フランチャイズのパン屋開店の許可や開業資金は?失敗を避けるコツも解説
日本は人口減少傾向にもかかわらず、パンには底堅い需要と人気があります。
手軽においしく食せる利点や、男女年齢問わず好まれる背景もあります。
このパン需要の状況で、パン屋独立開業を目指す人も増えてきています。
一方でパン屋の運営は、材料選定そのものの時点で一苦労するなど、複数の難点がある業種です。
ですがフランチャイズ会社の力を借りることによって、高品質なパンを作りやすいなど、収益を確保できやすい方法もあります。
今回はフランチャイズとパン屋について、パン屋開店のための許可や、フランチャイズで開店するメリットなどに触れながら解説します。
目次
フランチャイズのパン屋の年収
フランチャイズのパン屋の年収は、標準的に450~500万円程度といわれます。
そして高価格なパンをうまく販売できたり、ネット販売ツールもうまく使いこなせたりすると、600万円以上を目指すことも可能です。
また2店舗目以降を実現できて、好調な売上状況を維持できると、1,000万円の可能性もあります。
開業初期で運営状況が軌道に乗るまでは、300~400万円程度もあります。
高収入を目指すためには、以下のような点を心がけるとよいでしょう。
- 自分が販売に自信のある種類のパンを取り扱っている、本部を選択する
- 特定の種類のパンに特化した本部を選択し、製造と販売の要領に早く慣れる
- 特に夏場の集客方法を考える
- 初期経費も考慮しながら、アクセスしやすい立地場所を選ぶ
- 認知度アップに有効な、キャンペーンも考える本部を選ぶ
- ゆくゆく自分のオリジナルアイディアが承認されそうか否か、本部に加盟前に相談しておく
初期費用とロイヤリティなどの費用
(1)初期費用
初期費用として一般的に、400万円程度は要する傾向にあります。
そして立地で一等地を選んだり、道具を新品調達にしたりすると、1,000万円以上要する時もあります。
一方で自宅開業や居抜き物件、そして移動販売形式にすれば、100~200万円程度の可能性もあります。
また具体的な自己準備必要金は、フランチャイズ本部と話し合いとなります。
初期費用を、融資で調達可能な時もあります。
【初期費用内訳】
- 加盟費
- 保証費
- 研修費
- 初期物件費
- 物件工事費
- 設備道具費
- 初期材料費 など
加盟金が、ゼロ円のところもあります。そして加盟者条件が、法人となっている本部もあります。
(2)ロイヤリティ
変動制:1~3%程となっています。
定額制:1~10万円となっています。
ロイヤリティは変動制でも、月額上限で5万円や7万円となっているケースもあります。
またロイヤリティがゼロ円や、ロイヤリティに加え、広告分担金1%がかかるところもあります。
パン業界の業界特徴
パン業界には、次のような業界特徴もあります。
(1)健康志向
食品業界では健康志向者への対応が必要と耳にしますが、パン業界にも同様のことがいえます。
そしてパン業界では、レーズンペーストやプルーンを材料として使う新たな傾向も芽生えてきています。
レーズンペーストやプルーンには、砂糖や油に代わる甘みや油分用途もあります。
(2)ノンホワイトブレッド
今パン業界では、ノンホワイトブレッドも注目されてきています。
ノンホワイトブレッドは次のような原料からできていて、豊富な食物繊維を含み健康的と評されています。
- ライ麦
- 米粉
- 玄米
- 雑穀
- 発芽玄米
- コーンなど
有名コンビニエンスストアと有名フィットネスクラブが、コラボして健康パンを考案したこともある注目ぶりです。
(3)市場
パン業界としては、ゆるやかながらも右肩上がり状況にあります。
単価が上がったにもかかわらず、高品質を追求したことによって、中高年層や富裕層からの需要が伸びた背景もあります。
(4)材料値段高騰懸念
今小麦やバターなどの、パン材料値段が上昇傾向にあります。
高品質高価格のパン需要があるとはいえ、従来の一般的な価格のパンについても、売れるよう戦略の考案は重要です。
