マル経融資とは?制度の内容や利用条件、資金を調達するコツ
「これから起業するために資金を借りたい」
「マル経融資の条件や申し込み方法が気になる」
商工会から指導を受けた人が利用できる融資制度としてマル経融資があります。
経営者はマル経融資を利用することで、無担保・無保証人で資金を借りられるのがメリットです。
この記事では起業を検討している人に向けて、マル経融資の制度内容や資金調達のコツを解説します。
マル経融資とは
日本政策金融公庫が個人事業主または経営者向けに提供している制度が小規模事業者経営改善資金(以下、マル経融資)です。
一般的なビジネスローンよりも金利が低い利点があります。
マル経融資では保証人・担保を不要としているため、信頼できる人や資産がなくとも資金調達できます。
他の融資制度に比べて利用するハードルが低いのがマル経融資の魅力です。
ただし、マル経融資を利用するには商工会議所などの推薦が必要であり、推薦をもらうには複数の条件があります。
制度の利用条件や限度額、申し込み方法について詳しく見てみましょう。
(1)利用条件
個人事業主または経営者がマル経融資を利用するには、次のような条件を満たすことが必要です。
- 商業またはサービス業でない場合、従業員数が20人以下の法人・個人事業主
- 商業またはサービス業である場合、従業員数が5人以下の法人・個人事業主
- 申し込む商工会議所地区内にて1年以上続けて事業を行っている
- 商工会議所の経営指導を6か月以上受けている
他にも税金を滞納していないことや日本政策金融公庫の非対象業種等に属していないことなどの条件があります。
以下の業種で事業を行っているとマル経融資を利用できません。
- 銀行や貸金業、金融商品取引業などの金融・保険業
- ソープランド業
- 競馬やパチンコなどの娯楽業
- 取立業や集金業といったその他サービス業
- 社会保険事業団体・福祉事務所・更生保護事業・政治団体・郵便業など
詳しい非対象業種は下記の参考URLに掲載されています。
小売業や飲食業などフランチャイズで開業できる業種であれば、基本的にマル経融資を利用することが可能です。
参考:https://www.gcci.or.jp/management/loan/kinyuu.html
(2)融資の限度額
マル経融資により個人事業主・法人が借りられる資金の上限額は2,000万円です。
資金調達したい経営者は、事業の運転資金と設備資金を併せて2,000万円まで融資を受けることができます。
また、地震や台風などの震災被害を受けた人は、上限額とは別枠で追加融資を受けることが可能です。
例えば令和元年の台風19号による被害を受けた経営者には、別枠として1,000万円が限度額に追加されます。
(3)金利や返済期間
2019年12月現在、マル経融資の金利は年1.21%と定められています(金利は毎月変わります)。年1.21%の金利で1,000万円を借りて5年間で返済した場合、経営者が支払う利息は約31万円です。
そして資金の使用目的により、マル経融資の返済期間は異なります。
- 運転資金の場合、返済期間は7年以内(据置期間は1年以内)
- 設備資金の場合、返済期間は10年以内(据置期間は2年以内)
据置期間は借金の利子だけを返済することで、元本を返済せずに済む期間です。経営者は据置期間を活用することで返済額を減らせて、資金不足を避けることができます。
(4)申し込みの流れ
経営者がマル経融資を利用するには、まず商工会議所などで推薦を受けることが必要です。
事業所の近くにある商工会を訪問して、マル経融資の利用について担当者と相談しましょう。
商工会などから推薦を受けたら、日本政策金融公庫で融資を申し込みます。
申し込んだ後に日本公庫の担当者と面接の場をもち、資金の使い道や経営状況などを説明しましょう。
担当者による審査を通過すると、融資に必要な書類が日本公庫から送られてきます。
書類に従って契約の手続きをすることで、保有している銀行口座で融資金を受け取れる仕組みです。
マル経融資により借りたお金は、原則として毎月返済する規則となっています。
経営者は返済方法として元金均等返済・元利均等返済・ステップ返済などを選ぶことが可能です。
(5)申し込みに必要な書類
マル経融資を日本公庫に申し込むには、借入申込書を提出することが必要です。
借入申込書には次のような書類を添付することが求められます。
- 直近2期分の申告決算書(個人事業主の場合)
- 直近2期分の確定申告書・決算書(法人の場合)
- 最近の試算表(決算後6か月以上経過または決算を終えてない法人の場合)
また、設備資金を借りたい場合は、上記の書類に加えて見積書を提出することが必須です。
マル経融資の審査に通るには
「事業を行うためにマル経融資を利用したい」と考える経営者は多くいるでしょう。
日本公庫では融資の際に厳しい審査を行っていて、対策していないと融資を受けられない可能性が高いです。
融資を受けるにはいくつかのコツがあり、コツを参考に対策しておくことが重要といえます。
これからマル経融資を利用したい人が知っておくべきコツは次の4つです。
- 決算書を改善する
- 負債を減らす
- 経営悪化が一時的であることを説明する
- 相談会に参加する
それぞれのコツについて詳しく解説します。
