飲食店経営に必要な初期費用と資金調達方法・コストを抑える方法も解説
飲食店の起業をしたいと考える場合、どのくらいの初期費用が必要なのか気になる方は多いではないでしょうか。
飲食店経営にはまとまった初期費用が必要になるため、あらかじめある程度の初期費用額を知ってを準備する必要があります。
また、資金の調達方法や初期費用を抑えるための方法も知っておくべきです。
この記事では、飲食店経営における初期費用の金額や内訳や、初期費用を調達する方法、初期費用を抑えるポイントなどについて詳しく解説します。
飲食店経営に必要な初期費用の内訳
飲食店経営を開始するには初期費用が必要ですが、その内訳はどのようになっているのでしょうか?
飲食店経営を行うのに必要な初期費用の内訳を説明します。
(1)物件取得費用
飲食店を経営するためには、店舗を構えなければいけません。
物件取得費用は、店舗用の物件を取得するための費用です。
店舗用の物件を取得する場合、購入ではなく賃貸にすることが一般的です。
購入よりも賃貸の方が物件の取得費用を抑えられるというメリットはあるものの、賃貸の場合のコストも大きな金額になります。
賃貸物件を利用する場合に必要な費用は、として以下の通りです。
- 保証金・敷金
- 礼金
- 仲介手数料
- 前家賃
物件によって金額は異なりますが、家賃の7ヶ月前後の費用が必要とされています。
例えば、家賃30万円の物件の場合、物件取得費用として210万円前後が必要にとなると考えておきましょう。
物件取得費用は、飲食店経営の初期費用の中でも最も大きな割合を占めるといえます。
(2)店舗設備の設置費用
飲食店経営のために物件を取得しても、物件の中は何もない状態なので店舗を営業することはできません。
厨房設備や、お客様の飲食スペース用の机やいす、店舗の装飾、看板などを設置するための費用が必要です。
また、壁や床、天井、配管などの内装工事も行います。
居抜き物件であれば、その前に入居していた店舗の設備や内装、什器などをそのまま利用することができます。
前の借主に造作譲渡料を支払う必要はありますが、最初から内装を工事して設備を整えていくよりも費用は抑えやすいです。
店舗設備の設置費用も初期費用に占める割合が大きい費用といえるでしょう。
(3)運転資金
飲食店経営の初期には、運転資金が必要です。
開業してすぐに事業を黒字化できるケースは少なく、集客が安定するまでは、収支の的には苦しい状態を乗り切らなければいけません。
家賃や光熱費、仕入れ費用、人件費など飲食店経営には継続的にかかる費用があり、こうした費用を払うための運転資金を十分に用意しておくべきです。
実際に飲食店を開業して実際に軌道に乗って安定するまでには半年以上かかるを要したケースが多いため、運転資金が少ないと軌道に乗る前に閉店せざるを得なくなります。
(4)フランチャイズに加盟するなら加盟金
飲食店を開業する方法のひとつとして、フランチャイズに加盟して開業する方法が挙げられます。
フランチャイズに加盟すれば、飲食業界ですでに成功している本部の看板や屋号、メニュー、経営ノウハウなどをがそのまま利用することが可能です。
ただし、フランチャイズに加盟する際には、加盟金を支払わなければなりません。
加盟金とは、フランチャイズに加盟するための入会金や商標を利用するための費用です。
加盟金の金額は、フランチャイズ本部によって異なりますが、場合によっては何百万円単位の加盟金が必要となります。
飲食店経営に必要な初期費用の具体的な金額
飲食店経営に必要な初期費用の内訳を紹介しましたが、実際にはどれくらいの金額を準備すればいいのでしょうか?
