ドラッグストア・薬局をフランチャイズ経営するメリットとデメリット
年々、店舗数が増え売り上げが順調に上昇している業界の一つが薬局・ドラッグストア業界です。
2018年には全国総売上高が7兆円を超す市場規模となり店舗数も2万店舗を超えています。
薬局・ドラッグストア業界躍進の要因の一つとして、特にドラッグストアにおいては、食品や日用雑貨を取り扱った点が非常に大きいでしょう。
薬局・ドラッグストアは、フランチャイズ企業に加盟しての経営も可能です。
では、実際に、薬局・ドラッグストアをフランチャイズで経営しようと考えた場合、どの程度の年収を得ることができるのでしょうか?
また、メリットやデメリットはどのようなものが挙げられるのでしょうか?
この記事では、薬局・ドラッグストアをフランチャイズ経営する場合のメリットやデメリット、また開業手順や開業費用といった点にスポットを当てて解説します。
目次
ドラッグストア・薬局業界の将来性
まずは、薬局・ドラッグストアを開業するにあたり、今後の薬局・ドラッグストアの将来性が気になるところです。
将来性がない業界に進出したとしても、今後の経営に期待が持てない可能性もあります。
経営において将来性の分析は非常に大切なポイントです。
ここからは、薬局・ドラッグストア業界全体の将来性といった点について解説します。
(1)インバウンド需要が追い風に
薬局・ドラッグストアにおける2015年から2017年の3年間での増収率を見てみると、約4%と順調に推移しています。
薬局・ドラッグストア業界が躍進している原因の一つがインバウンド需要です。
2014年に外国人旅行者における消費税免税制度が改正され外国人旅行者が安く日本製品を購入できるようになりました。
近年よく聞くワードの一つに“爆買い”があります。
外国人観光客が日本に旅行を目的として来日した際、日本の製品を大量に購入する現象を指しますが、免税制度が改正されたことが大きく影響しているのです。
薬局・ドラッグストア業界もインバウンド需要の影響を大きく受けており、高い増収率へとつながっています。
コロナ禍において現在はインバウンド需要の影響は小さくなったとはいえ、アフターコロナ後のさらなる成長に期待ができます。
(2)ライバルはコンビニ産業?
薬局・ドラッグストアは、医薬品だけではなく食品や日用雑貨を取り扱ったことが躍進の要因だと前述しました。
そのため、今後のライバルはコンビニ産業であるといわれています。
コンビニ業界の増収率は2.2%と薬局・ドラッグストア業界よりも若干成長性において鈍化している傾向がみられます。
しかし、プライベートブランドなどで価格競争に対抗する動きも見せており、さらなる競合が想定されるでしょう。
フランチャイズでの薬局・ドラッグストアの平均年収
薬局・ドラッグストアでの開業を考えた場合最も気になるのがどの程度の年収を得ることができるのかといった点です。
経営する薬局・ドラッグストアの売り上げ状況に大きく影響することは間違いないのですが、実際の経営者はどの程度の年収を得ているのでしょうか?
(1)状況次第では1,000万円を目指すことも可能
現在、薬局などに働いている薬剤師さんの平均年収は約500万円程度だといわれています。
例えば、薬剤師が独立して薬局やドラッグストアを経営しようと考える場合、薬剤師として勤務する年収を超えなければ意味がありません。
しかし、独立開業して経営状況が良ければ年収1,000万円も夢ではありません。
これは、調剤事業の利益率が高いことが挙げられます。
利益率が高いので、お客様を呼び込むことができると、高い収入が期待できるのです。
薬局の場合は、利益率の大きな調剤事業を柱にする。
ドラッグストアの場合は、食品や日用品を扱い集客するといった手法により売り上げをあげると、高年収が期待できます。
(2)複数経営で年収大幅アップも
また、複数店舗の経営を行うことで年収を大幅に上げることもできます。
1店舗の利益がそこまで大きくはなくても、複数店舗の経営で売り上げを挙げると年収は大幅にアップするでしょう。
せっかく経営するのならば複数経営も視野に入れて大幅年収アップを目指したいと、複数店舗経営に取り組むことも可能です。
初期費用・ロイヤリティなどの費用
薬局・ドラッグストアをフランチャイズで開業しようと考えた場合、必要な初期費用がどの程度かかるのか。
また、フランチャイズに加盟した場合、加盟店料やロイヤリティはどのくらいかかるのかといった点が気になるところです。
ここからは、薬局・ドラッグストアの開業にかかる初期費用やロイヤリティといった点について解説します。
(1)ドラッグストア開業に必要な初期費用は?
