フランチャイズのグループホームの開業手順・認知症ケア施設の需要は?
日本社会は、慢性的な高齢化社会となってきています。
一方で介護サービスは、なかなか供給が追いつけていない現状もあります。
このような要因で介護業界には参入余地があり、グループホームも盛り上がってきています。
またこのグループホームなどの介護業が求められる中、グループホーム開業を目指す人も増加傾向です。
一方でグループホームにおいては、指定事業者申請段取もあるなど、開業の時点で容易でない業種です。
ですがフランチャイズ形式での参入によって、指定事業者申請段取にアドバイスがあるなど、開業と運営を進めやすくなる方法もあります。
今回はフランチャイズとグループホームについて、フランチャイズで開業するメリットや、グループホームの難点と失敗を避けるコツなどに触れながら解説します。
目次
認知症ケア施設の需要
厚生労働省の調査によると、65歳以上の人口が3,450万人程度になり、総人口における27%を占めるといわれています。(2017年時点)
そしてこの人口割合における、18%ほどが要介護認定を受けています。
つまり、5人に1人程度が要介護認定対象になります。
グループホームについて、2001年では定員数が12,500名ほどであったものが、2014年では184,600名ほどになった数値情報もあります。
これほど伸びた要因として需要の大きさはもちろん、経営者の側面から運営しやすい傾向の面もあります。
また高品質を確保できれば、介護報酬以外にも料金徴収が可能です。
フランチャイズのグループホームの年収目安
フランチャイズのグループホーム経営の年収は、平均的に500数十万円ともいわれます。
そして自分自身が介護職員も兼務して、人件費を節約すると600万円以上を目指すことも可能です。
また2施設目を開業しうまく運営できると、800万円以上も視野に入ってきます。
高収入を目指すためには、以下のような点を心がけるとよいでしょう。
- 利用者が行きやすく、治安もよい場所を選ぶ
- 事業者指定段取について期日に間に合うよう、ゆとりをもって取り組み始める
- 事業説明をしやすい資料を準備している本部を選択する
- トラブル対応策を考えておく
- 抜き打ち監査に備え、日ごろから複数名で基準などを確認しておく
- 従業員に、力量以上の業務を課さない
- 介護業務と関係する法律について勉強する など
初期費用とランニングコスト項目
(1)初期費用
初期費用のいち目安として、2棟作りの営業利益で月45万円を目指すためには、400万円程度要する数値情報もあります。
そして介護ビジネスの初期費用として、日本政策金融公庫などからの融資もあります。
創業資金総額に占める自己資金の割合は、平均で3割程度といわれることもあります。
また4棟以上を目指すと800万円や、1,000万円から1,500万円以上の時もあります。
【初期費用内訳】
- 加盟費
- 保証金
- 研修費
- 法人取得費
- 土地取得費
- 物件取得費
- リフォーム費
- 初期道具調達費 など
(2)ランニングコスト項目
- 人件費
- 備品消耗品調達費
- 通信費
- 光熱費
- 介護事業者保険料 など
ロイヤリティが、毎月固定で10万円かかるところもあります。
グループホームの設置基準
グループホーム設置には、次のような基準があります。
(1)人員配置基準
①管理者
介護サービス提供に必要な経験や知識を有する、常勤1名。
②サービス管理責任者
利用者数を、30で割り算した以上の人数。
例えば利用者数が30名以下で1名、31から60人以下で2名。
③世話人
利用者数を、6で割り算した以上の数。
④生活支援員
障害程度区分3の利用者を9で割り算した数など、各障害程度区分利用者を9や6と4、そして2.5で割り算した数の合計数以上。
(2)設備基準
①設置場所
- 利用者の家族や地域住民が容易に立ち寄れる地域に設置する旨
- 病院の敷地外にある旨
②最低定員
- ホーム全体で4人以上
- 共同生活住居1場所当たりについては、2人以上10人以下
③居室
- 1居室当たりの定員は1名、一方で特別性が認められるときには2名
- 居室1か所当たりについて面積は収納箇所を除いて、7.43平方メートル以上
④交流設備
居室から近いところに、食事や会話などをできる設備や部屋を設ける旨
⑤生活必需設備
10名を上限として、次のような生活必需設備を設ける旨
- キッチン
- トイレ
- 洗面所
- 浴室
上記以外にも、個別支援計画書の作成や従業員に研修を実施する旨など、運営そのものについても留意点があります。
設置基準について詳しく知りたい方は、以下を参考にしてください。
フランチャイズによるグループホームの開業手順
(1)問い合わせ
まず加盟希望があったり、詳しい話を聞いてみたりしたい本部へ問い合わせをします。
(2)説明会参加
説明会参加にて、加盟プロセスや開業までの手順などを理解します。
(3)面談
開業希望時期や、ホーム運営方針などについて話し合います。本部の方より、加盟と開業プランを提案するところもあります。
(4)見学
希望があれば、実際の加盟事業所を見学できるところもあります。実際の介護風景や業務を自分の眼で確認できると、わかりやすいです。
(5)加盟と契約