日本政策金融公庫の「2023年新規開業実態調査」の調査結果によると、500万円未満が4割近くを占めているものの、平均値は1027万円であることが分かっています。
飲食店の場合、物件取得費用や設備の投資が必要になるため、初期費用は高額になる傾向にあります。
飲食店経営に必要な初期費用は1000万円が一般的とされているため、その金額を目安に資金を準備しましょう。
飲食店経営における開業費用調達方法
飲食店経営には1000万円ほど初期費用として必要になることが一般的ですが、大金なので自己資金だけでは開業できないという方も多いでしょう。
開業費用が不足している場合、どのように資金調達すればよいのでしょうか。
ここからは、飲食店経営における初期費用調達方法について詳しく解説します。
(1)家族や親族からの借り入れ
家族や親族など身内に資金を借り入れるというケースも珍しくありません。
家族や親族からの借り入れは、金利がかからないというメリットがあります。
ただし、飲食店経営がうまくいかずに返済が滞ったり、返済不能になったりしてしまうとトラブルになりやすいので注意しましょう。
身内だからと口約束で借入れをすることも後からトラブルになりやすいので、必ず書面は作るべきです。
また、家族や親族からの借り入れは、資産としてみなされます。
金融機関からにも同時に融資を受ける場合、自己資金とみなされてますので融資に有利となるケースもあります。
(2)金融機関からの融資
銀行などの金融機関からの融資は、一般的な資金調達方法といえます。
金融機関に融資を申し込み、審査が通ると初期費用を調達することが可能です。
ただし、必ず融資が受けられるとは限らず、審査次第ということがデメリットとして挙げられます。
審査に時間がかかるケースもあるので、開業前の融資については早めに申し込みまむ必要があるといえるでしょう。
また、金融機関から受けた融資は金利に応じた返済金を毎月支払うことになるため、金利分が余分にかかる点もデメリットといえます。
(3)日本政策金融公庫からの融資
日本政策金融公庫からの融資による調達方法も考えられます。
日本政策金融公庫とは、個人事業主やフリーランス、中小企業の支援を目的とする政府系の金融機関です。
民間の金融機関よりも金利が低く、無担保や無保証の融資もできるなどメリットは多いです。
創業初期でも融資が受けることができ、返済期間も民間の金融機関より長いケースが多いので、初期費用の資金調達には向いているといえます。
ただし、審査期間が長くなる傾向があるので、開業前にかかる物件取得費や設備設置費などの利用はできないかもしれません。
(4)自治体や国の補助金、助成金の活用
国や自治体が設ける補助金や助成金を初期費用や運転資金に利用するという選択肢もあります。
補助金や助成金ならばその他の融資方法とは異なり、返済する必要がありません。
ただし、補助金や助成金の費用や要件など自治体によって異なります。
飲食店向けの補助金なども多いため、開業前にどのような補助金や助成金が利用できるのかを確認しておきましょう。
飲食店経営を開業するまでの流れ
飲食店を開業する場合、準備から開業までの流れを理解しておかなければスムーズに進めることができず、時間がかかってしまうかもしれません。
ここからは、開業するまでの流れについて詳しく解説します。
(1)事業計画書の作成
飲食店に限ったことではありませんが、開業する場合はまず事業計画書を作成します。事業計画書を作成しましょう。
どのような飲食店を開業したいのか、どのようなサービスや商品を提供するのかなどといった飲食店経営のプランを事業計画書という形でまとめます。
計画書では、売上や原価率、利益率などの数字も予想を立てて算出しておかなければなりません。
計画書を作成することでコンセプトやターゲットを明確にすることができ、利益率などもあらかじめ把握することができます。
融資を受ける際にも事業計画書が必要になるので、開業前の最初の段階で綿密に作成しておくべきです。
(2)メニューや価格の設定
事業計画書を基に店舗のコンセプトやターゲットに合ったメニューや価格を決定します。
価格がを決定すれば、より具体的に利益率が算出できるでしょう。
利益率が分かれば、物件取得に出せる家賃や運営費から損益分岐点の算出が可能です。
損益分岐点を上回るために必要な集客も予想を立てられます。
こうした金銭面の計算や把握も大切ですが、飲食店経営では事業契約書に作成したコンセプトやターゲットをしっかりと意識したメニュー構成を考えることも非常に大事です。
競合他社や希望するエリアの近隣店舗なども参考にして検討しましょう。
(3)物件取得と内装