パンに関する知識
パンには、次のような知識があります。
(1)ふっくらの理由
美味しいパンはふっくらとしていて、きめ細かさがあります。
このふっくらとした感じときめ細かさには、しっかりとしたグルテン構造というものが必要になります。
そしてこのグルテン構造には、小麦の中にあるたんぱく質のグルテニンとグリアジンの成分が必要です。
このグルテニンとグリアジンが水を吸収して結びつくと、しっかりとしたグルテン構造ができます。
このメカニズムで、パンのおいしさができるわけです。
(2)パンの栄養素
パンには、次のような栄養素があります。
- 炭水化物:体内で糖に変わり、エネルギー源となります
- たんぱく質:体内でエネルギー源となり、筋肉や臓器の製造や維持にも必要となります
- ビタミンB1B2:血液や神経の健康維持につながり、疲労や体力低下予防にもつながります
- 鉄:ヘモグロビンを作り、体中に酸素を運ぶために必要不可欠です
- カルシウム:主に骨や歯を作る成分で、血液凝固作用にもつながります
(3)パン酵母
パン生地を発酵させるために、酵母は必要不可欠です。
酵母が生地の中で炭酸ガスを発生させて、生地を膨らませふんわりとさせます。
酵母は一般的にイーストとも呼ばれ、原材料表示にイーストと表示されていることもあります。
(4)食パンの材料と製造過程
①材料
次のような材料を使います。
- 小麦粉
- パン酵母
- 砂糖をはじめとした糖分
- 油脂や油脂の代替となるもの
- 牛乳や乳製品
- 卵
- イーストフード
- ビタミンC
- 乳化剤 など
②製造過程
次のような製造過程となります。
- 中種作りと発酵
- こねて分割する
- 型に入れる
- より発酵させる
- 焼く
フランチャイズによるパン屋開店の手順
(1)問合せ
まずメールや電話で問い合わせをして、説明会への出席などで詳細を聞きます。
そして、フランチャイズビジネス方針や加盟方法などを理解します。
(2)面談
資金面や目指すパン屋運営方針など、加盟に向けて面談をします。
(3)物件市場の調査
開業エリアや場所について、加盟希望者と本部で市場調査をします。
開業エリアや場所は、売上に大きく影響する傾向にあります。
(4)事業計画の段取り
目標売上や経費などについて、話し合います。事業計画は非常に重要なので、時間をかけて複数パターンでの熟慮が重要です。
(5)最終審査
(1)~(4)の話し合いを鑑みて、加盟についての最終審査があります。
(6)契約締結
最終審査を通過して、契約締結とフランチャイズ加盟となります。
(7)店舗の段取り
物件を取得し、内装外装工事をします。そしてパン製造機器などを設置し、開店へ向けて大詰め段階となります。
(8)研修
パンに関する知識はもちろん、製造や販売に関する20日程度の研修をするところがあります。
そして1~3ヶ月程度の、店舗実習をするところもあります。
(9)開店
(1)~(8)のプロセスを経て、開店と業務開始となります。
パン屋開店のための許可や資格
パン屋開店のための許可や資格は、次の内容となります。
(1)食品衛生責任者
食品を取り扱うにあたって、各々の店舗に1人配置が必須の資格です。
取得にはまず、都道府県開催の講習を受講します。
そして、保健所で申請をします。
一般的に店舗完成の10日ほど前までに、段取りをします。
(2)飲食店営業許可
店内で飲食もしたり、サンドイッチを製造販売したりするケースでは、保健所から飲食店営業許可の承認を得る必要もあります。
そして申請には、許可申請書や資格証明書などの書類準備が必要です。
また費用として、16,000~19,000円程度要します。
(3)菓子製造業許可
あんパンやジャムパンなどの菓子パンも取り扱うケースでは、菓子製造業許可も考慮の必要があります。
保健所に、菓子製造業許可の申請をします。
(4)食料品等販売業の許可
他業者が製造したサンドイッチなどを自分のお店で販売するには、食料品等販売業の許可取得必要の可能性もあります。