開業時期や開業希望エリアなどに合意すると、加盟となります。正式な加盟と契約段取は、慎重に進めたいものです。
(6)物件段取
場所や建物などを確保します。居抜き物件があると、初期費用を抑えられることもあります。
(7)道具搬入
グループホーム業に必要な、ベッドやテーブルなどの道具を搬入します。
(8)従業員段取
介護業務をこなせるスタッフの確保段取りをします。スタッフ確保はスムーズに進みにくい傾向もあるので、不明点は本部に相談できたいものです。
(9)研修
介護の知識やグループホームの巡回など、グループホーム業に必要な基礎を学びます。
(10)開業
(1)~(9)の段階を経て開業し、グループホーム業務開始となります。
※上記段取のどこかで、法人格取得や指定事業者申請の段取もあります。
事業者指定段取
事業者指定段取のために次のような書類をそろえ、役所や市町村役場の担当部署へ提出します。
(1)申請書など
- 指定申請書
- 認知症対応型グループホーム事業所の指定にかかる、記載事項
- 従業員の勤務体制と勤務形態一覧表
(2)資格証や経歴書
- 資格が必要な職種についての資格証コピー
- 代表者と管理者、そして介護支援専門員の経歴書
- 代表者と管理者、そして介護支援専門員の研修終了証コピーと資格証コピー
(3)組織や建物そのものに関するもの
- 組織体制図
- 法人の登記事項証明書
- グループホーム建物の平面図
- グループホーム建物外観と内部がわかるカラー写真
(4)運営に関するもの
- 運営規定
- 想定トラブルに対する措置概要
(5)医療機関関係
- 協力医療機関との契約書
- 協力医療機関との、連携体制図と概要
(6)その他
- 法人代表者誓約書
- 介護支援専門員一覧
- 建物そのものに関する法律との関係書類
- 介護給付費算定のための体制状況一覧表
- 加算にかかる各種届出書
- グループホーム開始届出(老人居宅生活支援事業開始届)
そして従業員全員と雇用契約を結び、雇用契約書をしっかりと保存しておく旨などの留意点もあります。
フランチャイズでグループホームを開業するメリット
フランチャイズのグループホーム参入には、次のようなメリットもあります。
(1)各種ツール提供
グループホームとして集客の営業活動をする際はもちろん、随時自社について説明する資料があると役立ちます。
一方でわかりやすくて見易い資料作りは、手間暇がかかり容易ではありません。
そして特に開業当初はスタッフ準備などに、多く時間を割きたい傾向もあります。
ですがフランチャイズでは、本部が見易い資料やEラーニング教材などを準備しているところもあります。
(2)相談員が全国に在住
ビジネス一般に集客においては、口コミによる紹介は非常に大きいです。
一方でこの口コミによる紹介は、そう容易には実現できにくい傾向もあります。
ですがフランチャイズでは、本部の相談員が全国の拠点に常駐しているところもあります。
この相談員は、認知症グループホームに関するプロともいえます。
よってグループホームを探している人に相談員が加盟者を紹介し、口コミによる集客のような形にもなります。
(3)介護専門でなくても貢献が可能
フランチャイズグループホームでは、もちろん元々介護事業経験者の個人や団体もあります。
一方で、異業種からの貢献もあります。
つまりグループホーム運営には介護そのものだけでなく、さまざまな能力も必要です。
例えば不動産業や、調剤薬局などからのビジネスとして参入もあります。
自社の資金や人材についてゆとりがあるケースでは、新規ビジネス獲得のチャンスといえます。
(4)保険請求代行
介護事業なので、介護保険との関わりや保険請求業務も大切です。
一方で保険請求業務は、慣れないとスムーズに要領よくは進められない時もあります。
加盟者自身はもちろん、できればスタッフも慣れるまでは、介護業務そのものに集中できたいものです。
フランチャイズでは、本部が保険請求代行をするところもあり、手間が省けます。
(5)将来的には幅広いビジネスの可能性
本部がグループホームだけでなく訪問介護など、介護や福祉事業を幅広く考えていたり、展開していたりするところもあります。
よって加盟者の意思と取り組み次第では、多方向にビジネスを広げられる可能性もあります。
(6)電話代行業務
介護現場は、とにかく忙しい傾向にあります。このような状況で、電話対応業務ももちろんあります。
一方で何かの営業電話など、あまり介護業務と関係がなく、重要性や緊急性が高くなさそうな要件電話へ手間や時間を割くともったいないです。
フランチャイズでは本部による電話代行サービスもあり、便利です。
(7)指定許可申請支援
指定許可申請は開業と業務開始のために、非常に重要です。
一方でまず20種類ほどの書類を集めたり、作成したりするだけで手間と時間がかかります。
そして誤字脱字確認はもちろん、内容の整合性確認や、必要な時には修正もあります。
フランチャイズではこの許可申請にも本部のサポートがあり、スムーズに正確に進めやすくなります。
次の内容はグループホームだけでなく、介護業界一般についてもいえます。
(8)介護職員の給与が増加傾向
「処遇改善加算」のシステムによって、介護職員の給与は増加傾向もあります。
よってスタッフを、前向きに確保できやすくなってきています。
