フランチャイズ開業届の作成方法や記載事項などを解説
フランチャイズビジネス加盟を検討中・段取りを進行中という方には、開業届という言葉を聞いたことがある・知っているという方がいらっしゃいます。
開業直後というのは、夢実現の喜びで開業届に気が回らない・様々な業務でバタバタしていて手が回りださないといった場合が少なくありません。
しかしながらこの開業届というのは、節税策にもつながり得るといったメリットがあります。
それゆえ忙しい状況でも、なるべく忘れずの提出がおすすめといえます。
そこで今回はフランチャイズの開業届につきまして、提出するメリットという点にも触れながら解説します。
開業届そのものと簡単な留意点
(1)開業届
開業届とは、個人事業を開業した旨を税務署に申告するための書類のことです。
正式名称は「個人事業の開廃業届出書」となります。
個人事業を始めると例えば、事業から生じる利益に対しては所得税が課されます。
そして事業規模が大きい場合は、個人事業税も課税されます。
また消費税の課税事業者に該当する場合は、消費税の申告書を提出・納税する必要もあります。
所得税・消費税は国税として税務署へ・個人事業税は地方税として各都道府県税事務所に納める形となります。
これらを事情として、各々の税務担当庁に対して個人事業主として開業する旨の報告をする必要があります。
開業届がこの報告ということです。開業届を提出すると、個人事業主の税金に関するお知らせが税務署から届きます。
(2)留意点
①職業欄の記入
開業届の記入は特に難しい点はありませんが、職業欄についてはちょっと注意が必要です。
理由として、個人事業税がかかってくることがあります。
この個人事業税は、事業所得が290万円を超えると業種(地方税法で70種類が該当)によってはかかります。
この個人事業税の税率は、次に示す税率となっています。
- 第一種事業:5%
- 第ニ種事業:4%
- 第三種事業:5%
- (あん摩等医業に類する事業及び装蹄師業):3%
上記法定業種以外の業種(プログラマー・SE・ライター・アフィリエーターなど)が昨今増えていますが、これらの事業者が個人事業税の対象になるのか否かは各都道府県の判断となります。
事業所得が290万円を超えた段階でお尋ねがあります。
税率をなるべく低くしたいがために、故意に異なる業種を選択するといった考えは控えた方がよいです。
たぶん大丈夫では?と勝手に思い込み、何らかのきっかけで税務署の方が調べた際に異なる業種だと不都合が生じる可能性があります。
②失業手当と開業届
開業するつもりで会社を辞めるとします。
この一方で辞める前は会社で失業保険の適用を受けていたなら(一般的に適用を受けます)、失業中は失業手当を受ける権利があります。
この状況で仮にすぐ開業届を出したとして、「届出しただけでまだ事業の方では1円もお金入ってきていないし」と勝手に思い込み失業保険を受給し続けます。
これは、失業保険の不正受給と解釈される可能性がありますので要注意です。
失業手当というのは、求職中でまだ仕事が見つからない人が受給できる手当です。
開業届を提出したということは、この状況に当たらないという考えが背景にあります。
③再就職手当
上記で不正受給の事情は理解できても、せっかく納めた保険料に対して掛け捨てのような感じがして納得しがたいのには理解ができます。
このような場合には再就職手当というシステムがありますので、しっかりと調査確認・手続きが必要です。
提出届の記載事項
(1)提出先の税務署
提出先の税務署は納税地を所轄する税務署になります。
納税地は原則住民票がある場所ですが、現住所・自宅とは別の事務所や事業所というのも可能です。
(2)提出日
実際に提出する日付です。
(3)納税地
提出先の税務署で記載した通り、納税地を住所地・居所地・事業所などから選択してその住所を記載します。
(4)氏名
氏名の欄には印鑑を押します。印鑑は個人の印鑑・屋号印どちらでも可能です。
(5)個人番号
マイナンバーを記載します。
(6)屋号欄
屋号が無ければ空欄でも可能です(店舗営業の場合屋号がある方が望ましいです)。
(7)届け出
新規開業の場合は開業を丸で囲みます。その他の欄は、例えば事業継承の場合はその旨を記します。
(8)所得種類
不動産投資の場合は不動産投資、アフィリエイトの場合は事業所得・雑所得になります。
(9)開業日
ルールはないので、開業を認識した日を記します。
(10)開業に伴う届出書の提出の有無の書き方
青色申告を予定している場合は「有」を選択して、青色申告承認申請書を一緒に提出します。
(11)事業の概要の書き方
自分の事業の内容をある程度詳しく書きます。
例:ラーメン屋の経営・コンビニエンスストアの経営・学習塾の経営・レストランの経営などのことをある程度詳しく記します。
(12)給与関連項目