薬局やドラッグストアを開業する場合にかかる費用は、高額になってしまうケースが多いです。
店舗の取得から、調剤機器、薬品代、販売費といった費用が大きくかかります。
1,500万円~2,000万円程度の費用を見ておかなければいけません。
最初に高額な費用がかかるので、開業するには最初の壁が高いといえるでしょう。
しかし、フランチャイズに加盟しておくと本部から資金計画に対して融資先の紹介や物件の紹介を受けられる場合もあります。
フランチャイズを利用するかどうかの判断材料の一つです。
(2)ロイヤリティや加盟店料がかからないケースもあるの?
開業の面からフランチャイズがいいと思っていても、加盟する際には加盟店料やロイヤリティが発生することがあります。
加盟料は、フランチャイズへ加盟するときに支払う費用です。
ロイヤリティとはお店の看板や営業ノウハウを使用する料金となります。
しかし、薬局・ドラッグストアの加盟料やロイヤリティを調べてみると、加盟料やロイヤリティがかからないでフランチャイズを募集しているケースも見られます。
加盟するフランチャイズによって体系が異なりますので、加盟料やロイヤリティの面からもフランチャイズを比較検討しましょう。
フランチャイズによるドラッグストアの開業手順
次に薬局・ドラッグストアを開業する場合、開業するまでの手順について解説します。
それぞれの手順をステップごとに見てみましょう。
ステップ1 説明会参加や資料請求
まずは、加盟するフランチャイズをどこにするかを決めなければいけません。
フランチャイズ企業では説明会を開催している場合があります。
しかし、説明会の開催頻度はあまり多くはありませんので、タイミングを逃さないようにチェックは欠かさないようにしておきましょう。
また説明会などが開催されていない場合は、インターネットなどでフランチャイズ企業の情報を確認した後に直接連絡しましょう。
資料が送付されるか、担当者と会話もしくは面談といった機会を作ってくれます。
このような動きでフランチャイズの内容を確認することが可能です。
ステップ2 フランチャイズ加盟契約を締結
フランチャイズする企業を決めるとフランチャイズ契約を締結します。
前述しましたが、薬局やドラッグストアの開業に関する初期費用は高額なケースが考えられます。
フランチャイズ契約の際に、店舗物件の紹介や資金計画などについてもレクチャーしてくれる企業もあるので、しっかりと内容を確認しましょう。
ステップ3 店舗取得
フランチャイズ契約では、店舗選びから店舗契約を締結します。
あらかじめ、めぼしい物件を見つけておき、契約からあまり日をおかないようにしておくとスムーズに開業できます。
ステップ4 内装や届け出
開業ができるように内装や店舗の開業申請が必要です。
内装工事中に開業における申請を同時に行うと効率が良く早めの開業が可能です。
ステップ5 開業
いよいよ開業です。
開業後もフランチャイズ本部としっかり連携し、早めの黒字化を目指しましょう。
必要な資格や技術
薬局・ドラッグストアを実際に経営するにあたり必要な資格にはどのようなものがあるのでしょうか?