(1)決算書を改善する
一般的に金融機関は会社の決算書を確認して、資金の融資を判断します。
決算書の状態が悪いと担当者からマイナスイメージを持たれてしまい、審査に通りにくくなるため注意しましょう。
経営者が決算書を改善するには次のような方法があります。
- 人件費などの経費を減らして会社の利益を増やす
- 資産から負債を引いた純資産額を増やす
- まだ支払っていない税金の未納分を解決する
赤字や債務超過といった悪要素があると、融資を受けるハードルはかなり高くなります。
なるべく無駄なコストを削減して、利益を増やすことが決算書対策のコツです。
(2)負債を減らす
ある程度の金銭的余裕がある人は、マル経融資を申し込む前に会社の負債を減らすことがオススメです。
負債を少なくすることで経営状態がよくなり、審査に通りやすくなります。
また、法人税や事業税といった税金を納めていないと、マル経融資を受けられないため注意しましょう。
資金を調達するには支払うべきコストを解消しておくことが重要です。
(3)経営悪化が一時的であることを説明する
何かしらの事情で売上が低下してしまい、マル経融資で資金を調達したい経営者は多数います。
経営が悪化した後に融資を申し込む場合、担当者に経営悪化は一時的であることを主張しましょう。
金融機関は貸した資金を取り戻すために、経営が悪化し続ける会社には融資しません。
コスト削減や取引先の変更などにより利益が増えて、結果的に経営状況が改善する見込みがある企業に融資します。
そのため、具体的な経営改善計画を立ててから融資を申し込むことが審査に通るコツです。
(4)相談会に参加する
商工会では資金を調達したい経営者に向けて、融資相談会を開催している場合があります。
相談会に参加することで制度内容の疑問点を解決したり、経営指導を受けたりできるのがメリットです。
「○○(地名)商工会 融資相談会」で検索することで近くの相談会を探せます。
融資制度を詳しく知りたい人は商工会の相談会に参加して、融資を受けるための知識を身につけましょう。
起業に必要な資金を調達するには
マル経融資は既に事業を行っている人向けの制度であり、起業するために制度を活用するのは難しいです。
今から起業したい人は、次のような方法で資金を調達することを勧めます。
- 新創業融資制度を活用する
- 信用保証協会の創業融資を使う
- フランチャイズのサポートを受ける
それぞれの方法について詳しく見てみましょう。
(1)新創業融資制度を活用する
日本政策金融公庫では起業する人を対象に、新創業融資制度を提供しています。
事業を始めるための資金を3,000万円まで借りることができ、担保や保証人を用意する必要はありません。
ただし、新創業融資制度の利用には自己資金の条件があるため注意しましょう。
これから起業する人の場合、創業資金総額の1/10以上もの資金を用意することが必要です。
勤めている会社と同じ事業を始める場合や、創業支援を受けて事業を開始する場合は、自己資金の条件が免除されます。
詳しい内容を知りたい人は日本公庫の新創業融資制度ページをチェックしましょう。
参考:https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/04_shinsogyo_m.html
(2)信用保証協会の創業融資を使う
信用保証協会では起業を検討している人を対象に、創業融資を提供しています。
日本政策金融公庫と似たような条件で融資を活用できて、融資額に対する自己資金の条件はありません。
例えば東京信用保証協会の創業融資を利用する場合、3,500万円までの資金を調達できます。
担保は基本的に不要であり、法人や組合では代表者を連帯保証人と定める規則です。
創業融資の金利は、責任共有制度の対象となる場合は固定金利では1.9%から2.5%以内(責任共有制度の対象外時は1.5%から2.0%以内)となっています。
特定創業支援事業や商工会などから創業支援を受けることで金利を下げることが可能です。
(3)フランチャイズのサポートを受ける
多くのフランチャイズでは起業するハードルを下げるために、加盟者向けのサポートを提供しています。
サポートを受けることで開業資金を減らしたり、融資を受けたりできるのがメリットです。
例えばローソンに加盟する場合、家族と協力して加盟することで加盟金100万円が免除されます。
また、FCオーナー・インターン制度を活用することでも加盟金を免除することが可能です。
競合他社であるファミリーマートの場合、直営店の店長として働くことで最大100万円の独立支援金が支給されます。
開業時に転居する必要があるときは30万円の転居費用も受取可能です。
上記で紹介したチェーン以外にも、創業支援を受けられるフランチャイズは多く存在します。
気になる方は説明会やホームページなどでフランチャイズのサポートをチェックしましょう。
まとめ
個人事業主や経営者が事業を維持するために役立つ制度としてマル経融資があります。
無担保・無保証人で資金を借りることができ、据置期間により返済負担を減らせるのが利点です。
マル経融資を利用するには事業を既に行っている必要があり、これから起業する人が資金を借りるのは難しいため、その場合には創業融資やフランチャイズの独立サポートを活用しましょう。