事前の考慮や確認が大切です。
(5)防火関係の段取り
店内で火を用いるケースでは、防火管理者の選任や防火対象物使用開始届出書の段取りも考慮の必要があります。
フランチャイズでパン屋を開店するメリット
フランチャイズのパン屋では、次のようなメリットもあります
(1)小麦粉サポート
パン作りにおいて、小麦粉は材料の肝といえます。
一方で数多くある種類の小麦粉から、パン作りに適する小麦粉を選定することは容易ではありません。
ですがフランチャイズでは、高品質の小麦粉情報提供や、小麦粉そのものの入手サポートがあるところもあります。
(2)製法アドバイス
高品質の材料がそろうだけでは、パン作りには十分とはいえません。
水の量や小麦粉の配合割合など、美味しいパン作りのためには複雑な調合割合があります。
一方でフランチャイズでは、調合割合について独自カリキュラムを整備しているところもあります。
そしてホテルのベーカリー部門役職や製パンメーカーの役職経験者による、アドバイスがあるところもあり心強いです。
(3)ヨーロッパ流窯を入手
ヨーロッパの職人技に沿った、レンガやセメントによる石窯を再現できる本部があります。
遠赤外線の特殊な熱や保温効果により、こんがりとよりおいしいパンに仕上がります。
自力による窯研究のみでは、なかなか実現できにくいです。
(4)1ジャンルで勝負可能
パン屋というと、バラエティに富んだパンを準備する必要性を感じるかもしれません。
一方でフランチャイズのパンでは、例えば食パンなど特定のパンを製造販売するところもあります。
特定の製品のみ製造となると、本格的にパン製造経験はなくても、料理業経験の人にも参入しやすいといえます。そして、ワンマンオペレーションが可能な時もあります。
(5)小スペース開業も可能
小スペースのケースでは、パンの陳列スペースそのものは1坪に2段か3段の棚でおさまる時もあります。
よって小スペース開業も可能で、初期費用や月額固定費の節約にもつながります。
月額固定費の節約はもちろん大切で、初期費用低減は開店当初の運転資金確保にもつながります。
(6)カフェ型も可能
飲食スペースを作ることによって、カフェ型店舗が可能なところもあります。
ショッピングモール内などに出店すると、休憩をしたい顧客も取り込める可能性もあります。
そしてパンだけでなく、スープの提供が可能な本部もあります。
(7)海外パンの取り扱い
今は海外ブランドの、高級パンも人気です。
一方でこのような海外ブランドの高級パンを、自力でリーズナブルな価格にて、製造販売することは容易ではありません。
ですがフランチャイズでは、材料確保や製法のサポートがあり、日本にて自力で再現できやすいところもあります。
(8)リーズナブルな均一価格設定
独自の方法によって、複数種類のパンを100円程度のリーズナブル価格にて、均一価格設定にしているところもあります。
この価格システムは、集客のために大変魅力的です。
(9)メニュー開発
現存顧客の維持はもちろん、新規顧客獲得には新作メニュー考案も大切です。
一方で売れる新作メニュー考案は、容易ではありません。
発想力はもちろん、コストと時間もかかります。仮に考案できても、必要材料を個人ではなかなか確保できにくいこともあります。
ですがフランチャイズでは、本部がメニュー開発をするところもあります。
季節限定商品開発に、注力するところもあります。
よって、より売れやすいメニューを入手できやすいといえます。
パンの次元を超えて、もはやケーキや高級洋菓子のような、芸術品ともいえる商品を考えるところもあります。
(10)生地提供
本部で生地を製造及び冷凍保存し、加盟者へ配送するところもあります。
資金力はあってもパン作り技術に欠けるケースで、参入しやすいシステムといえます。
フランチャイズでパン屋を開店するデメリット
フランチャイズのパン屋開店には、次のようなデメリットもあります。
(1)材料調達方法指定