コンセプトやターゲット、メニューや価格まで決まると、出店エリアや物件の家賃が絞られます。
例えば、学生向けがターゲットならば学校の近くや若い子の集まりやすい場所、サラリーマンがターゲットならばオフィス街といったようにエリアを絞れます。
そのエリア内で、希望の家賃に近い物件を探します。
また、飲食店ではコンセプトに合った内装も欠かせません。
例えば、サラリーマンがターゲットの飲食店で可愛らしいをカラフルな内装にしてしまうとサラリーマンは入店しにくいと感じるため、集客にも影響を及ぼします。
ターゲットを対象としたエリアに出店し、ターゲット向けの内装にすることが大切です。
(4)資金調達
物件の目処がついたあたりで、資金調達を行います。
目安としては開業の3カ月~6カ月ほど前で、金融機関や日本政策金融公庫など自身に合った資金調達方法で資金を集めましょう。
(5)資格の取得・届出の提出
飲食店経営をするのであれば、開業に向けて特定の資格の取得や届出の提出が必要です。
まず飲食店の開業には、「飲食店営業許可」の申請が必須になります。
店舗の設備などを設置し終えた後に保健所職員が確認を行うため、開業の数週間前までには済ませておきたいものです。
また、「食品衛生責任者」や「防火対象物使用開始届」も必須ですし、お菓子の製造・販売をするのであれば「菓子製造業許可申請」、24時以降にお酒を提供するのであれば「深夜酒類提供飲食店営業開始届出書」が必要になります。
(6)集客
開業時には認知度がほぼない状態からスタートするため、開業前から集客を行いましょう。
HPの開設、インスタグラムやX(旧Twitter)などSNSの開設・投稿などが集客方法として考えられます。
グルメサイトへの登録やSNSの運用といった集客から、ポスティングや人が集まる場所でのチラシ配布などアナログ的な集客方法も効果的です。
飲食店を開業する際に初期費用を抑える方法
飲食店経営における初期費用は、エリアや業種などによって金額の大小はあるもののまとまった費用が必要になることを解説しました。
なるべく初期費用はを抑えたいと考える方も多いのではないでしょうか。
ここからは、飲食店経営において初期費用を抑える方法について詳しく解説します。
(1)居抜き店舗を利用する
物件の取得時には基本的には何もない状態なので、そこから店舗の内装工事や設備の設置を行わなければいけません。
しかし、募集している物件の中には、居抜き店舗と呼ばれる物件もあります。
居抜き店舗とは、前の契約者が使っていた設備などが残ったままで、次の契約者を募集している物件のことです。
利用できる設備や内装はそのまま使用できるため、その分の費用を抑えられます。
前の契約者と類似したコンセプトの店舗だった場合、居抜き店舗で効果的に初期費用を抑制できるでしょう。
(2)中古設備を利用する
設備などの設置を抑える方法として、中古設備を導入することも挙げられます。
必ずしも最新の設備を入れる必要はなく、中古設備といえどもしっかりと手入れされたものであれば使用には全く問題はありません。
近年ではエコやリサイクルなどSDGsの考え方がより意識されています。
まだ使用できる中古設備をリサイクルすることは現在のニーズにも合っているといえるでしょう。
(3)業者への見積もりは複数に頼む
設備の設置や内装費用などの見積もりは、複数業者から取得して安い業者を選ぶようにすると初期費用の抑制につながります。
設備業者によっては、他の業者より導入する設備を安く仕入れることができる場合があります。
ただし、全ての設備をひとつの業者に任せてしまうと、機能面では他社より弱い設備を導入することになるので注意が必要です。
とはいえ、ひとつひとつの設備導入に関してすべてを複数業者に見積もり依頼することは手間がかかることです。
厨房設備・お客様設備・従業員設備など大まかに区分をいくつかに分けてたうえで複数業者に見積もりを依頼す取ると良いでしょう。
(4)補助金や助成金を有効活用する
飲食店の開業に関しては、国や自治体が運営している補助金や助成金などが利用できる場合があります。
一定の要件を満たしている飲食店には補助金や助成金などを出し、経営のサポートを国や自治体が行う制度です。
補助金や助成金は知られていないことも多いので、有効活用すべきです。
要件や補助金の額などは、自治体ごとに異なるのりますので、まずは自治体のHPなどでチェックしてみまるといいでしょう。
まとめ
飲食店経営における初期費用について解説しました。
飲食店経営では店舗を構える必要があるため、物件取得費用や設備の導入費用などで初期費用が高くなりがちです。
初期費用を自己資金だけではまかなえないという方は、補助金や助成金の活用を検討してみてはいかがでしょうか。