従業員を雇う予定がある場合、人数・月給・ボーナスなどを記します。
提出のタイミング
(1)提出可能な日
税務署が受付している平日であれば、いつでも提出は可能です。
(2)6月~10月がおすすめ
特に目立った事情が無ければ、6月~10月での提出がおすすめといえます。
この理由として、税理士が11月から5月が繁忙期・税務署は2月3月が繁忙期という事情があります。
この時期を避ければ、開業と開業届提出に当たって税理士にいろいろ相談してから提出しやすい・税務署で提出するのに何時間も待たずに済むといった時間的効率性が想定されます。
開業届を提出するメリット
(1)屋号で銀行口座を作れる
一般的に事業を始める場合、新規銀行口座を開設します。事業用の口座をもつ際にできれば個人名義ではなく、屋号名義で作りたいと考える方が少なくありません。
屋号での口座は、お客様や関係先からの信頼度が高まる・こちらから送金の際相手から認識されやすいといった便利な点があります。
しかしながら屋号だけで銀行口座を開設するのは難しく、開業届は最低限必要となります。
屋号での口座開設を目指す場合は、開業届の提出がおすすめといえます。
(2)小規模企業共済の退職金制度が利用可能
小規模企業共済の退職金制度とは、中小企業の経営者・役員の方が個人で加入し積み立てます。
20年以上の加入で受け取れる、解約手当金という手当金があります。
要するに中小企業の経営者・役員の方が、自分の退職金のために準備をするといった感じです。
掛け金設定は、1,000円から7万円の範囲(500円単位)で選択が可能なので利用しやすくなっています。
開業届と節税策
(1)承認申請書とその提出期限
①青色申告
- 青色申告:所得税の計算上有利な制度を活用できるようにする制度のこと
- 青色申告承認申請書:青色申告の制度適用を受けるために提出する書類のこと
②提出期限
- 新規開業の場合:開業日から2カ月以内
- 既に事業が始まっている場合:青色申告をする前年の3月15日まで
(2)青色申告のメリット
①青色申告特別控除
所得の計算において10万円または65万円を経費とは別に引ける制度(65万円の控除には確定申告書に貸借対照表の添付が必要)。
②家族への給料を経費計上
個人事業主は原則として生計を共にする配偶者・親族(親・祖父母・子・孫など)に対して、給料を渡しても経費計上できません。
しかし、経費計上できる場合があります。専属的に事業に携わっている者に対し、通常の従業員に支払うのと同程度の金額を給料として支払う場合です。
対象者は配偶者・親族(子や孫の場合は年末時点で15歳以上になっている者のみ)となります。これを「青色事業専従者給与」といいます。
③赤字3年間繰り越し
青色申告の適用により、その年に発生した純赤字の金額を黒字と相殺するというシステムがあります。
このシステムの適用期間は、純赤字が発生した翌年から3年間となります。この制度を純損失の繰越控除といいます。
一般的に開店準備などで多くの出費を伴う1年目は、想定した売り上げも上がり難い傾向があり赤字になりやすいものです。
青色申告者の場合、その赤字を2年目以降の黒字と相殺できます。結果的に、2年目以降の所得税の納税額を少なくすることにつながります。
開業届の未提出
開業届の未提出に対する罰則は定められていません。
しかしながらお客様・関係先に開業届の未提出が明るみになると、信用問題に関わってくる可能性があります。
そして後々に法人化・様々な金融機関へ融資の申請という予定があれば、なおさら開業届のような手続きはしっかりと行っていたいものです。
ネット販売と開業届
昨今様々なネットショップ・アマゾン・ヤフオク・ヤフーショッピングなどで、服などの物を販売する方が増えています。
このような販売をする方には、「売れた」という感覚はあっても「事業で売り上げをあげた」という感覚になる方は多くないかもしれません。
このような心境により、ネットショップでの開業届に意識が向かない場合が少なくありません。
しかしながら結論として、ネットショップには開業届が必要となります。
正確にはネットショップに開業届が必要なのではなく、インターネット通販に開業届が必要なのです。
ネットショップをしている方には「どうせ月数百円とか数千円とかの売り上げだし」と思う方もいるでしょう。
確かに売り上げが、年間で20万円にならなければ申告の必要はなく課税対象にもなりません。
これでも開業届というのは決して難しい手続きではないので、提出しておくのがおすすめといえます。
まとめ
以上フランチャイズの開業届について述べてきました。
開業届というのはそう大きく難しいものでなく、節税効果が期待される・信用を得るのに役立つ場合があるということで完了しておくのがおすすめの手続きといえます。
開業当初はたくさんのことが立て込み、なかなか時間を取り難いかもしれませんが後々の為にも大切な段取りです。