処遇改善加算:介護サービスに勤務する、介護職員の賃金を上げることを目的とした制度のこと。
フランチャイズでグループホームを開業するデメリット
フランチャイズのグループホーム参入には、次のようなデメリットもあります。
(1)後々の方針が合わなくなる
本部は後々の展望として、グループホームとは別の介護系ビジネスを考えているところもあります。
一方でビジネスの需要は、エリアによって多少違いがあることもあり、すべての加盟者にとって好都合とは限りません。
よって自社にとってはあまり利益にはつながらない可能性の懸念もあります。
(2)業種選択
フランチャイズビジネスで、介護事業に臨みたい方針は定まっているとします。
一方で介護事業と一言でいっても、介護業種も多くあります。
1度加盟すると、なかなか辞退や考え直しは認められません。
よって時間がかかるでしょうが、本当にグループホームに向くのか否か慎重な熟慮が必要です。
グループホームの難点と失敗を避けるコツ
(1)抜き打ち監査
介護業界には「要するに国からお金をもらえるから」のような、安易な気持ちで参入し運営状況がずさんな事業所もあります。
このような運営を防ぐために、管轄行政の障害福祉課などが抜き打ちで監査を行うことがあります。
そして基準が満ちていなかったり、違反が発覚したりすると罰則が課せられます。
またルール違反の度が過ぎると、払戻金の支払いや指定取り消しの処分もあります。
よって抜き打ち検査に備え、基準などに対し複数名で日ごろから、二重三重に確認しておきたいものです。
(2)法律の勉強
介護事業は、介護保険はもちろん複数の法律と関係する傾向もあります。
そして、法律は数年おきに改正が行われるものもあります。
一方で改正に気付かず、知らず知らずに法を満たせていない懸念もあります。
故意ではなかったとはいえ「知りませんでした、すみませんでした」では、済まされません。
忙しいながらも、法改正には敏感になっておく必要もあります。
(3)スタッフ教育
グループホーム業は、利用者相手の対人ビジネスです。
そして機械的な対応でなく、利用者のことを理解できた対応が求められます。
このためには、心を通わせられるコミュニケーションも必要です。
一方で、この心を通わせられるコミュニケーション能力養成は容易ではありません。
よって相談員や世話人によって、自身含めスタッフにもレクチャーを施したいものです。
(4)スタッフケア
介護業も、心に葛藤やフラストレーションは生じます。
この葛藤やフラストレーションが、テレビニュースに取りざたされるような、悲惨な事件や事故などにつながる可能性もあります。
よって随時スタッフの悩みなどに耳を傾け、なるべく葛藤やフラストレーションを軽減できたいものです。
そして時には、各種資格取得を勧めることもポイントといえます。
(5)指定申請書提出期間
指定申請書についての懸念点は、内容はもちろん期間もあります。
自治体によっては審査期限を設けていて、1日でも遅れると業務開始が1か月遅くなってしまう事態もあります。
そして既にスタッフとの雇用契約を結び、給与支払いの必要性が生じていれば、経済的マイナスが起きる可能性もあります。
本部も注意を促すでしょうが、加盟希望者自身も重々認識が大切です。
(6)市街化調整区域
市街化調整区域では、原則グループホームの建設は認められていません。
まだ土地代の支払いをしていない場合、場所探しからのやり直しで済むケースもあるので、確認しましょう。
一方で、特例によって可能になることもあります。
お金を支払い、正式に土地を取得してしまってからは、なかなかやり直しが出来ない傾向があります。
このような法的専門知識については、複数名で幾重にもわたるチェックをしても、誰も気付かないこともあります。
よって本部はもちろん、できれば詳しい士業家にも相談できておきたいものです。
市街化調整区域:都市計画法を鑑みて指定となる、都市計画区域の区分区域の1つのこと。
(7)スタッフに力量以上の業務を課さない
特に介護業界未経験で入るスタッフのケースでは、細かいコツなどを知らない傾向もあります。
一方で新規利用者が続々と入所してきた時に、機械的に人数合わせ感覚で人員を配置する方法は避けたいものです。
利用者の懸念点に目がしっかりと行き届かずに、防げたはずのケガや事故につながってしまいます。
よって人員配置や業務割り当てについては、管理職含め複数名で入念に話し合うことも大切です。
(8)処遇改善加算対応
介護職業の人が皆、処遇改善手当を受けられているとは限りません。
事業所が支給要件を満たしていなかったり、届出を市区町村へ提出していなかったりするためです。
やはり能力の高い職員を確保するためには、処遇改善加算は大切です。
よって本部とも相談しながら、処遇改善加算に当てはまるための対応も大切です。
まとめ
ここまで、フランチャイズとグループホームについて考察してきました。
押さえておきたい点は、保険請求代行があるところもあるなど、フランチャイズで開業するメリットです。
そして抜き打ち監査に常日頃から備える必要など、グループホームの難点と失敗を避けるコツもポイントといえます。
グループホームは、今後も必要とされ続けるでしょう。
自身が法律の勉強や介護技術を鍛錬し、スタッフケアや教育にも注力しながら、自身の夢実現と社会貢献双方を両立なさってください。