様々な事情により、本部指定の材料調達価格が上がるとします。
一方で自力にて、本部指定より安価な仕入先を見つけられるとします。
ですが自分なりの安価な仕入先を、本部に承認されないとなると不便点になります。
(2)販売方法の指定
仮に現状はワンマン運営による店頭販売で、売上面でもそれなりにうまくいっているとします。
一方で本部都合により、インターネット販売も始めるよう指示されるとします。
インターネット販売に慣れていないと、販売方法を新たに勉強したり、追加経費の可能性が生じたりの事態があります。
このように自分の考えと反して、販売方法が変わると不都合になります。
(3)営業日や営業時間で溝
基本的に、商いは効率的に進めたいものです。
一方でいざ開店してみると、特定の曜日や特定の時間はあまり客足が多くないとします。
そしてこの曜日や時間帯に営業しなくても、それなりの収益を確保できるとします。
ですが本部により、開店後の曜日や時間帯選択を承認されないと、必要以上の光熱費などがかかることになります。
パン屋の難点と失敗を避けるコツ
(1)夏の集客
パンは通年で売れるイメージを、もっている人もいるでしょう。
一方で立地状況などにもよるでしょうが、実は夏や9月には売れにくい傾向もあります。やはり夏の間食にはパンよりも、アイスクリームやかき氷の方が好まれる背景もあります。
よって果物を材料としたサンドイッチを取り扱うなど、夏の集客のための措置も大切です。
(2)体力
焼き立てでふっくらのおいしいパンを提供するには、毎日の生地作りから仕込みをする店もあります。
このためには、毎日朝4時や5時に起きるパン職人も必要になります。
そして営業中はパン作りや接客など、立ち仕事も多いです。
このように体力的にハードで、より体調管理が必要な傾向もあります
(3)移動販売
顧客が来店するタイプの業種なので、立地条件は非常に重要です。
一方であちこちのスポットで時間帯別に、売れそうな場所を知っているとします。
このようなケースでは、移動販売を承認している本部を選択することで、効率的に進められることもあります。
(4)初期費用低減
本部によっては、とにかく店舗を目立たせたり、高品質を表現できる店内内装を求めたりするケースもあります。
一方で店舗外装や内装にこると、初期費用が膨らむ傾向もあります。
よってパン職人としての技量に自信がある時には、初期費用を低減できるよう、本部選びは慎重にしたいものです。
(5)運営方法
仮にパン職人として雇われで業務経験があり、パン製造と販売そのものに対しては要領を得ているとします。
一方で経営するには、チラシ作りや伝票管理など、パン製造と販売そのもの以外の業務も生じます。
よってなるべくパン製造と販売そのものに集中できるよう、自分が得意でない運営面について、サポートが充実している本部選びがポイントといえます。
そして自分自身でもメニュー考案含め、運営について勉強と訓練も大切です。
(6)トラブル
パン製造と販売では、食中毒や火災のリスクがゼロではありません。
一方で顧客や本部より、加盟者の過失はほぼないと認められる可能性もあります。
このようなケースで経済的対応などを早く済ませ、元の営業状況になるべく戻れるよう、借家人賠償責任補償や製造物賠償責任などの保険への加入がおすすめといえます。
(7)行列による近隣トラブル
繁盛してくると、店の前に行列ができて近所迷惑でクレームがくる可能性もあります。
よって予め挨拶をして、クレーム防止措置も大切です。
できれば店の近くに月極で駐車場を借りて、路上駐車回避策も取りたいものです。
まとめ
ここまで、フランチャイズとパン屋について考察してきました。
押さえておきたい点は、パン屋開店のための許可やフランチャイズで開店するメリットです。
そして、パン屋の難点と失敗を避けるコツもポイントといえます。
パンは国民食ともいえるほどおいしくて、需要は衰えないでしょう。
パン製造技術を磨き、本部と販売戦略も練り、地域で有名といわれるパン屋で繁盛なさってください。