ここからは、薬局・ドラッグストアを経営するにあたり必要な資格について解説します。
(1)薬剤師の資格を持っているかどうかで条件が異なる
薬局・ドラッグストア経営にあたり、最も必要な資格は薬剤師の資格です。
薬局においては医師の処方する薬を調剤できるのは薬剤師ですので薬剤師は欠かせません。
またドラッグストアにおいても薬剤師が必要です。
ドラッグストアの販売している医薬品は、医師の処方箋がなくても購入できます。
しかし、これらの医薬品も薬剤師が情報提供しなければ販売できません。
もし開業しようとしているあなたが薬剤師の資格を持っていれば、オーナーと薬剤師の二役をこなすことで人件費の節約につながります。
しかし、薬剤師の資格を保有していなければ、薬剤師を雇用し経営しなければいけません。
薬局・ドラッグストアのエリア選定のポイント
開業する場所を選定するときに、どのような顧客層を対象にするかを考える必要があります。
薬局の場合は、病院の近くや病院と提携して開業すると患者さんが利用しますので安心です。
ドラッグストアは、住宅街が近くにあるような場所だと、医薬品だけではなく食品や日用雑貨の販売でも収益を挙げることができます。
ドラッグストアの場合は、医薬品の販売にこだわる必要はありません。
集客に関しては立地面が大きく左右しますので、顧客層を的確につかみ出店する必要があるでしょう。
フランチャイズで薬局・ドラッグストアを開業するメリット
実際に薬局やドラッグストアをフランチャイズとして経営する場合、独立して行う場合と比較してどのようなメリットがあるのでしょうか?
ここからは、フランチャイズにおけるメリットについて解説します。
(1)仕入れが安く抑えられる
最も大きなメリットとして挙げられるのが、仕入れを安く抑えられることです。
フランチャイズ本部がスケールメリットを生かして仕入れている医薬品などを、安く仕入れることができます。
販売価格も安く抑えることが可能で、多くの集客が見込めるでしょう。
(2)資金面のサポートも充実
前述しましたが、薬局やドラッグストアを開業する場合、多額の資金が必要になります。
しかし、フランチャイズに加盟することで金融機関の紹介や、今までフランチャイズ経営を行った店舗をモデルとしたシミュレーションを受けることができます。
自主独立の場合は、効率よく資金を投下する点において不利な面があるといえるでしょう。
資金面におけるサポートも大きなメリットです。
(3)社員(薬剤師)の採用もサポート
開業において欠かせないのが薬剤師の存在です。
また、複数の人員が必要な規模での開業を考えるならば、社員募集も行わなければならず、広告費などのコストが必要になるでしょう。
フランチャイズであれば、薬剤師や社員募集のサポートにおいても協力してくれます。
これらのサポートも大きなメリットです。
フランチャイズで薬局・ドラッグストアを経営するデメリット
フランチャイズに加盟することでたくさんのメリットを受けることができますが、逆にデメリットや問題点にも目を向けておかなければいけないでしょう。
ここからは、フランチャイズに加盟することで考えられるデメリットについて解説します。
(1)ロイヤリティなどコストがかかる
薬局・ドラッグストアのフランチャイズに関わらず、加盟料やロイヤリティといった点に注意が必要です。
しかし、フランチャイズの中には加盟店料やロイヤリティが不要なケースもあります。
フランチャイズに加盟する際には、複数のフランチャイズを比較検討してから加盟しましょう。
(2)フランチャイズ解約すると数年間ドラッグストアができないことも
フランチャイズの本部と関係性が悪くなってしまうと、解約することがあるかもしれません。
その場合、契約内容によっては解約して数年間はドラッグストアとしての経営ができないといった契約内容のケースがあります。
例えば、ほかのフランチャイズに魅力を感じて、フランチャイズを変えようと思ってもドラッグストアの経営自体ができなくなる契約となっている場合があるのです。
フランチャイズの加盟時には契約内容をしっかりと把握しておきましょう。
(3)販売が自由にできない
フランチャイズに加盟することで、本部の営業ノウハウが得られる一方独自の戦略が立てにくくなる場合があります。
フランチャイズは統一した営業形態で行うことが第一とされていますので、1店舗だけ独自の販売を行うことを嫌うのです。
基本的にフランチャイズの営業内容に基づいた経営が求められていますので、自由が利かない点がデメリットとして挙げられます。
まとめ
薬局やドラッグストアの成長率は堅調で今後も期待ができる業界です。
独立して薬局・ドラッグストアを経営しても先行きが明るい業界ともいえるでしょう。
自主開業する場合は初期費用が高額になりますが、フランチャイズに加盟することでさまざまなサポートを受けることもできます。
年収ベースで1,000万円を越えることも難しいことではなく、複数店舗の経営でさらなる年収増も可能です。
フランチャイズに加盟することによるメリットも多いのですが、一方で注意点もありますので、双方の分析や対策を行ったうえで早期の黒字化を目指して下さい。