています。
移動販売の場合も食品衛生責任者が必要になるため、食品衛生責任者の資格を取得しなければなりません。
食品衛生責任者の資格は、食品衛生責任者養成講習会を受講することで取得可能です。
②保健所の営業許可
移動販売で営業をするには、営業する管轄の保健所に営業許可を申請しなければなりません。
車内で調理・加工する場合には、「食品営業自動車」の許可が必要です。
以前までは販売するメニューによって営業許可の種類が分類されていましたが、2021年6月の改正食品衛生法の施行によって営業許可が一本化されています。
また、車内で販売する場合には「食品移動自動車」の営業届出が必要になります。
(3)条件
キッチンカーの営業許可を取得するには、一定の条件を満たしていなければなりません。
営業許可の取得に必要となるキッチンカーの条件は、以下の通りです。
- トラックタイプ以外の車両の場合、運転的とキッチンが明確に区切られていなければならない
- 給水タンクと排水タンクの規定量確保(用途や自治体ごとに規定が異なります)
- 保健所ごとに規定されたシンクの数とサイズ、蛇口の種類
- 収納ケースや棚は虫が入らないくらいしっかりと扉が閉まらなければならない
- 手洗い石鹸や消毒など衛生面を確保する
- 換気扇の設置
- 提供する商品の仕込み場所の確保
フランチャイズで移動販売を開業するメリット
フランチャイズで移動販売を開業することには、どのようなメリットがあるのでしょうか?
(1)メニューやレシピが準備されている
キッチンカーを開業するには、まずメニューが必要です。
メニューの考案は美味しさだけではなく、コストや流行なども考えながら行わなければなりません。
そのため、頭を悩ませる方も多いでしょう。
フランチャイズならメニューやレシピが準備されているため、メニューやレシピ考案の時間や手間を短縮できます。
また、フランチャイズの本部によってはメニュー数を多く準備しているケースもあり、出店場所の需要に応じたメニューを選ぶことも可能です。
(2)出店場所の確保
移動販売では出店場所の確保が非常に重要です。
出店場所によって売上が左右される可能性は高いものの、なかなか自力のみで出店場所を確保することは容易ではありません。
フランチャイズでは、企業等と専属契約をしているところもあるため、出店場所の確保をサポートしてもらえます。
(3)本部からの手厚いサポート
フランチャイズでは、開業・運営のために本部からさまざまなサポートを受けられます。
開業に向けたキチンカーの外装や内装のアドバイスや、道具や調理器具の提供などを行なってもらえることがあります。
とくにフランチャイズでは、集客のサポートが魅力的だといえます。
ホームページに加盟店として紹介してもらえることや、既存のブランド力を活かすことができます。
また、仕入れの送料を無料にしてもらえるようなフランチャイズもあり、軌道に乗るまでのコストを削減できるケースもあります。
自力で全てを準備して一から開業する手間を大幅に軽減しつつ、売上確保も期待できることがフランチャイズの大きなメリットだといえます。
フランチャイズで移動販売を開業するデメリット
フランチャイズで移動販売を開業することは、メリットだけではなくデメリットもあります。
デメリットについても知っておきましょう。
(1)自由度が低い
フランチャイズでは、メニューや設備などに関してある程度の制約があることが多いです。
例えば、キッチンカーの外装を自分らしい個性的なデザインにしたいと考えても、本部が指定するデザインにしなければならないことがあります。
また、最初から調理機器が準備されており、自分が使いやすい機器を使えない可能性もあるでしょう。
オリジナリティも出していきたいという場合は、自由度の高いフランチャイズ本部を選ぶようにしましょう。
(2)本部への支払いがある
フランチャイズに加入すれば、加盟費などの初期費用を本部へ支払う必要があります。
そして、ロイヤリティなど毎月発生する支払いが生じるケースもあるでしょう。
こうした費用をデメリットだと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、個人で開業する方が費用がかかるケースも珍しくありません。
本部へ支払う費用をできるだけ抑えたいという場合には、必要な初期費用やロイヤリティについて確認してから契約するようにしましょう。
一移動販売は他業種と比較すると、ロイヤリティが発生しない本部が多い傾向にあります。
移動販売の問題点と失敗を避けるコツ
移動販売の運営にあたり、あらかじめ問題点を知っておけば失敗を避ける対策を取ることができます。
移動販売の問題点と、失敗を避けるためのコツを紹介します。
(1)メニューが他店と被る
スペースが広く集客が見込める場所では、他の店も出店するでしょう。
他店の出店数が多いほどメニューが被ってしまう可能性は高まります。
また、オフィス街ならば飲食店の店舗前でテイクアウト用の商品を販売しているようなケースもあり、客足が流れてしまうことも考えられます。
こうした環境では、他店との差別化措置をとることが大切です。
オリジナルメニューの考案やセットメニュー販売など、他に客足が流れてしまわないように対処しましょう。
(2)雨の日対策
移動販売は基本的に外で営業するため、雨の日は客足が鈍る傾向にあります。
そのため、雨の日対策が必要です。
雨の日限定の割引サービスを用意し、SNSやアプリなどで配信するなど対策を取りましょう。
(3)客単価
移動販売で販売されている商品の価格は、店舗等で購入する価格よりも安い傾向にあります。
小売店やレストランなど店舗を構えるよりも、仕入から販売までにコストがかかっていないため、価格を抑えられるというメリットがあります。
しかし、経営維持のためには収益を上げる必要があるため、最低限必要な販売数を上回るように営業しなければなりません。
そのためには、客単価をどのように上げるのか経営戦略が必要になります。
(4)キッチンカーの費用
移動販売の開業でもっとも費用がかかりやすいものは、キッチンカーです。
外装や内装にこだわるほど費用は高額になります。
また、早く開業したいという気持ちから本部の勧められるままキッチンカーへ高額な費用をかけてしまうようなケースもあるでしょう。
キッチンカーの値段については時間をかけた熟慮することが大切です。
(5)出店場所や多店舗化について
移動販売では集客多い場所が売上につながりやすいため、イベントでの出店を狙う方も多いでしょう。
しかし、イベントは土日祝のみの開催になるため、イベントでの出店だけでは思うように稼げない可能性があります。
そのため、平日もオフィス街や大学でお弁当販売をするなど、出店場所についての戦略が必要です。
また、移動販売では経営が上手くいったとしても、レストランや居酒屋のように多店舗経営化しにくいという点も問題点といえるでしょう。
(6)保険加入
移動販売もレストランなどの飲食店と同様に、食べ物を扱うお店なので食中毒などの被害が起きる可能性はゼロではありません。
また、車の看板などの設備が突然壊れて顧客がケガをするようなケースもあります。
このような想定外のトラブルに備え、生産物賠償責任保険や施設所有者賠償責任保険へ加入することも検討しておきましょう。
まとめ
ここまで、フランチャイズと移動販売について考察してきました。
移動販売は店舗を構えるよりも容易に見られがちですが、個人で開業するには許可なども含めて多くの準備が必要です。
フランチャイズで開業すれば許可や運営場所の確保、メニュー考案など、開業から運営まで本部から手厚いサポートを受けることができます。
フランチャイズの力を活かし、移動販売業成功の可能性を高めましょう。